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ライブフォトグラファーが見たコロナ禍のライブハウス

いまも休業を続けているライブハウス。毎日のようにライブハウスでライブ撮影をしていた私にとっては、このような事態がくるなんて想像もしていませんでした。いまライブハウスがどうなっているのか都内のライブハウス「四谷アウトブレイク!」に取材してきました。

ライブ配信に活路を見出すライブハウス

ライブハウスは今年2月中旬と早い段階から感染者を出してしまい、緊急事態宣言以前から休業を余儀なくされてしまいました。しかも行政からは何度も「ライブハウス」と業種名を名指しされ、すっかり世間の目も厳しくなって評判もガタ落ちです。3月以降、ほとんどのライブが中止となり、私も何本もライブ撮影の仕事がなくなりました。

そんな状況でも全国各地のライブハウスではお店を持続させるために、いろいろな工夫をしながら生き残りをかけています。その工夫の一つが「ライブ配信」です。店舗営業が出来ない代わりに、無観客状態で演奏しているライブをインターネット配信して、ネットを通じて投げ銭してもらうのです。今回、撮影依頼もあったのと、ライブハウスの現状が見てみたくて、配信ライブを行っている東京都新宿区「四谷アウトブレイク!」に取材させてもらいました。

四谷アウトブレイク!は、クラウドファンディングでトイレ改修工事ギグ(写真)を行ったり、献血車を呼んで献血ライブを開催したり、ライブハウスで耳栓を売ったりと、さまざまなアイデア企画を押し出すユニークなライブハウス。私もライブ撮影や、自分の企画イベントを行わせてもらい、とても懇意にしていただいています。

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ライブ配信はまだ手探り状態

ひさしぶりに四谷の街に来ましたが、営業しているお店も人通りも少なく、緊急事態宣言下であることを再確認。ライブハウスに行くのに、ちょっとした後ろめたささえ感じます。でも、私が青年期だった80年代のライブハウスは、喧嘩やトラブルが日常茶飯事で危ない場所と言われて、「覚悟」みたいなものが必要でしたから、何となく、あの頃を思い起こしたりもしました(もちろん状況は全然違いますが)。

四谷アウトブレイク!に入ると、ブンさんこと佐藤店長が出迎えてくれました(写真)。佐藤店長はライブハウス休業期間、お店とスタッフを守るべく、店内のテントに寝泊まりしながら、いろいろ試行錯誤しています。4/1から始めた生配信は100数十本を数えますが、まだ手探り状態だと言います。

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この休業期間中は、日常業務とは違うことを数多く覚えなければいけなかった佐藤店長。インターネットを配信するための知識、撮影技術のこと、投げ銭システムのこと、慣れないことだらけ。この日も配信直前まで、機材トラブルがないように入念に確認していて、いつも明るい佐藤店長の緊張した姿を見るの初めてでした。

会場定員を超える人数が配信ライブを視聴

この日のライブ配信は四谷アウトブレイク!の中でも定番企画「キンミヤナイト」。生演奏はなく、すでに録画されたものを配信するスタイルで、各出演者が動画チャットを通じてコメントします。会場内は、佐藤店長のほか会場スタッフ1名、映像撮影スタッフ、スチール撮影の私など最少限の人員で、換気に気をつけ、マスク着用、ソーシャルディスタンスを守りながら配信ライブは始まりました。配信はYoutubeチャンネル、投げ銭システムはBASE、動画チャットはビデオ会議システムzoomを利用。

定刻通りに配信が始まるとアクセス人数がどんどん増えていき、そしてコメント欄には続々と視聴者からの感想が書き込まれます。最初の1時間で200数十名と、会場の定員数を超えた人数が視聴しており、後半は多少人数が下がったものの最後まで多くの人がライブ配信を楽しんでいました。それに投げ銭の方も店側の予想数を超えたようで、投げ銭への返礼で送るマスクがサイズによってはなくなるほど。

