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占い師から歯並びをキレイにした方が良いと言われて歯科矯正を決意したら大変だった話し ep12

『恐怖の青い液体』

ドタバタ採血から2週間。いよいよ、入院当日。
ここまで、短かったような長かったような・・・。
ここ数日は、最後の晩餐を楽しんだ。なぜなら、術後しばらくはまともな食事ができないからだ。入院は、お昼すぎからだったのでいきつけのお蕎麦屋さんで天ぷら蕎麦を食す。
これを次に食べれるのはいつになるのか・・・。
そんな事を思いながら、病院へれっつごー!

「ここが、お部屋ですよ~」
病院に着くと、看護師さんが部屋に案内してくれた。
部屋には、ベッドが2つあったがどちらも使われていなかったので、個室のようなもんだ。人生初の入院で、なんと個室だ。人見知り、よそ様がいらっしゃると眠れない私にとってはラッキーである。
看護師さんから、入院の説明を聞いて、荷物の整理をするとやることがなくなった。冒険(病院内)にでも行こうかと思った時だ。
「失礼します」
部屋に、長身・細身・眼鏡、疲れてるのか暗い表情の先生が入って来た。
「・・・hakuさんですか?」
「は、はい」
「担当の麻酔科医です」
あ、大門が担当じゃないのか。
「体調どうですか?」
「すこぶる元気です!」
「・・・はい」
黙々とカルテに記入していく眼鏡先生。
「何か、質問ありますか?」
「ないです!」
「・・・明日は、僕がここに寝ます」
「はい?」
目ん玉どっか行った。
「明日は、全身麻酔で起きるのは次の日です。なので、僕が隣のベッドで寝ます」
そのためのベッドだったんかい!?
「何かあったら、すぐに対応しますので安心してください。では」
眼鏡先生は、そのまま去って行った。てか、あんたの体調の方が心配だよ・・・。

夜になって、母も帰り、晩御飯、お風呂を済ませて後は寝るだけの状態になった時、新たな尋ね人がやって来た。
「こんばんは!主治医です!」
「あ、この間の採血の?」
「そうそう!あの時は、びっくりしたでしょー?」
「まさか、自分の返り血浴びるとは思ってませんでした」
「だよねー!僕も、びっくりしたもん!でも、明日の手術の方がもっとしんどいだろうから、頑張ろうね!」
おい、不吉な事言うんじゃない。
「hakuさんは、医療従事者なの?」
「いいえ。無職のニートです」
「看護師さん達が、すごく理解が早いって言ってたけど」
「姉が看護師なので、家でよく手術のビデオとか見てます」
「あぁ!だからか!」
「ちなみに、明日の手術って映像見れますか?」
「え、見たいの?」
「はい。姉も私も見たくて」
「そっかーうちは今そのサービスやってないんだよね。昔やってたら、家族の方が気分悪くなったりしてたみたいでさー」
「あーなるほど。残念です」
人生初の手術を記録に残しておきたかったが無念である。
つーか、この先生よく喋るな。ほっぺたが赤いからぺこちゃんと呼ぶことにした。
「先生!また、患者さんのところでサボって!」
「サボってないよ、コミュニケーション!」
夜勤担当の看護師さんが現れた。
「hakuさん、リステリンは試されましたか?」
「あ、使ったことないです」
「じゃあ、明日から歯磨きできなくなるので、今日の歯磨き終わりに試してみて下さいね」
「分かりました」
「じゃあ、また消灯のときにきますねー!」
看護師さんに引っ張られてぺこちゃんも追い出された。

一人になると、やることがない。
全身麻酔で、飲食はもうできな時間だったので歯磨きをして寝る事にした。
「これがリステリンか・・・」
入院時、病院からの指定でリステリンを持ってくるように指示されていた。
リステリンのキャップを開ける。匂いをかぐと、ミントと消毒液のような匂いがした。本能が、この液体は危険だと言っている。でも、麻酔から覚めたらどんな状態か分からないので、試すのは今しかない・・・!!
手が震えて、キャップに入れた青い液体が揺れる。
見つめ合って、数分。
意を決して、口の中に含んだ。

瞬間、膝から崩れ落ちる身体。

この世のものとは思えない、味。
口の中を迸る刺激。
本能は正しかった。こいつは危険すぎる・・・!!
洗面台に捉まり、なんとか立ち上がると、リステリンを吐き出し水でうがいをする。
「フ、フフ・・・!やるな、リステリン」
ヲタクのHPは、手術前に100→30になった。
次に目が覚めた時から、こいつを毎回口に含まなきゃいけないなんて・・・!なんたる恐怖!
そんな恐怖に怯えながら、眠りに就くのだった。

次回、『ブラックアウト』

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