見出し画像

メインギターは鈴木さん

ライブに向けてサブギターとして、MoralesMF-120 をハードオフのジャンクコーナーから 連れ帰った話を書いたので、弦高調整に難儀しているメインギターについても紹介を。

メインギターは、鈴木バイオリン社の Three S W-500 というモデル。10年前に、ハードオフで出会いわが家に連れ帰った。確か32,400円だった気がする、当時は消費税が8%だった。それまでエレキベースがメインで、家でエレキギターを弾く感じだった私が、なぜアコギを入手しようと思ったのかははっきりと思い出せず。当時のツイートを掘り返したところ、「これからどうしよう」とかつぶやいていて、わがことながら呆れる。

鈴木さん(スリーエス W-500) を入手するまで、家にはモーリスのアコギがあった。おそらく70年代のフォークブームの時期のアコギだ。家族の誰かがもらってきて押入れの奥に眠っていたものをもらい受けたのだが、私もほぼ弾くことがなく、あのモーリスちゃんには申し訳なかった気がしている。

……と、書いていたら、鈴木さんを入手した理由を思い出してきた。2013~2014年頃、当時活動していた「青のクラウン」というバンドのアルバムを宅録DTMで作っていて、メンバーに曲のイメージを伝えるデモ音源を作る際にアコギをレコーディングする機会があった。そのときにモーリスちゃんを使ったところ、どう頑張ってもいい音で録音できず、最終的に「モーリスちゃんのポテンシャルの問題なのでは?」と思い至り、ものは試しで近所のハードオフでいろんなアコギを試奏したところ、「アコギって、1本ごとにこんなにも音が違うのか」とビックリ。同時に「ミュージシャンのたしなみとして、1本くらいまともなアコギを持ちたいな」という、思いもよらない感情が湧いてきて、アコギを買おうと思ったのだった。


いいタイミングでたまたま臨時収入があったのと、モーリスちゃんを下取りに出せば購入の足しになりそうだったので、ハードオフで物色を開始。サブギターを買った際にも書いたが、アコギにそこまで意気込んでいなかったので思い切った出費は本意ではなく、このときも「買うなら中古楽器で」と考えていた。

そして、割と早い段階で「このアコギ、ネックの握りがしっくりくるし、めっちゃ鳴るぞ」と思えた鈴木さんに出会えた。ただ、あまりに早々と出会えたので「何かの間違いかもしれない」とも思い、その後も何軒も他の中古屋さんを見て回り、私よりもはるかにアコギに詳しいDOMAのマスター・廣井さんにも話を聞いて……。

古いギターは、新品よりも材料が使われている傾向があり(近年になって伐採が禁止され、入手できなくなった木材もあるそう)、かつ、長年の間に木材がしっかり乾いてサウンドの安定感が増しているという。また、いまなお楽器として生き残っているということは、作りがしっかりしていた証拠。そういった話は、この時期に聞き知った。メーカーさんの思いや、前の持ち主が楽器に注いだ愛情を引き継げるのだと考えるとワクワクするし、持ち主が変わっても楽器が音楽を奏で続けることを思うとロマンを感じる。バイオリンやピアノのように、アコギも時間を越えた個体が価値を持つジャンルになってきたのだろう。

私は天邪鬼ゆえ、マーチンやギブソンといった「ギター弾きのあこがれ」系にはいまひとつ興味がわかず。ヤマハやタカミネなどの人気メーカーもできれば避けたい性格だ。そんななか鈴木バイオリン社は、人と同じはイヤだけど、極端に奇抜なものは苦手な自分にとってちょうどいい存在である。アコギは木工品でもあるため、木工業に優れる日本のメーカーで作られている点も信頼につながる。

そうやって自分の思いを確かめていくうちに、「やっぱり、あのギターが一番良かった」と思えるようになり、鈴木さんが売られていたハードオフを再訪。「もしも誰かに買われしまったのなら縁がなかったと思おう。でも、まだ売れてなかったら俺が連れて帰る!」という決意を固めてアコギ売り場へと向かった。

あった! もう買うしかない。「きみ、うちの子になるかい?」と心の中で呼びかけると、「俺っすか? うーん、まぁいっか。じゃあ、これからよろしく頼ンます」という返事が聞こえた気がしたので、えいやっとわが家へ。

モーリスちゃんは「いままでありがとね」とハードオフに下取りに出した。大した金額にはならなかったけれど、仕方ない。いま、どこかで誰かが弾いてくれていたらうれしいんだけど、どうだろう。


連れ帰った鈴木さんの型番が、スリーエス W-500だということは、実は今回弾き語りライブをやる決意をしてから知った。

鈴木さんは、とにかく良く鳴る。爆鳴り。ジャラーンでもキラリーンでもなく、ゴゴォーンみたいなボディ全体が唸る感じ。ジャパンヴィンテージのアコギは、アタリ・ハズレがはっきりしていると噂に聞いていたが、いわゆるアタリの個体だったのだと思う。他の人にとってはどうか分からないが、ひたすらに自分好み。ネックの握りが、普段使いのエレキギターと同じ感じで、とにかく手に馴染むところももいい。それだけで自分にとっては十分だったので、型番やスペックはあまり気にしていなかった。

でも、弾き語りライブをやるのなら、機材としっかり向き合おうと思い、ネット検索を駆使して型番を調べた。多くのギターは、サウンドホールの中にラベルが貼ってあり、型番や製造年が印刷されている。だが鈴木さんにはそれがなかった。後々、ボディ内のネック側に型番が刻印されているのを知ったが、通常ならラベルが貼ってある場所に印刷された「SUZUKI」の文字やネックのポジションマークやヘッドのデザインなどを頼りに、ギター愛好家たちのサイトを見て回って、同じルックスのアコギを探していった。

そしてようやく「スリーエス W-500」という型番にたどり着いた。詳しい方の解説によると、スリーエスシリーズの最高峰とのことで、当時の販売価格は50,000円。70年代のアコギとしては、なかり高価なものだという。

【参考動画】

現存している個体数もそう多くないらしく、中にはハズレもあるだろうから、アタリのスリーエス W-500 は2024年現在、それなりに希少なのかもしれない(プレミアがついて値上がりするほどではないだろうけど)。

前にも書いたが、チューニングが狂いやすくなっていたので、ペグは自分で交換した。ただ、トップにクラックが2本入っている影響でブリッジ周辺が若干盛り上がっている。ネックのコンディションも正直いって怪しい。おそらくそれゆえに、素人の自分は思うように弦高を調整できず、3弦1フレットがビビってしまう。だけど、お気に入りであることに変わりはない。今回、弾き語りライブを決意して、触る時間が増えたことで愛着はさらに増した。

しかしながら、グッドコンディションにはほど遠い。今度のライブをなんとか乗り切れたら、プロのリペアマンに一度診てもらったほうがいいんだろうな。メンテナンスにいくらかかるのか不安だけど。できることなら、この鈴木さんを死ぬまで弾き続けたい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?