ホピの神話3
ホピが石板の片割れを持って旅立っていく白い兄を見送ると、マサウは、一本の棒を持ってホピにこの大地でトウモロコシを植える方法を教えた。
ホピはマサウに教えられた通りに棒を使い、種を撒き、トウモロコシを植え育てた。
しかし、約束の大地は砂漠の上にあり、生活をするのもままならない状態だった。
それを見ていたのが、ホピの大地から遠くに見える「サンフランシスコ・ピークス」という山に棲むカチーナ(精霊)たちだった。
カチーナたちは、ホピが創造主との約束を守り、ようやくこの大地に辿り着いていたことは知っていたが、当初は見守るばかりだった。
しかし、水もほとんどない過酷な環境の中で、平和ん祈りながら生きる彼らを放っておくことはできなかった。
山にいたカチーナたちが次々と、ホピの大地へとやってきた。
動植物、昆虫などの姿を持ったもののほか、雨雲や雷雲、雨そのものを呼ぶために見たこともない姿で現れたものなど、それぞれの役割を担った精霊たちが、ホピの祈りの生活が整うようサポートした。
さらに、創造主を称える祈りの歌を教え、ホピの大地に恵みの雨が降るように祈る、雨雲を呼ぶダンスなど、ありとあらゆることをホピに教えた。
ホピの暮らしは豊かなものとなった。
しかしホピはいつしか、何でもサポートしてくれるカチーナたちを頼るようになってしまった。
そんなある時、カチーナたちから「これ以上サポートを続けていると、あなたたちは創造主と約束した生き方を忘れてしまうかもしれないので、そろそろ山に帰ります」と告げられる。
ホピは彼らの存在そのものが大好きだったから、一緒にいて欲しいと懇願した。ホピとカチーナたちは話し合い、太陽が生まれる冬至の日に山からやってきて、夏至の日まではホピにいて、夏至には山に帰って、冬至になるまでの間は山から見守っていると約束した。
「ただし、私たちは、もうあなたたちに見える姿では現れない。今、私たちの姿をすべて留めておきなさい。私たちと同じ姿で、同じ歌、同じ踊りを踊ったなら、私たちは、その姿にスピリットとして宿る。」
「また、私たちの姿を人形としても留めておきなさい。ハコヤナギの木の根を使い、色や形を私たちと同じ姿に作り上げたなら、私たちはその人形にもスピリットとして宿る。そして、その人形をどもたちに手渡しなさい。子どもたちが、私たちの存在を忘れないように。そして、その子が大人になった時、その子が守る家族のために私たちはサポートする。私たちが山に帰っている夏至から冬至の間は、人間は人間らしく祈りの儀式をしていきなさい。」
そう言うと、カチーナたちはホピにさまざまな儀式を伝授し、装束やカチーナドールの作り方を教え、夏至のダンスを最後に山に帰っていった。
ホピは、こうした神話の物語をずっと子々孫々に伝え続けている。
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