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ロンドンでの部屋探しが大変すぎた

僕は、神経質だ。それに、自分勝手で偏屈だ。それから、「敬語じゃなくって全然いいよ☆彡」って言ってくる人が苦手だ。ヤツらの、「全力で駆け抜けろ!」とか「友〜永遠の青春〜」とか、体育祭のスローガンみたいな事を平気な顔して言えるメンタリティが苦手だ。だいたい、ヤツらは話し方が詐欺師っぽくて油断できない。そういうヤツらが居る場に混ざると、皆んながサッカーをやってる中、自分一人だけドッジボールのルールで戦ってる気にさせられるのだ。何をムキになっているのか分からなくなってきたが、ロンドンに来てから初めての部屋探しが大変だったという話をしたい。この数行で察して頂けただろうが、僕はいつも、引っ越しに手こずる。快適な人生を送る為のマイルールが、常に自らを苦しめるのだ。
 
大学には学生寮もあるが、僕は寮生活をしていた高校時代、規則を破り過ぎて母親と一緒に校長室に呼ばれた挙げ句に退寮させられたくらい集団生活ができないので、それは最初から選択肢に無かった。そんなわけで2年前の夏、僕はロンドンでの新居を探す為に、到着してからしばらくはホテルに滞在していた。そのホテルは大通りに面していたので、ひっきりなしに大型トラックが通り、立地の割にリーズナブルという事もあったからか若者が多く、上の階も下の階も連日深夜まで騒いでいた。コロナの時期に集まってんじゃねえぞタコ、というストレスも相まって疲れが全く抜けず、一刻も早くこのホテル生活から抜け出したかった。いずれにせよ、大学が始まるまで2週間しか無いのだから、グズグズしている時間も無い。
 
慣れない土地での部屋探しは難しい。なんせ勘が効かない。想像して欲しいのだが「ユニットバスだけどバスタブ無し、エアコン無し、駅から徒歩15分、築50年で家賃20万円」と聞いて、住みたいじゃん!となるだろうか?しかし、ロンドンではこれが普通だ。まず、家賃がたけぇ。円安も重なって今は特に。それから、ロンドンは景観保全が厳しいので、平均の築年数が50年くらいだ。だから、新築の物件が少なく、市場に出てもすぐに埋まってしまう。それから、ヨーロッパにはバスタブに浸かる習慣が無いので、基本的にどこもシャワーのみ。眠れない程に暑いのは真夏の数週間だけなので、エアコンがある家はほぼ無く、温水をパイプに通して部屋全体を温める仕組みが主流。

そんな事も知らない僕は、毎日7、8軒の内見を続け、存在するはずが無い理想の物件を探した。徐々に現実との折り合いが付き始め、ようやくバチコーン!と突き刺さる物件に出会い、その場で契約を決めた。結局1年半ほど住む事になったその家は、もともと家具付きだったので他の物件と比べて割安で、大家がアート好きな人らしく壁に沢山ポスターが貼ってあるのも気に入った。なによりもバスタブ付き。しかも小さなベランダまである。新しい人生の基盤が固まっていく気がして幸せだった。
 
さて、その家のボイラーが2ヶ月に一度は故障するから、その度に2、3日は温水が出なくなり、極寒の部屋のなか冷水で頭を洗っていた事や、ベランダに繋がるドアの隙間からは雨が降る度に大量の雨水が流れ込んでくる事、ゴミ捨て場が近いので、換気をする度に数匹の小蝿が入ってくる事を当時の僕はまだ知らなかったわけだが、それはまた別の話である。 

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