各国のSpotify TOP200の再生数でコロナの影響を考察してみた話
はじめに
先日GFK Japanの調査で日本の音楽ストリーミングは上昇傾向とのニュースが出ました。内容はざっくり下記。リンクからは詳細のPDFもダウンロードできます。
【概要】
・2019年の音楽ストリーミング配信の再生回数は前年の1.6倍以上に拡大
・邦楽の再生回数は前年の2倍以上と市場をけん引
・年間再生回数1億回以上の楽曲が3タイトル登場
(Official髭男dism「Pretender」、King Gnu「白日」、あいみょん「マリーゴールド」)
一方で世界的にはコロナウィルスと外出自粛の影響で、ストリーミングの再生回数が落ちているとのニュースも。
コロナウイルスの影響が最も甚大な国のひとつであるイタリアでは、2019年2月時点でのSpotify上におけるトップ200の楽曲の再生回数は、1日あたり1,830万回でした。3月9日に同国首相が国内全土での移動制限を発表して以降、トップ200の曲の再生回数は最大でも1,440万回となっています。
移動制限が実施される前後、3月3日と3月17日の数字を比べると、トップ200の再生回数は23%ほどダウンしています。
これがちょっと気になったので調査したいと思いました。
しかし、Spotifyは全体の再生回数を公表していないので、この記事同様に公開されているTOP200の再生回数の推移から考察することに。
方法
Spotify公式が運営しているSpotify Chartsから、各国のウィークリーのTOP200をCSVでダウンロード。CSVの中にあるTOP200の各曲の再生回数を足してその週のTOP200の合計の再生回数を出します。
「TOP200の再生回数でストリーミング全体の再生回数が推測できるか?」といわれれば微妙な気もしますが、とりあえずひとつの指標として。
ちなみにCSVだから一括で処理とか出来ると思いきやスキルの問題で出来なかったのでひたすらダウンロードとコピペを繰り返してエクセルを埋めていきました。このへんはもっとスマートにやる方法がありそう。
調査の概要
期間:2020年1/9週〜4/16週
※グラフ上では、期間1=1/9週、期間2=1/16週、、、としています
調査した国:Global、アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、イタリア、日本
結果①:グローバル
1/23週(4)の大きい山はEminemの新譜、3/5週(10)の大きい山はBad Bunnyの新譜が目立ちました。影響力デカすぎだろう。4月に入ってから(14以降)の下がり具合は気になります。年始の部分に関しては、基本的にホリデーシーズンは再生数が下がる(家族と一緒に過ごす時間が増えるので)という傾向があるので、全体的に観るとそんなに下がっていない気もします。
結果②:US
アメリカは1/23週(4)と、3/12週(11)に大きな山が。1/23はグローバルと同じくEminemの新譜、3/12はMac Millerの新譜でした。こちらも4月以降はグローバルと同じく減少傾向で、ホリデーシーズンよりも下がっているのはコロナウィルスによる外出自粛などの影響と言えそうです。
結果③:UK
こちらも大きな山はEminem。減少傾向と言えないことも無さそうですが、全体的にはそんなに変わっていない気がします。
結果④:フランス
こちらの1/23週(4)の大きな山はEminemではなく、モロッコ出身のフランス人ラッパーMaesの新譜。2/6週(6)はフランスのYouTuber兼ラッパーのMister Vの新譜、3/12週(11)はコンゴ系のフランス人ラッパーNinhoの新譜が原因でした。記事の趣旨とは違いますが言語の違いでチャートもこんなに違うんだなという印象。そしてやはり4月以降は減少傾向にあるようです。
結果⑤:スペイン
こちらの3/5週(10)の大きい山はBad Bunnyでした。プエルトリコ出身のレゲトン歌手だからでしょう。そう考えるとこの界隈がグローバルに与える影響もかなり大きいのだなと思いました。3/26週(13)の山は、コロンビア(スペイン語圏)のシンガーソングライターJ Balvinの新譜でした。記事の趣旨がずれていくのを感じています。減少傾向は少なめ。
結果⑥:イタリア
イタリアの2/13週(7)の大きな山にはなんと目立った新譜はありませんでした。イタリアはコロナの被害も大きい国ですが、それに伴ってか減少傾向はかなり大きいです。
結果⑦:日本
最後は日本。なんと波はありつつも全体的に上昇傾向にあります。緊急事態宣言がでたのも各国に比べると遅いのでこれから影響がでるんでしょうか?
まとめ
各国を比べてみましたが、結論としては下がる国は下がってる、しかもまだ下がりそうな感じはする、というところでしょうか。
そして大きいことなんですが、最初に紹介したQuartzの記事にもあるとおり、実は産業全体からすればストリーミングの減少は大した問題では有りません。
音楽業界団体IFPIによれば、ストリーミングの収入は音楽業界の全収入の半分程度です。Spotifyの収入源の90%は課金ユーザーからのものであり、無課金ユーザーによってもたらされる広告収入は10%に過ぎません。
有料課金をしている人々はどれくらい音楽を消費したかに限らず、一定の金額を払うことになるため、ストリーミングの再生回数の下落のインパクトは小さく、再生回数によって収益が決定する、10%の広告ビジネスに軽微な影響を与えるのみなのです。
とはいえミュージシャンやそれを取り巻く人々にとってはかなり厳しい状況です。もう本当にめちゃくちゃ厳しい。そしてストリーミングで力になれるのはごく僅かです。
音楽家やライブハウスを救う様々な運動が立ち上がっていますので、少しでも興味と余裕があるかたはこちらも覗いてみてください。
追記:5/20に続編の記事を書きました
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