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ショックなイベントはSNS上のコミュニケーションを変化させる(論文紹介)

人生80年、長い間生きていれば、悲しい出来事やショックなイベントに数多く遭遇することがあります。SNSを使っている人は、悲しかった出来事を共有し、友達などは慰めなどの言葉を投げかけることがあるかもしれません。このような傾向が起こることは私達は想像できるのですが、具体的にSNS上では「どのようなショックなイベント」で「どのような関係の人間」が反応するのか?これについてはあまり明らかになっていません。このような問いについてICWSMに採択された"Analyzing the Engagement of Social Relationships During Life Event Shocks in Social Media."という論文で解き明かそうとしています。

4つのイベント

彼らは、まず個人におこる悲しいショックなイベントを以下の4つ設定し、

  • Romantic breakups: いわゆる、恋愛関係における別れ

  • Exposure to crime: 犯罪の被害者になること

  • Death of a close person: 近親者など近い人の死

  • Unexpected job loss: 予期していない失職

そしてこの4つのイベントの近辺の時間で、どのような関係の人と会話を行ったのか

  • Social: いわゆる、友人関係などの最も一般的な関係

  • Romance: 恋愛関係

  • Family: 家族

  • Organization: 一緒の組織、チームなどの関係で、同僚などが含まれます

  • Parasocial: ファンと有名人の関係など非対称的な関係

この5つの関係性(詳細はこちらを参照)
合計で4 × 5 = 20のパターンでSNS上のショックイベントでどのようなコミュニケーションが行われているのか分析したのです。

DIDモデルによるショック分析

どのようなショックイベントが、もしくは、どのような関係性のユーザが特に顕著に現れているのだろうか?この観点を解き明かすために、彼らは、定間隔ごとにショックイベントの前後での会話数を目的変数としたdifference in difference modelを採用しました。結果が下の図です。この図では、所謂4×5のパターンでモデルを適用しており、縦軸の値が大きいとその関係性やイベントにおける会話が多くなっていることを示しています。
結果を見てみると、ショックに対する反応は関係性によって大きく異なるそうです。例えば、RomanceやFamilyなどのリアルの場でも近い関係は、他のSocialやorganizationalな関係と比べてショックなイベントに対して反応しづらいそうです。特にorganizationalの関係はショックなイベントに対し有意に反応しているのですが、恋人の別れに対する反応は小さいそうです。特に顕著に人々が反応しているのは、近親者の死に関するイベントです。このイベントでは投稿者が投稿する前から有意に会話が増えており、投稿者の動揺などが現れていることが伺えます。

トピックの変化

また会話内容をLatent Dirichlet Allocationベースのトピックモデルを用いて、イベントの前後にトピックがどのように変化したのかについても調査しました。その結果、近親者の死のイベントで顕著なトピック変化が起こっており、今まで会話していた日常トピック(financeやfood)をについて会話しなくなって、「お悔やみ」に関するトピックが増加しており、かなり会話に気を使っていることが伺えます。

こういった1つ1つのショックイベントがどのような会話を引き起こしているのかの理解は、社会的ネットワーク内のダイナミクスを豊かにさせるのです。SNS上での会話イベントを理解することは潜在的な社会的プロセスを理解することに繋がるのです。

Choi, Minje, David Jurgens, and Daniel M. Romero. "Analyzing the Engagement of Social Relationships During Life Event Shocks in Social Media." arXiv preprint arXiv:2302.07951 (2023).
https://arxiv.org/abs/2302.07951




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