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詩の穴

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歌詞にならなかった詩をのせています。 「王さまの耳はロバの耳」の穴のような詩の墓場。供養して下さい。
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#オリジナル

無題

無題

昼過ぎに降り出したひどい雨は夕方前にやんだ
晴れた空の中にぽっかりと拳を突き刺して
穴を開けてみたら虹になった

七色のひかりに乗っかって
吹き飛ばされて煽られて
降り立つ知らないどこかの街で
誰かと握手をしたい

名前を呼ばれた気がして
振り向いてみたら黒い野良猫が
大きなあくびをして丸まって
陽だまりを呼んでいた

せまい世界に生きるわたしたちに
きっと今日も降りそそぐ太陽のような優しさ

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無題

無題

くちびるにピンク色をのせた
春風がすこしだけ背中を押して
あなたのとなりまでわたしを走らせた

日が暮れるまでにきっとキスをするふたりは
まだ青い空の下
視線が合う瞬間を避けながら
手探りで恋をしてる

詩の墓場

無題

無題

長い髪を切りたくなったのは
誰かのせいじゃなくて
水たまりの中で揺れる陽炎
飛び越す影はきっと

日差しの切れ間を探して
たどり着いたビルの屋上で
とっくにぬるいサイダーひとつ
君と飲んで 少し笑って

麦わら帽はどこかに飛んでいった
真っ青な空と入道雲
体ごと心ごと
夏に飲み込まれそう

そのままわたし行方不明

少しずつ長くなる夜
君が時計を見る前に
水たまりの中へはねるビーチサンダル
浮かれ

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