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<鑑賞記録>『Death of England: Delroy(イングランドの死: デルロイ)』

初 ロイヤル・ナショナル・シアターでした!!!
映像でしか観た事が無かった劇場の客席に座ってるが不思議で、え、今座ってんの、あの劇場?って、ずーっと思ってました。
3月から閉鎖していたナショナルシアターの再開後、初めての公演を、まさか実際に観られるなんて思ってなかったです。ただ、残念ながらこの公演は、10月31日に発表された全国ロックダウンを受けて、11月28日までの予定だったところ、5日以降の全公演の中止が決まりました。劇場も、またしばらく閉鎖です。ようやく演劇が動き出す兆しが見えてきて、劇場に行ける!とか胸を踊らせていたので、とても残念ですけど、こればっかりは仕方ないです。

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さて!
そんな貴重な公演がどんな様子だったのか、しっかりお伝えしようと思います!ゴリゴリのネタバレを含んでいますんで、いつかこの公演を観られる可能性に賭けて、内容を一切、完全に、一ミリも知りたくない!って強い意思をお持ちの方は絶対に読まないでください!

 『Death of England: Delroy』
 (イングランドの死: デルロイ)

ナショナルシアターの再開後、初となった今作は、今年の始めに上演された一人芝居『Death of England』の続編でした。前作は観てないんですけど、『舞台は、2018年 イギリス。白人労働者階級のマイケルは、父の死をきっかけに、自分自身を見つめ直す。』という話だったそうです。

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(前作『Death of England』)

そして、今作も一人芝居。上演時間は、90分。前作の主人公 マイケルの親友だった黒人労働階級のデルロイが、今作の主人公です。デルロイは、マイケルの妹 カーリーと結婚しています。二人の夫婦生活は順風満帆で、カーリーのお腹には臨月の女の子がいます。ある日の仕事帰り、デルロイは「今夜にも産まれる」という連絡を受け、病院に直行します。しかし、その道中、警察に不当逮捕され、デルロイは妻の出産に立ち会えませんでした。この逮捕をきっかけに、デルロイは自らのアイデンティティを見失います。なぜ、私が黒人というだけで、私が生まれたこの国は、私を差別するのか。そしてデルロイは、祖国と向き合い、自らと向き合い、改めて父として、夫として生きていく覚悟を決める。ざっくり言うと、そんな話です。

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驚きだったのが、この台本が書かれたのは今年の3月だったそうです。つまり、ブラック・ライヴズ・マターが起こる前に書かれた作品です。上演が決まっていたところに、劇場の閉鎖が重なってしまったそうです。
あらすじ聞いた時に「あ、なるほどね〜。この時期だから一人芝居にして、流行りの黒人差別と重ねたのね。はいはい。」とか思ってた浅はかな自分を殴ってやりたい。と同時に「演劇ッ・・・・・!尊いッ・・・・・・!」って感動がジャブジャブ湧いてきて、とりあえず終演後、一人でパブに入って余韻で3杯飲みました。

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この作品には、まだまだ裏のドラマがありまして、実は今回の主演の方は代役だそうです。もともとデルロイ役を演じる予定だった方が、初日2週間前に急性虫垂炎になってしまい、それからこの役を引き受けた今回の主演 マイケル・バローグンは、ほとんど稽古する時間も無いままに初日を迎えたらしい。いや、災難が重なるというか、不遇の作品というか。とにかく幕を上げるんだって覚悟が凄い。

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舞台美術は、シンプルな円形の囲み舞台で、中央にスチールデッキが組まれてあるだけ。そのデッキの真ん中が、円く開いていて、そこから、小道具が出て来たり、紙吹雪が吹き上がったりというような演出でした。確かに、小道具が多くて、舞台美術が建て込まれてると、毎回の消毒が大変だもんな、とか思ったりしました。
客席は、1/3くらい削られていたのかな?僕の席は、左右二席ずつと、前後があいてました。ざっと見渡すと、1人席ブロック、2人席ブロック、4人席ブロック、くらいに分かれていて、同じ世帯の人とか、カップルとかは隣同士で観られるようになってたのかな。舞台面は、客席に近い所は、飛沫を防ぐためにアクリル板で囲まれていて、それはそれで珍しい光景なので、僕にとっては刺激的でした。

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感想

これがですね、いや貴様ごときが生意気いってんじゃねえ砂利でも食ってろってお声があるのは承知の上なんですが、僕はあんまり面白く無かったんです・・・・・・。
面白く無いっていうか、まず途中で2回くらいセリフ飛ばしてて、近くにいたスタッフさんが次の台詞を教えてる声が思いっきり聞こえてたし、終盤の台詞はモニターにカンペ出てたし。
いや!そりゃ!メチャメチャ大変だったと思うんですよ!
この状況で、しかもたった2週間前に一人芝居のオファーを受けるって時点で凄いですし。そして良くぞ、最後の最後まで、劇場の灯を消さないでいてくれた!とは思うんですが、でも、だからこそ!台詞、覚えて!いや、この際、もうアドリブで全ッ然いいから、上手い感じにやって!
しかし、私は今、ロンドンでの新生活、30歳を目前にして飛び込んだ大学、それが始まった瞬間にロックダウン、っていう全身性感帯の感受性ビンビン野郎なので、それすらもポジティブに受け取りました。いや、そうだよね。あのナショナルシアターの再開後、初の公演が面白く思えない可能性、全然あるよね・・・・・・!みたいな変なテンションで、謎に前向きになりました。いや本当に本当に色々メチャメチャ凄いことだというのは分かってるので、貶すつもりは一切ないんです。

ただですね、内容は全く好みじゃなかったんですけど、僕が感動したのは、会場のスタッフさん達の細やかさですね。「この劇場から、絶対に感染者を出さない。」という気迫すら感じました。
例えば、開演前の混雑を避ける為、チケットを買った段階で開演1時間半前から15分刻みに入館時間が決められていたり、待ち時間には、細かく区切られた20人程度の待機スペースが用意されていて、そこには劇場スタッフが3、4人常駐していたり、会場への移動は、観客が接触しないように、着席するブロックごとにそれぞれ別々の通路から誘導したり、マスクを外してる観客には一人一人声を掛けたり。いや、当たり前なんですけど、当たり前の事を当たり前に、かつ徹底的にやっていたのが、見ていて気持ちよかったです。お客の判断や、一般常識に任せず、全ての主導権を劇場側が握ってるというか。こりゃ、劇場のが安全だろ、と正直思いました。日本に帰ったタイミングで、日本の国立劇場にも行ってみて、コロナに対してどんな対応なのか比較してみたい!

そんなところでした。
観劇記録は、これから観た物は全部つけていきます。日本で観るものもつけますし、映画とかもつけようかな?とか思ってます。こっちでしかやってない映画もあるし。
そうですね。記念すべき【1】がこんな感じだったのも、なんか良かったな、とか思ってますね。

はい!
さよなら!

記事中の劇中写真は全て、ロイヤル・ナショナル・シアター公式ホームページに掲載されていた物をお借りしています。
https://www.nationaltheatre.org.uk/
Photo by Normski

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