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ヒヨリゲタメソッド ver1—欲望の演技論

・この文章は日和下駄が演技を実践する中で生まれた方法をテキスト化・図式化したものです。
・あくまでこれは日和下駄が演技するための方法であり、俳優の演技を代表するものではありません。

演技の回路

・人間は他者の欲望によって変化する存在である、としてみる。
・俳優は他者の欲望を自分の欲望とし、行為することで、他者に他者自身の欲望を気づかせる存在である、としてみる。
・俳優にとっての他者とは、観客、演出家、戯曲、劇場、稽古など、俳優に演技を要求する全てである。
・他者が俳優に欲望を差し向け、俳優が他者の欲望を引き受け、内面での処理を経て俳優が行為し、行為に触れた他者が他者自身の欲望に気づくまでの流れは、回路図として表すことができる(図1)。

図1_演技の回路

・演技は稽古を通じて作品ごとに生まれる。
・俳優の欲望は他者の欲望を行為として表現したいという欲望である。
・俳優個人の欲望は、俳優の内面において、他者の欲望が行為へと至る過程で染み出す。比喩的に言えば、俳優個人の欲望とは導線の欲望である。

演技の過程で起こる質的な変化

・演技において、俳優は欲望を質的に変化させる
・質的な変化は二度起こる
・一度目は他者の欲望を自分の欲望とする際、二度目は自分の欲望を行為とする際である(図2)

図2_演技の過程で起こる質的な変化

・これらの質的な変化が引き起こる際、それぞれの前者(他者の欲望、自分の欲望)を引き継ぎつつも、どこかで跳躍が起きている。
・これらの質的な変化を生むことができるのが俳優の創造性・作家性である。
・俳優個人の創造性・作家性・個性は、質的な変化のさせ方である。

演技で操作可能な3つの対象

・欲望が行為に至る過程で、俳優が操作可能な対象は3つある。
・一つ目は意識、二つ目はメタ意識、三つ目は身体である(図3)

図3_演技で操作可能な3つの対象

・3つの対象は相互に影響し合う。
・3つの対象を意識・操作せずとも演技を行うことは可能である。
・3つの対象を意識する強さは意識的にせよ、無意識的にせよ変化させることができる。比喩的に言えば円の大きさは変わる。
・3つの対象はどれも消失させることはできない。
・俳優は身体とメタ意識を直接的に操作することができる。
・他者は身体とメタ意識を間接的に操作できる可能性がある。
・意識は誰にも直接的に操作することができず、俳優が身体とメタ意識を用いて間接的に操作する。
・俳優の技術とは3つの対象を意識でき、さまざまに操作できることである。
・良い演技は俳優が3つの対象を等価に意識し、十全に機能させる時に生まれる。

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