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ある男の物語 夢月記=駅構内電車内でクマ?に遭遇

◆ある男の物語 夢月記=駅構内電車内でクマ?に遭遇
 
 その男は、日曜夜8時過ぎ、電車乗換の為ある駅の階段を降りようとしていた。後ろから60歳ぐらいのクマが、ぶつかりながら降りてきた。ちょうど電車が到着、乗り込もうとしたら、さらにクマはその男にぶつかりながら乗り込み、シートに座り込んだ。
2度目だから「謝りの会釈ぐらいをしないか」と思いながら、横目に見て先のシートに進み、実を鎮めた。数秒後、ふと顔を上げると目の前でクマが見下ろしていた。目が遇うと「降りて俺と殴り合うきがあるのか」、何故か「年寄は若者を大切にしろ」と言い寄ってきた。
 
 ちょうど降りる駅が近づいたので、無視して降りて速足で出口に向かった。ふと振り向くとクマも降りたようだが、追いかけてこなかった。そうか、年寄りは階段を下りてはいけない、ぶつかられたほうが悪い、時代が変わったのか。どこでも若者に席を譲らないといけない世の中になったのか、SF作家星新一のショートショートを思い出していた。それにしても「はて?」、あのクマは若者なのか、年寄なのか?分からない。
 
 そう言えば、その男は何か「威圧感」を持っているようで、何か言葉を発すると「偉そうに」と言われる。もっと謙虚な気持ちと言い方が必要で。考え直さなければいけないのかもしれない。人間として真っ当なことを言って思考の深さと深遠さを持って。一方、その男の風貌は若いと言われているが、やはり見掛け倒しのようで、若くない、年寄りなのだと自覚せざるを得なかった。
 
 ところで、紗月の候、その男の自宅マンション北側裏庭と出入り口フェンスに野イチゴらしき実がなっていた。どうやらヘビイチゴと呼ばれるものらしい。60数年前の幼き頃に北海道の片田舎で、野イチゴを見つけた記憶が蘇ってきた。特に群生していたのは何故か、火葬場の辺りだった。朽ちた人間の生命力が若き野イチゴを育てているのであろうか。


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