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ショート平沢大河の可能性を探る

こんにちはワンドリです。(@hanachanlovebot)
単独でnoteを書くのは初めてのため、読みづらい点等あるかとは思いますがご容赦くださいませ。
さて、今回は第97回全国高校野球選手権大会では準優勝に輝き、その後日本代表にも選出され、名実共に当時の高校ナンバーワンショートとして活躍し、2015年ドラフト会議では楽天との競合の末千葉ロッテマリーンズに入団した平沢大河選手のショートとしての可能性と今日までの成長過程について書いていきたいと思います。西岡剛選手以来の高卒ショートでのドラフト1位。鳴り物入りで入団した平沢選手でしたが、今日までにレギュラーを掴むまでには至らず、今年の開幕も二軍スタートといった苦しい日々が続いています。そこで今回は、平沢選手のショートとしての守備力にフォーカスし、5つの視点から現状に至るまでを紐解いていきたいと思います。早速見ていきましょう。

①スナップスロー
②グラブ捌き
③足捌き・ステップワーク
④送球動作の簡略化
⑤三遊間方向の打球処理と二遊間方向の打球処理

1. 入団当初の守備力

まず入団当初の平沢選手の守備力はどれほどのものだったのか見ていきましょう。

これは2016年3月のシートノックでの動画になりますが、今までロッテはショートを固定できず何年も苦労しました。
しかし平沢選手は柔らかいグラブ捌きから素早く握り替えを行い、スローイングはスナップスローを用いて素早く二塁に送球する術を既に身に着けており、ここはさすがと言うべきかと思います。
この動画を見る限りでは、誰もが近いうちにショートのレギュラーとして大成してくれるのではと期待したのではないかと思います。私自身もその一人です。では彼の改善点は一体どこにあるのか、どういった点で苦労しているのか紐解いていきましょう。

2. 平沢大河は送球と捕球の分離型だった

最近ちらほらと話題になっている足捌き送球と捕球の分離型とは一体どのような選手、どのようなプレーのことを言うのかと言いますと、まず代表されるのはソフトバンクホークスの今宮選手が挙げられます。
今宮選手は持ち前の身体能力を生かし、まず確実に捕球を行ってから一塁に強い送球をするプレースタイルです。

捕球体勢が悪い中でも持ち前の地肩を生かし、鋭い送球を一塁に放っています。これは今宮選手だからこそできるプレーだと言っていいでしょう。
上記添付動画の43秒~53秒辺りに注目していただきたいのですが、今宮選手は三遊間の打球を捕球後一旦ブレーキをかけて足を止めて

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踏ん張った後にトップを作って送球しています。

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これらのプレーがいわゆる送球と捕球の分離型と言われるプレーです。
続いて平沢選手を見ていきましょう。

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上記動画の55秒辺りからの1塁へ送球する際に足を止めた後に大きく開き

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1ステップ入れた後に送球をしています。つまり、平沢選手もこの段階ではまだ送球と捕球の分離型の選手と言えるでしょう。

3. 送球と捕球の分離型に対して送球と捕球の一体型とは?その利点とは?

上記で述べた送球と捕球の分離型に対して送球と捕球の一体型とはどんなプレーなのか、それを用いている選手は?どんな利点があるのかも併せて見ていきましょう。
まず一体型で球界に名を馳せている代表選手と言えば西武ライオンズの源田壮亮選手が挙げられます。

最も注目していただきたいのは46秒からの三遊間へのゴロを処理する動きなのですが、捕球した後に右足でブレーキをかけてトップを作って送球する今宮選手と違って、足を止めることなく流れの中で送球へと導いています。

