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見えなくても、キャッチボールはできる。


「え、なんか・・・めっちゃおもしろそう!!」

“課題”をもらって、こんな気持ちになったのは久しぶりだった。


『企画でメシを食っていく2021』、4回目となる今回の講座のテーマは「対話の企画」。そして課題は

目を閉じてパラリンピックを「音」で観戦し、そこで発見したことを40秒で話してください。

というもの。この課題を出してくださったゲスト講師は、ダイアログ・イン・ザ・ダークの檜山晃さん。


正直、お恥ずかしながら、オリンピックもパラリンピックも、ものすごく興味が強い分野ではなくて。それでもこんなに胸が躍ったのは「 “音” で観戦することでどんな世界が見えるんだろう!?いや、目を閉じてるから見えないのか?どーなるの!?」と、ドキドキわくわくして、早くそれを味わってみたいと思えたからだと思う。

***

パラリンピック開幕。さっそく目を閉じて、車いすラグビーを観戦。

・・・。

・・・・・。

・・・・・・・。


やばい!実況の方の声しか耳に入ってこない!!

しかも、選手名や得点、状況描写、いろいろ情報が多すぎる・・・!これもこれで新しい発見ではあるものの、これはピンチだ。講師の檜山さんは「無観客だからこそ聞こえる音があると思います」とおっしゃっていたのに。

でも、焦っていたのも束の間、耳が慣れてくると、だんだんいろんな音を聞き取れるようになってきた。

車いす同士がぶつかる音、選手の応援の声。目を閉じているから、情報量は少なくなっているはずなのに、いろんなものが見えるようで、むしろ情報量はすごく多い。その分「発見」も多くて、課題を提出するための材料はたくさんあった。


ただ・・・問題は、その発見をどう届けるかということ。

全盲の檜山さんは、課題の音声ファイル「40秒」を企画生約80名分、聞いてくださることになる。

「めちゃくちゃ大変や・・・」

純粋にそう思ったのと同時に、何か変わったことをしないと聞いててつまんないかも、とも思った。


変わったこと・・・目立つこと・・・?

BGMを付ける!いや、そんな編集技術もってない。
もはや歌っちゃう!?いや、歌には自信がない。
あえて沈黙とか!いや、40秒しかない。

うーん。とにかく聞いている間、少しでも楽しんでもらいたいなぁ。「対話の企画」だからこそ、対話しているような感覚になってもらいたいなぁ。


そうこう考えているとき、ピン!ときた。


***


私は、通販会社で働いていて、入社1年目はコールセンターで研修を受けた。

私たちの会社は少し変わっていて、顧客対応において、マニュアルもノルマも時間制限もない。だから、お電話をくださったお客さまと1時間以上も話が盛り上がることだって、社内ではよくある光景。

大事にしているのは、「笑声(えごえ)」

お顔が見えない通販会社だからこそ、声しか聞こえないお電話だからこそ、笑顔や温度が伝わるような声を意識してお話する。だから、お客さまは安心して、あれもこれもと、お話してくださるのだと思う。


これだ!と思った。


今回の課題で見つけた「発見」を、見つけた瞬間の温度が伝わるように話そう。話したい!という気持ちのままに伝えよう。目の前に、相手(檜山さん)がいることを想像しながら

あれこれ考えた末にたどり着いたのは、そんなシンプルなことだった。


***


講義当日、檜山さんは「キャッチボールをすることが夢なんです。相手の胸元に、ちゃんとボールを投げたい。」とおっしゃっていた。

そんな檜山さんは、2時間半の講義中ずっと、相手の言葉をていねいに汲み取って、真剣に言葉を探し、やさしく返し続けてくださっていた姿が印象的で。

見えないからこそ、“相手は今どこにいるんだろう?急に投げて驚かないかな?このスピードだったら受け取れるかな?”と、想像を膨らませながらボール(言葉)を投げることができるんじゃないかな、と思った。


「制限」によって企画やクリエイティブが生まれる、という考えを聞いたことがある。檜山さんは、目が見えないという制限によって、やさしさや自由な解釈を生み出しているのかもしれない。


スマッシュを決めるのではなく、ラリーを楽しむこと。

企画メシ主催者である阿部さんがおっしゃっていた言葉。

例えば後輩と話しているとき。会議で発言するとき。つい「良いこと言わなきゃ」と力んでしまうこともあるけど、私は対話をする中で、これからもずっと、こういうことを大切にしていきたい。



今回もまた、知らない世界に触れられて楽しかったなぁ。

次回は「本の企画」がテーマということで、さっそく参考図書を数冊買ってきた。少しずつ、ほんの少しずつ、企画を楽しめるようになってきたことが、うれしい。







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