見出し画像

【覚えておきたいあの試合】 これぞ維新劇場 〜2018年J2リーグ第14節 山口vs東京V〜

DAZN越しに伝わってくる維新みらいふスタジアムのあの雰囲気は、今でも鮮明に覚えている。逆転を期待する山口サポーターの声援、それに応えるように相手のゴールに襲いかかる山口の選手たちのプレーは、中継を見ている私の心を動かすには充分すぎるものだった。

この一戦のスタジアムの雰囲気が、関東に住んでいる私を維新みらいふスタジアムでの現地観戦に駆り立てることとなった。


試合情報

ホームの山口が鮮やかな逆転劇を見せ、連勝を飾った。

両チームのスタメンはこちら。

画像2

ハイライトはこちら。

得点経過はこちら。

プレゼンテーション1 [自動保存済み]

試合の主導権を握ったのは東京Vだった。右サイドの渡辺皓太と藤本寛也のコンビネーションを生かし前半のうちに2点を先制した。しかし、後半に山口が大﨑と岸田を投入し、攻勢を仕掛ける。すると71分のオナイウ阿道のゴールを皮切りに4得点を挙げ逆転に成功する。東京Vも奈良輪のゴールで1点を返すが、逆転までの時間は残されておらず山口の大逆転勝利となった。


ここからは、この試合に対する私の思いを書いていきたいと思う。

特別な雰囲気を生み出した霜田監督のメッセージ

このヴェルディ戦の印象深い点は何と言っても0-2のビハインドを背負ってからの逆転勝利という点である。ただ、今回この試合をわざわざ取り上げている理由が「0-2から逆転したから」だけであるとは到底思えない。これは私だけの感覚なのかもしれないが、この試合の印象深さは0-2からの逆転という要因だけではなく、何か特別なものが乗っかっている気がしてならないのだ。ちなみに、サッカー界では「2-0は危険なスコア」とよく言われるが、実際は2-0でリードを奪ったチームの勝率は約9割となっている。このデータだけを見ると、9割の壁を超える珍しい現象を体験したから印象に残っているのでは?という声が飛んできそうであるが、この試合にはそれだけではない何かが確実にあった。

では、その「何か」とは何か。

それは維新みらいふスタジアムの雰囲気であろう。この試合後半のみらスタはいつもの雰囲気ではなかったように思う。それは、スタジアムにいる山口サポーター全員の期待感や興奮が山口の選手たちの背中を押し、ヴェルディの選手たちに襲い掛かっていたのではないかと錯覚するくらいに。

この特別な雰囲気を生み出すきっかけとなったのは、霜田監督が取った交代策にある。これははっきり言い切れる。霜田監督の取った交代策が選手、サポーターの火をつけた。

カギとなるのは交代のタイミングとシステム変更だ。まず注目したいのは交代の早さである。この試合では1枚目を後半開始時、2枚目を63分、3枚目を72分にそれぞれ行っている。特にDFの鳥養に代えて岸田を投入した2枚目と1点を返した直後に坪井に代えて瀬川を投入した3枚目は、攻めるという強烈なメッセージになっていたと思う。そして、忘れてはいけないのが交代と同時に行われたシステム変更だ。俗に言うフォーメーション「強い気持ち」である。この変遷がすごい。

最初の変更は2枚目の岸田投入後であった。4-3-3から3-1-4-2への変更である。

画像3

そして最後のカードとして瀬川を投入した結果、システムはこうなった。

画像4

霜田監督の試合後コメントによれば2-4-4である。さらに言うと、流れの中では以下の通り1バックに見えることもあった。

画像5

(ヴェルディの選手の立ち位置は実際と異なっているかもしれません。すみません。)

ヴェルディが守備的になっていたとはいえ、試合時間があと20分残っている状況でこの変更である。ここまでのリスクを取った策をこの残り時間で打つとなれば、驚きの気持ちが多いかもしれないが、おそらくこの試合を観戦していた山口サポーターの気持ちは驚きよりも「待ってました!」の気持ちの方が多かったであろう。なぜなら、このような交代策はヴェルディ戦が初めてではなく以前にも2試合ほど見せていたからである。さらに、その2試合はいずれも試合終了間際に同点に追いついているのである。だからこそ、ヴェルディ戦の負けている状況でも、試合を観戦しながら「ひょっとしたら、システム変更による特攻があるかもしれない」と期待の気持ちを持っていた人は多かったかもしれない。

その期待が、ピッチ上で現実になったことでサポーターにもスイッチが入り、そのまま後押しする声援に繋がったのではないかと思う。もし、この大胆な交代策を取っていたのがこのヴェルディ戦で初めてだったとしたら、観戦する側としても驚きの気持ちの方が優ってあの特別な雰囲気は生まれなかったのではないかとさえ思ったりする。

今まで振り返ってきたように霜田監督の決断によって、山口の選手とサポーターが1つになり、ヴェルディのゴールへ襲い掛かっていくことに繋がったのだろう。霜田監督は「攻撃も守備も常に矢印は相手のゴールに」というコメントを度々残すが、この試合の終盤はサポーターも含めて山口に関わる全員の矢印が1つとなってヴェルディのゴールに向いていたのではないだろうか。それが画面越しで見ている私に、何か特別な雰囲気として伝わってきたのだと解釈している。


初めて感じたレノファのことが好きな皆さんの温かさ

最後に、DAZNでの観戦後に体験した出来事についての話をしたいと思う。
発端は試合観戦後、気分が最高潮な私がしたこんなツイートである。


本田さんやら風間式フットボールやら所々よく分からない部分もあるものの、全体的に興奮していることが伝わってくる。ここで注目すべきは、2つ目のツイートの「維新行き本気で検討しようかと思う」という記述だ。正直に言おう、この記述は半分本当で半分嘘である。

もちろん、この試合の特別な雰囲気を現地で体感したいと思ったからこそのツイートなのだが、本当に本気で検討しようと思っていたかどうかは怪しい。行きたいという気持ちに嘘はないが「いつか行けたらいいだろう」ぐらいで書いたというのが正直だったと記憶している。関東に住んでいる大学生であったこともあり、その程度の気持ちであった。

だが、このような深く考えてもいないツイートに対し、山口サポの反応が凄かったのである。ついたいいねの数を見て欲しい。1つ目が33、2つ目が62である。フォロワー80人程度の人間にとってこの数字は異常である。バズりといっても過言ではない。

想像もしていなかった反応の多さが私を本気の本気にさせた。これだけ反応してもらったのに行かないという選択肢は取れない、変な部分で私の真面目さが出たのかもしれない。こうした反応を受けてのツイートがこちら。

そう、一連の流れで感じたのは山口行きに対するプレッシャーでも反応の多さによる圧力でもなくレノファのことが好きな皆さんの温かさだけであった。自分が山口を好きになった理由の1つである山口サポーターの温かさを初めて実感した場面である。反応していただいた皆さん、本当にありがとうございました。

そして、このツイートから1年と少し経った昨年9月、めでたく山口行きを実行できた。試合には負けてしまったが、大満足の人生初山口旅となった。


試合内容や結果はもちろん、その後の経験を含めてこの試合は非常に思い出深い。いつか維新劇場を現地で体験できる日が来たら、その時はまたこの試合に感謝をすることになるだろう。



*文中敬称略

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?