キンミヤナイト onYouTube!!!
https://youtu.be/Hyxd8BZlRug

ライブ配信の良い点、改善点について

今回のライブ配信は定番人気企画「キンミヤナイト」ということもあって成功したケースではないかと思います。でも、すべての配信がこういう結果ではないとのこと。

私が初めてライブハウスによるライブ配信の現場を見て思った「良い点」を挙げてみましょう。

Good!!!○自分のペースでライブ体験ができる
リビングや自分の部屋などくつろいだ場所でゆっくりと観られます。飲食しながら、寝転びながら、どんな風に視聴するのも自由。ライブハウスのタバコ臭さ、大きな音が苦手な人にも嬉しいことではないでしょうか。

Good!!!○会場のキャパ以上の人数でもライブに参加
会場のキャパによってライブを見られる人数は限られていますが、配信であればキャパ以上の人がライブに参加出来ます。また遠方の人、時間の都合で途中しか見られない人だって参加可能。

Good!!!○観客同士のコミュニケーションも楽しめた
ライブの楽しさの一つには観客同士のコミュニケーションがあります。文字だけとなりますがコメント欄を通じて感想のやりとりが出来るのも楽しいものです。しかも録画であれば演じている本人ともやりとりも可能。

Good!!!○ライブ配信中に出演者からの解説が読める、聞ける
上の続きですが、今回は録画を流すスタイルだったので、配信中に出演者による解説コメントが読めるのが良いと思いました。DJプレイで何の曲を流しているのか、その曲がどういうものかなど解説してもらえるのは新鮮でした。

Good!!!○生演奏と録画を一緒にしたイベントも可能
ライブの基本は生演奏ですが、配信であれば、同日に生演奏と録画が一緒になったイベントも企画できそうです。生演奏の場合、楽器などのセッティング時間があるので、そうした時間に録画演奏を入れることでスムーズなイベント進行が出来るかもしれません。いまは3密を避けるために制限がありますが、コロナ収束後には、こんなスタイルがあってもいいかもしれません。

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ライブ配信ならではのメリットは結構あるなと思いましたが、一方で今後の課題かなと思うこともあります。

○配信のクオリティをどうするか
いまは、どこも緊急事態で配信を始めましたから、配信のクオリティについてはライブハウスごとに千差万別。配信をメインにした業務でもないので決してスキルが高いとはいえません。今後、投げ銭など配信でも収入化させていくのであれば、ある程度、クオリティや知識が必要になるのかなと思いました。アーティスト個人でも配信できるので、ライブハウスらしい配信とは何かが求められていくのではないでしょうか。

○集金システムをもっと簡便に
投げ銭をするのが環境的に難しい人もいると思いました。PC環境なのかスマホ環境なのかによって振込方法に違いがあったり、もっと簡便な方法があればいいなと思いました。電子マネーの普及率が高まっていけば解決されていくのでしょうか? この辺はまだ黎明期らしく、もう少し時間がかかるかもしれませんね。

○やはり音の迫力が物足りない
やはり不満なのは「音」です。パソコンやスマホ経由の小さなスピーカーでは音楽を楽しむには物足りません。これは配信側の問題ではなく、受け手である視聴者側の問題。個人的には大きなスピーカーから飛び出てくる「音圧」にこそライブの良さがあると思うのです。

まとめ

ライブ配信はとても面白いし可能性も感じましたが、あくまでも急場しのぎであって、これだけではライブハウスは運営できません。ただ、ライブハウスがこれまで通りに営業できるようになったとしても、ライブ配信は一つの運営手法として残っていくような気がします。工夫次第でこれまでにはないライブ企画の可能性を感じます。

また、今後、どのような事態がおとずれるか分かりません。お客さんを呼んでライブをやる以外にも「出来ること」を一つでも数多く持っていた方がいいと思いました。それは私のようなフリーランスも同じこと。今回の取材からあらためて学びました。

とにかく緊急事態宣言が解除されて、少しでも早く全国のライブハウスが通常営業できる日が来ることを祈っています。

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フォトグラファー/取材記者 1996年からP.O.A.のライブ撮影をはじめ、数々のアーティスト達のライブを撮影し続ける。現在は取材記者としても活動。シニア、スポーツ関連を中心に原稿仕事もこなす。
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