#3 ろうそくと人魚と泡と
夏も盛りである。こうも暑くては外に出られぬ。いやはや参った。
この夏はまだ一度も海に行けていない。ベタ塗したような青さの空を眺めながら、夏ボケの頭の隅で、海を思い浮かべる毎日である。
前回あれだけ海について力説していながら、この有様である。やれ体力の低下だ、人混みが嫌いだなんだと理由をつけて、近年では夏場の海への足が遠のいている。やはり夏を感じるには海だ、とすっかり刷り込まれた海馬が叫び声をあげるのだが、それに負けじと腰はどっかりと重く座して動こうとしない。動かざること