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左足を起点として捕球した後に

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右足でブレーキをかけることなく足を動かし続け、素早く送球動作へと移行しているのがお分かりいただけるでしょうか?
右足でブレーキをかけて送球動作に移行する場合、ブレーキをかける時間と、そこから握り替えを行う時間とが別々に行われ、時間がかかってしまいます。そのため、そこからでも持ち直せる程の強肩や、身体能力に優れた選手でない限り、このような打球をアウトにするのは難しいと言えます。冒頭で今宮選手だからこそできるプレーと言ったのはここにあります。
しかし源田選手のように捕球後も足を動かし続け、流れの中で握り替えと送球動作へと移行することで送球動作の簡略化ができるのです。
送球と捕球の一体型の選手の最大の利点は、足捌きを巧みに使うことで、送球動作の簡略化ができることにあると言っても過言ではありません。
これが今巷でも話題になってる足捌きが巧いプレーヤーなのです。
ではここで足捌きにつてもう少し触れていきたいと思います。
足捌きにも実はいろいろとあるのですが、一歩一歩のステップを刻む際に、その歩幅が短く速い方が良いのです。その理由としては、
其の一、打球への対応がしやすくなる点です。大股で歩幅を刻めば刻む程、上半身や頭もブレやすく、不規則なバウンドの際に目線がブレて対応が難しくなり、最終的にはグラブだけでなんとかしようとする勘に頼ったプレーになりがちになってしまいます。それでは打球への対応力が高いとは言い難いですよね。
其の二、体の流れを抑え、負担を軽減できる。
捕球完了後に全力疾走した勢いそのままに、膝でブレーキをかけようとすると、必ず膝や腰に負担がかかることは言うまでもありません。この場合土のグラウンドならまだ良いのですが、人工芝だった場合は、スパイクの刃がつっかかり、足が止まっているけれど体が止まり切れていない状況が生まれ、捻挫をしたり筋肉系に支障をきたしてしまいます。
100の力をいきなり0にしょうとするのだから当然ですよね。
其の三、送球との連動が可能になる
強い送球をする際にはステップが必要となりますが、捕球時の足の動きをそのままに、その足捌きを生かして送球する連動動作が可能になります。
言わば止まったり、ステップしたりと言う助走が必要なくなるのです。
それらの1プレーをもっと深堀りしたい方は私がかねてより仲良くさせていただいている遊撃さん(@yuugekistyle_bb)のnoteでも詳しく紹介されていますので、よろしければ併せてご覧ください。⇓⇓⇓

続いて、データで見る守備指標ではどのような結果になっているのか見てみましょう。

UZR2019ショート

※データ参考:1.02Essence of Baseball

守備貢献度を総合的に表す指標「UZR」では、2019年、源田選手が圧倒的な数値を叩き出しています。ルーキイヤーから常にトップの貢献度を見せつけていることから、データ上でも一体型の選手の方が分離型の選手よりも秀でていると言う結果となっています。これらを総合すると、送球と捕球の分離型よりも、送球と捕球の一体型のプレーヤーの方が引き出しが多く、怪我のリスク等軽減できてより良いパフォーマンスを披露することができると言えるのではないでしょうか。

4. 送球と捕球の一体型を目指した平沢選手

ショートとして拘りが強い平沢選手は、仙台育英高校時代から「球界を代表するショートになる。」と目標を掲げていました。ショートとして長く球界のトップに君臨するためには、今宮選手のような150キロを超えるような球を投げられる身体能力があるわけではない彼にとって、上記で述べた源田選手のような足捌きを会得することは最早必須です。ここで2018年の春の時点までではどのように成長したのかを見ていきたいと思います。まずはこちらの動画をご覧ください。

ルーキーイヤーの時よりも捕球時の構えが小さく纏まっており、ステップの幅も短く細かくなっているのがおわかりいただけるでしょうか?

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打球に対して正面は向いているものの、左足は既に一塁方向を向いており、この時点から送球動作に入っています。

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そして捕球と同時に右足を左足付近に移動させ、素早く握り替えを行っています。まだぎこちなくはありますが、ここでも足を完全に停止することなくステップを行えています。

