観察

水面に映る
明かりを見ている
ダムのせせらぎを聞いている
水の沈黙が怖いのだから

白鳥、羽を休めている
彼らの雛が泳いでいる
ぴぃぴぃぴぃと泣いている

親鳥と目を合わせている
わたし
雛が九羽と
親が二羽

白鳥、想像よりも太い首をもたげていて
ぐねぐねと頭をもたげ動かしている

水辺の匂いと墓場の匂い
供物の花の腐った匂いだ
墓場、いき方をわたしは知らない
ままで、焦りだ、これは

うつらうつらとしている
白鳥か、ガチョウ
違いがわからない

くさったにおい
おやどりのいびき
その気になればおぞましいこえを上げるのだろう、お前も

ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ



時間が経てば腐りゆく
花も、人も
かなしいだろうか
すえた匂いに腰掛けている

水辺の草むら
潜んでいるはずの仮想的蛇

うたた寝する親たち
水辺で湿って
つちが剥き出している
仮想蛇の仮想の腑(はらわた)

鴨が行儀良く
雛を避けて泳いでいく

水鳥たちは泳いでいるのか
漕いでいるのか
歩いているのか
飛んでいるのか

ずっと穏やかでいたい
ずっと隠れていたい

伸びをする鳥、こちらの邪魔をせぬなら構わんよと視線
どうかお気になさらず

こちら本質に先立っている
親鳥が集合をかけていて
じょじょじょじょじょじょじょじょとも
ぞぞぞぞぞぞぞぞとも
ずずずずずずずとも

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