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【地中海北縁の旅と生活】第4章②<南仏マルセイユ生活始まる>

【地中海北縁の旅と生活】第4章②<南仏マルセイユ生活始まる>
 
《ボレリー公園を横切るとそこには》
 仮住まいの短期アパートメントホテル近くには<Parc Borély=ボレリー公園>がある。今は夏の日差しが強すぎて、ゆっくりと散歩はしていないが、公園の中に競馬場や9ホールのゴルフ場がある。朝の散歩やピクニック、地中海に日が沈む壮大な景色が楽しめるらしい。この中の日本庭園で9月末に、日本総領事館が中心になった「日本の祭り」が開催される。私も駆り出されるようだ。神戸市と姉妹都市のようであるが、そのイメージに落差があり、大阪市なら分かるような気がするのだが。

◆『ボレリー公園は17世紀頃、フランスの船主や商人であるJoseph Borelyによって造られました。フランス式庭園やイギリス式庭園には池やバラ園、その南側にボレリー館、装飾美術館がある。2011年には神戸市との姉妹都市提携50周年を記念して日本庭園が開設された。』◆(ウィキペディアWikipediaより)
 
 ところで、マルセイユの地図は北が上にあるとは限らない、つまり日本の太平洋岸のように海のある方が南とは言えない場所があるということだ。このボレリー公園を横切ると南に向かうらしいが、20分ほど歩くと総領事館に辿り着く。ビザや居住手続きなどで数度歩いた。汗は掻くが、流れ出ることはない。やはり空気が乾燥しているのであろうか、潮風の湿気を多少感じる程度である。
 
 9月初めのある日、陽射しがまだ柔らかい中、ボレリー公園を利用して行われているイベントを覗きに行った。ボレリー公園の中では、芸術やスポーツ、趣味などのジャンルに分かれて、1ブースにテーブル一つに椅子が3個だけ置かれていた。それぞれの活動のPRと勧誘、また芝生や簡易ステージを利用しての実演なども行われていた。
 今回のイベントはいくつかの市民団体が協力して主催しているようで、整然と粛々として楽し気でもある。合気道や空手、居合抜きもあり、韓国の剣舞などもやっていた。リオ五輪のせいか、ブラジリアンダンスも人を集めていた。ある一角で指圧体験の場があり、若きフランス人から30分間指圧を受けた。サラエボで1回だけ、ふにゃふにゃマッサージを受けたことがあるが、フランスに来て初めて私の身体に他人が触れた。
 
 日本で言えば、ここは代々木公園的な存在なのであろうか、フリーマーケット的に運営され、市民活動のアピールの場となっているようだ。最近、日本でも駅前の広場を利用して自治体が運営する市があるようだが、自治体が見えすぎると管理が強すぎるようになる。企業がやると利益管理が大きく、メディアが行うと人寄せと自社PR面が強く、人を集めること自体が目的になっている気がする。もっと個人、小さな組織がやっている活動を支える企業や団体、メディアがあっても良いのではないか。
 27時間だか24時間テレビなんてもう止め、ラジオもチャリティミュージックソンなんて止めて、小さなコミュニティを繋ぐ役割を目指した方が良いと考える。
 
《フェンスの間を通り抜けて、毎日買出しの食生活》
 マルセイユの新市街と言っていいのだろうか、海岸近くやカランクの山に近いところとか、低層の住宅地の立ち並ぶ大通り沿いの数軒の家々はフェンスで囲まれている。治安の悪かった時代に、数件の大きなアパートメントが町内会のようになり、共同で囲いを作ったようだ。基本的には鍵がかけられ、人も車の出入りもそれで行う。だが、通り抜けられる道もある。現在の短期アパートメントからダビデ像のある大きな通りにそろりと通り抜けていく。毎日のように、まるで住民のような顔をして、今日もワインを買いに出て、カフェでエスプレッソを一杯飲んでいる。
 
 さて、冷蔵庫が小さいため毎日のように買い出しに出ているが、マルセイユの青果果物屋には新鮮な野菜が並んでいる。サラエボでは手に入りにくかった<ほうれん草・白菜・レタス・クレソン>などがあり、アジアン食品店では<ニラや青梗菜、小松菜>も時折出て来る。これなら青物野菜に不自由しないで済みそうだ。だが、人間は勝手なもので、サラエボのジャガイモやニンジンなど素朴な味わいのある野菜も恋しくなってくる。
 クレッソンは大好物で、イタリアのルッコラとともにサラダや肉の付け合わせに最適である。クレッソンの辛味成分はワサビやダイコンなどと同じ抗菌性の物質が含まれ、食欲増進効果もある。サラダばかりでなくお浸し、胡麻和え、天婦羅、漬物、味噌汁の具、鍋物などにも利用できる。だが、日本では値段が高すぎる。
 
 スーパー<カルフール>で買ったパック入りの鴨肉を焼いてみた。やはりフランスと言う国、何とも味わいがある。フランスは冷凍保存技術が発達しており、家庭用なら手軽に楽しめるものが多い様だ。このキッチンの狭い短期アパートメントホテルでは小難しいことは出来ない。フライパンで焼いて、別な鍋にバルザミコソースを入れ、残った油を使って温めるだけ。
 
 鴨鍋にネギを入れると臭みがとれて美味しくなる事から「鴨が葱を背負ってくる」と言われている。本来は良いことが重なってやってくる意味だが、いつのまにか鴨葱は「利用しやすい人」を指すようになった。我がアパートメント探しは良い事が出て来るのか、天に任せるしかない。
 
それにしても、何ともマルセイユの街は手強い。アパートメント探しも悪戦苦闘しているが、記憶力が悪くなったこの歳になって、また語学学習が待ち受けていた。ボスニア語は諦めたが、日常生活のフランス語は何とか分かるようになりたいと思い、電子辞書も持参した。発音やアルファべ、文字と記号、読み方などは当然だが、聴き慣れながら覚えるしかないと思っている。

 そして単語、過日も短期アパートメントの洗濯機を見ながら単語を調べるが、これが難関である。まずはアパートメント用語をいくつか覚え、毎日のようにスーパーに通う中で生活用語もチェックしている。<中性洗剤=détergent neutre><食器用漂白剤=Vaisselle l'eau de javel><衣服用漂白剤=Vêtements bleach>を探しまくった。どこまで出来るか分からないが、半年先には挨拶用語だけでなく生活会話をしてみたいと思っているのだが。

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