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ルーキーイヤーの時は握り替えを行った後、大きく上体を起こしてしまっていた頃に対して、ステップを細かく刻み、足を動かし続ける足捌きによって、低い姿勢のまま半身で送球動作に移行しようとしていることが伺えます。このように細かく見ていくと、しっかりと成長を感じ取ることができ、今年はいよいよ開幕スタメンを勝ち取り、一気にレギュラーとして活躍してくれるのではと思っていましたが、彼にとって試練の年となります。その要因の1つは新加入の藤岡裕大選手の存在です。
藤岡選手は2017年に社会人の名門トヨタ自動車からドラフト2位で指名を受けて入団しました。当時から強肩強打のショートストップとして、社会人ナンバーワンの呼び声も高い選手でした。ショートとしてのキャリアこそ浅いものの、岡山理大付属高校時代は投手として150キロに迫る直球を投げていたり、遠投120メートル、50メートル走5.9秒と言った抜群の身体能力を兼ね備えています。
タイプとしては今宮選手と酷似しており、勝るとも劣らない能力を持った選手と言っても過言ではないでしょう。2017年中~後半にかけてにショートのレギュラーを掴んだ三木亮選手に加え、藤岡選手の加入により、ショートのレギュラー争いは激化していきます。

5. 結果的に弊害となってしまった外野コンバート

オープン戦では藤岡選手と争い、結果的にはショートでの開幕スタメンを譲る形となりました。しばらく代打や代走での起用でしたが、思わぬ形でスタメン出場することとなります。4月21日の西武戦にて、6番ライトでの起用に、皆さん驚かれたと思います。それもそのはず、平沢選手は2軍ですら外野手としての出場はなく、練習でもその姿は殆ど見たことがなかったからです。しかし当時のロッテは、角中選手の離脱に加え、清田選手、岡田選手らの不調により不足していた外野手を補うために、野球勘に優れ、打撃にも期待をかけている平沢選手に井口監督は白羽の矢を立てました。
結果的にこの年はショートとしての出場は11試合に止まり、ライト、サード、ファーストもこなしながら過ごすこととなりました。
2019年になり、前年に続いて開幕1軍を勝ち取ると、早々に左足首を痛めてしまい、出場選手登録を抹消されてしまいます。怪我の程度はそれほど重いものではなかったことも幸いし、翌月22日には、肉離れを起こしてしまった藤岡選手と入れ替わる形で再び1軍登録され、念願のショートとしてスタメンで出場する機会が訪れます。
しかしそこで見た彼のプレーは、成長を遂げてるであろう姿とは異なっていました。こちらをご覧ください。

以前まで着実に成長してきたはずの足捌きは影を潜め、ルーキーイヤーの頃にできていたはずのスナップスローまでぎこちなくなり、送球エラーが多発してしまいます。どうしても打球を目で追ってしまい、完全捕球しなければスローイングまでの動作ができず、上半身と下半身がバラバラに動いている状態になり、手投げのようなスローイングに変わってしまっていました。

要因の1つとして、外野を兼任した際の弊害なのではないかと考えます。
外野と内野、特にショートとでは、根本的に動きが異なります。打球に対して小さくステップして素早く握り替えを行うプレーはまずありませんし、フライの追い方からグラブの大きさに至るまで全く異なります。
しかし、一番の違いはスローイングにあると言えます。
ショートは握り替えを素早く行った後に外野手のようなテイクバックを大きく取り、体全体を使って送球するプレーはありません。
外野とショートを高水準で守ることができ、且つスローイングに至るまで使い分けができる選手は、球界を見渡してもほとんど見当たりません。
現横浜DeNAベイスターズの大和選手くらいでしょうか。
ポジションこそ異なるものの、かつて中日ドラゴンズの黄金期を築き上げた落合博満監督は当時サードと外野を守っていた森野選手に対してこのようなコメントを残しています。

※森野の外野は今後もうありません。下手ですから。彼の成長を一番止めたのが外野に回したことだと、私は反省しています。
2009年11月30日中日スポーツより引用

当時森野選手本人も、同中日スポーツにて、外野と内野のスローイングの違いによるものが大きかったとコメントを残しています。

ポジションは異なりますし、それが全ての要因だとは言い切れませんが、少なくとも要因の一つには生りうると言えるのではないでしょうか?
これらのプレーが原因で、同6月には再び1軍登録を抹消され、根本的な見直しが必要となりました。
しかし平沢選手は、驚異的なスピードでこれらの弱みを克服していきます。
7月下旬には1軍復帰を果たし、8月中旬からはショートとしてスタメン出場を果たします。そこでは成長した彼の姿が見られました。

