父の急逝。一人帰省に向けての準備

要介護2になり、ベッドで寝たきりの生活になった父は、当初こそ食欲が戻ったような様子だったのですが、徐々に食べられる量が減ってきました。
それでも、お医者様からも「年は越せるし、まだこれから」と言われた事に希望をつなぎ、日々看護レポートを見守っていました。

12月の始め頃から、レポートの様子や母からの電話で、あまり食事が進んでいない事、昼夜逆転の状態になってしまい、夜に目が覚めている父を心配して、母も夜よく眠れていない事などを聞き、年末に一度日本に帰るべきか、年明けに帰るかの相談を夫としていました。
と言うのも、やはり年末年始、特にクリスマス前後の航空券は高い!
子供のクリスマスは?お正月はどうする?など考えると、なかなか決断できずにいました。

12月2週目になり、母からの電話で聞く父の様子や、看護レポートの内容から、やはり帰国する事を決めました。
今回は子供を連れず、私一人での帰国です。チケット代の高さもあるんですが、今回は介護のヘルプや、万が一の時の事を考えての帰国なので、子供達の相手をする余裕がないと判断したからです。
これはいよいよヤバいんじゃないかと判断した要因ですが、この前後在宅介護や介護ヘルパーさんの情報、巡回医師のブログなどを読み漁っていた中で、「口から食事がとれないこと、排せつ機能に問題が発生すると、そこから先は長くない」という印象を受けました。
父はそれまで、鉄分サプリの摂取や、食事量の減少、体を動かしていない事などから、便秘気味の状態であったのですが、帰国を決める数日前から弛緩しているのに近い状態だったようで、ダラダラと排せつ物が出ているような記述を読んだからです。

とは言え、その時点でも「ここからお正月過ぎまでは持つかも?」という期待というか、願いに近いものもあり、航空券は子供たちの夏休みのスタートを待って出発する日程で取りました。
出発まで時間的に余裕を持てた事で、残される夫と子供たちの為に準備をする余裕を持てました。

夫と子供たちで過ごす夏休みの為の準備

具体的にはまず、日本語補習校から出される夏休みの宿題の為の準備。
個別のファイルボックスの中に、出された宿題と文房具をしまえるようにしておき、各自がそこから宿題を出してやれるようにしておきました。
また、補習校がない次男が姉兄の宿題を邪魔しないよう、次男用のひらがなドリルなども準備しておきました。

次に、既に決まっている夏休みの予定(子供が友達と遊ぶ約束をしているなど)の共有。夫と私でスケジュールを共有できるようにしました。
また、一日の予定などを表にしたものをプリントアウトし、夏休み中の生活が乱れすぎないよう管理できるようにしました。

最後は、冷凍庫に味付け肉の保存。下味をつけて、焼くだけの状態になったものをたくさん入れて、夫がご飯づくりに困ったら活用できるようにしました。

父の最後

既に3週間帰省する事を実家に伝えていたのですが、「案外3週間何事もなく帰ってくるかも」という期待もわずかながらありました。
しかし航空券を取ってから2日後、子供達のターム4が終了した週に、母から電話がありました。
「お父さんの呼吸がおかしい。今介護士さんが蘇生をしてくれている」

介護士さんの午後の定期巡回が終わった後、しばらくして母が父の部屋を覗いてみると、呼吸がおかしくなっていたそうです。慌てて介護士さんを呼び戻したところ、すぐに戻ってきてくれたそうです。
子供達を電話口に呼び、かわるがわる声掛けをさせていましたが、しばらくしてバタバタするからと電話を切りました。

年齢的にも体力的にも、ここからの復活はありえない。そう思っていても、正常に戻る事を願ってやみませんでした。
もっと早く行動していれば、もっと早く帰っていれば。ケチらず高い便でも、航空券を取っていれば・・・思いは尽きません。

数時間後、母から、父が息を引き取ったと連絡がありました。
いつかこういう日が来るとわかっていましたが、一人っ子の自分が結婚し、海外に移住すると決めた事をこれほど後悔した事はありません。
きっと父は、もっと私が近くにいたらと思ったのではないかと思います。
と同時に、父は何度かニュージーランドを訪れ、とても気に入ってきれていましたから、これはこれで良かったと思っているのかもしれません。

その日の夜、父の容態急変から、死亡確認されるまでの様子が、看護レポートに詳しく記載されていました。
エンゼルケアの様子もしっかり記載してくれていました。
実は亡くなる3日前に、義姉が父を訪ねてきてくれており、その際に母が頼んで、もしもの時の為に父の最後の服を選んでもらっていました。
おしゃれだった父に似合うように、義姉がクローゼットから選んだ服は明るい赤のシャツでした。

その夜は、何度も何度も看護レポートを読みました。
何度も読み、その時の状況を目をつぶって、できるだけ詳細に思い描きました。

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