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香港ロケ地めぐり〜「インファナル・アフェア」@沙田・昂坪

日本でも大ヒットを記録した香港映画「インファナル・アフェア(無間道)」。香港にいることだしと、久しぶりに「インファナル・アフェア」3部作を通して見ていたら、自分の大きな認識違いに気がついてしまいました・・・ヤクザなのに関羽じゃない〜!

なぜここで関羽が出てくるかというと、忠誠や仁義で知られる関羽は、香港のヤクザにも慕われる存在。なので、組に入るときの儀式は、関羽を祀るお廟「関帝廟」で行われています。昨年2020年12月には、香港ヤクザ「和勝和」の入会(?)儀式が深水埗(Sham Shui Po)の関帝廟で執り行われていたところ、警察に検挙されるというニュースがありました。


そんなわけで、「インファナル・アフェア」1の冒頭で、ヤン(ショーン・ユー)をはじめとする若者たちが、ヤクザの親分サム(エリック・ツァン)の組に入る儀式のシーンは関帝廟だとずーと思いこんでいたんです。今回、映画を改めて見直してみると・・・撮影場所は沙田(Sha Tin )の仏教寺院・萬佛寺だったことにびっくり!(某ガイドブックのロケ地案内では、金の羅漢さましか言及がなかったので、儀式は別撮りかと思ってた)。

ということで、早速チェックに行ってきました。羅漢像の配置や装飾は変わっていましたが、冒頭の金色に輝く羅漢様から儀式のシーンまでの撮影場所はまさにココですね。

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萬佛寺の境内と殿内。金の仏様と右側の石碑が、儀式のシーンで写っていました

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以前は、右の黄色の屋根の下に、羅漢様が並べられていたようです。現在は参道に移動。右手の長い羅漢様、映画でもちらっと出てきますね。


また「インファナル・アフェア」3のなかで、ヤクザ界のトップになったサムと中国本土のマフィア役のシェン(陳道明)が落ち合う場所も仏教寺院。こちらは、ランタオ島昂平(Ngong Ping)にある寶蓮寺の天壇大仏さまのところです。

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寶蓮寺の天壇大仏さま。2021年3月現在、大仏さまは改修工事中。


「インファナル・アフェア」の原題「無間道」は仏教の「無間地獄」から。「無間」とは「間が無い=休む間もない、絶え間ない」。一度足を踏み入れたら二度と抜け出せない、絶え間なく続く苦しみを指します。

「インファナル・アフェア」は、香港マフィアに潜入したヤン刑事(トニー・レオン)、警察に潜入したマフィアのラウ刑事(アンディ・ラウ)の2人が、共に潜入先で苦悩しながらも、そこから抜け出せず、少しずつ「無間地獄」に落ちて行くという内容。3の最後では、車椅子生活を余儀なくされたラウ刑事(アンディ・ラウ)の姿が写り、エンドロールで「長寿は苦しみである、生き残った者が終りのない苦しみを味わう」と仏教の言葉が流れます。1の冒頭(入会儀式)、そして3の最後(エンドロール)。仏教で始まり、仏教で終わる。最初映画を見たときは、トニー・レオンやアンディ・ラウのかっこよさに目を奪われていましたが、改めて見直してみると、「人生は苦である」という仏教思想が根底にあり、味わい深い映画だなと思いました。

話は最初に戻るのですが、「インファナル・アフェア」1で、ヤクザの入会儀式シーンを関帝廟ではなく仏教寺院で撮影したのは、仏教思想を反映してでしょうか。冒頭の入会儀式シーンはヤクザに入るというより、実は無間地獄に入る儀式だったのかもしれませんね。



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