自分の弱みを理解して、着実に2軍で鍛錬を積んできたことがわかるこちらのプレー。源田選手のようにとまではいかないまでも、三遊間方向の鋭い打球を細かいステップワークで打球まで追いつき、足を止めずに連動して握り替えを行い、素早くスローイングまで導く事ができています。
我々の期待した平沢大河が還ってきたなと思った瞬間でした。

6. ライバル藤岡裕大選手と比較

2020年。延期が続いたプロ野球ですが、6月遂に開幕。しかし開幕1軍のメンバーの中に彼の名前はありませんでした。
では、彼のライバル藤岡選手と比較し、簡単に考察していきたいと思います。

冒頭でも述べたように、持ち前の強肩を生かし、少々体勢が悪くとも、強引にアウトへと導くプレースタイルです。彼も送球と捕球の分離型と言えるでしょう。打球に対してまず追いつくことを優先し、打球と半ば衝突したような形で捕球します。
平沢選手は一体型を目指している最中、藤岡選手はその身体能力を武器に分離型として勝負していたようです。上記の「UZR」比較でもお分かりいただける通り、数字上では彼もまた低水準と言わざるを得ません。
もしこのままのプレースタイルを貫くようであれば、一体型を習得しつつある平沢選手に追い抜かれることも考えられますが、彼もまたショートとしての拘りを強く持っており、改善傾向が見られます。

身体能力や地肩の強さに分がある藤岡選手ですが、軽快な足捌きを行い、そのままスローイングを行ったプレーからも成長が伺えるかと思います。
打球に対して一直線に向かうのではなく、少し斜めに入り、送球しやすい体勢で捕球しようとしている事がおわかりいただけますでしょうか?
平沢選手も藤岡選手も三遊間の打球処理に関しては及第点だと言えると思いますが、私は彼らに共通して言えるのは二遊間方向の打球処理が課題なのではと推測します。こちらをご覧ください。

藤岡選手の方は40秒付近の二遊間方向の打球を捕球の瞬間ほんの僅か足が止まり、早い段階から飛びついてしまい、素早く起き上がって送球するもセーフになっています。平沢選手も飛びつくことが前提のようなステップで、結果追いつくのが精一杯でした。実は二遊間方向の打球は、マウンドの跳ね返りでバウンドが予想し難く、一塁に投げる際はステップがサイドステップになりやすく、進行方向に投げる事が出来ないため、より緻密なステップワークが必要となります。三遊間の打球を追う際に行うステップとは違った動きになり、打球に対しても際どい当たりは体の後ろ側で捕球することもあります。飛びついて捕球をしてしまっては足の速い打者走者はアウトにできません。両者ともに更なるレベルアップを図るためには、二遊間方向の打球処理が課題と言っても過言ではないでしょう。

7. まとめ~これからの両選手

まだまだ書き足りないのですが、文字数の関係でまとめに入ることをご了承ください。いかがだったでしょうか?これらの考察を踏まえ、平沢選手は球界を代表するショートになるために、敢えて茨の道を選び、もがいているのかもしれません。私はやはりショートとして成長してもらいたいですし、藤岡選手にも簡単に譲って欲しくはないのです。矛盾しているのは百も承知ですが、結果的に二人の高レベルな争いがチーム内を刺激し、どちらがショートに座るにせよ、いつか二人がロッテの中心選手として同じグラウンドに立ち、お互いに平沢が居たから、藤岡さんが居てくれたから成長できましたとお立ち台で笑って言っている姿に妄想を膨らませてしまっています。このnoteをご覧になって、何か皆さんの中で考えるきっかけになったり、これからは守備ももっと見てみようかなと思っていただけること等があれば幸いです。今後も彼らのプレー、一挙手一投足にこれまで以上に注目していきたいと思います。最後までお付き合い下さいまして本当にありがとうございました。機会や依頼がありましたら、また何かしらの形で執筆させていただきたいなと考えています。その際はよろしくお願いします。


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