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<鑑賞記録>小麦は緑 / ナショナルシアター

これは、もう物凄く面白かったです。聞いた事ない台本だったけど、調べたら「小麦は緑」って邦題で映画化されてました。日本で上演された事はあるのかな、誰もやってないなら、和訳して持って帰りたいくらい面白かった。ざっくり言うと、マイフェアレディーの男女逆転版なんですけど、なんせ演出が凄まじかったです。

ナショナルシアターライブでやっても不思議じゃないと思ったので、ネタバレ気にする方は読まないで下さい。


あらすじは、英国の貧しい炭鉱町に、初老の女教師がやってきた。彼女は村に小さな学校を開く。集まってきた一人の青年の中に、才能がある子を見つけた彼女は、その青年を大学へ入学させようとするが・・・という話。この青年は、作者が投影されていて、半自伝的な内容。
演出が凄かった。物語の最初は、ほとんど素舞台のなかで役者たちが演じる。ただし、原作には無い作者役が、室内の描写や、人物の出入りなどのト書きを読んだり、役者のセリフを代わりに言ったりすることで、その原作の物語を、作者がその場で考えているという入れ子構造の演出になっている。物語が進むにつれて、徐々にセットが完成されてきて、役者たちが作者役の手助け無しに会話を始めていくという流れ。終盤には、序盤に作者が読んでいたト書きの通りの舞台セットが完成している。その中で、最初は作者に助けられながら演じられていた登場人物たちが、その世界の人物として動き出す。これが、演劇にしか出来ない表現で、クラシカルだけど斬新だった。

炭鉱夫のアンサンブルの人たちが、煤に汚れた姿で歌う讃美歌は、まあベタと言えばベタなんだけど、良かった。最後に、作者の自己投影である青年と、作者役が、スローダンスを踊るという演出も、ニヤリとさせる面白さ。

たまにこういう大ホームランみたいな作品に出会えるから嬉しい。もう一回みたいと思ったけど、千秋楽まで完売で観られなかった。夏休みは、気になるニュースの和訳とかもしたいと思ってるので、気にしてくだされば幸いです。

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