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ウェディングジャーナル連載 Vol6 自社×他社 企業を越えた協業

※本記事は2023年にウェディングジャーナルに連載した記事です。

自社×他社 企業を越えた協業


今回の連載の最終回は『「自社×他社」企業を越えた協業』をテーマとします。
ブライダル業界は、コロナ禍の影響で「数年先に訪れたであろう危機」が急に押し寄せて来たことで、様々な危機に瀕しています。その波に対抗するべく、様々な改革が行われていますが、コロナ禍やアフターコロナを見据えて急増しているのが今回のテーマである「企業の垣根を越えた新たな協業のカタチ」と言えます。コロナ禍を耐えるだけではなく、アフターコロナを見据えた構造改革が進んでいる企業の多くは、「協業」を戦略の一つとして推し進めています。現在行われている協業以外に、今後益々増えていくと予測する協業について、この後に記載をします。

1.プランナー業務に於ける協業


まずは代表格として「部門ごと他社にアウトソース」「営業代行・フリープランナーとの協業」の二つが挙げられます。「部門ごとアウトソース」という形態は、コロナ禍以前より行われましたが、かつてよりも圧倒的に需要が高まっていると感じています。実際弊社にも、かなり多くの打診がきます。例えばホテル業態を例にとると、セールス部門を他社と協業(アウトソース)し、施行部門を自社で運営するというケースが、非常に多いと感じていますし、うまくいく可能性が高いモデルだと私は感じています。実際に、かなりうまくいっている事例も目の当たりにしました。
しかし一方で、「良し悪し/好き嫌い」の次元ではなく、そうまでしないと存亡の危機に関わるような状況ではあるにも関わらず、企業間の軋轢が生じており、うまく協業が為されていないケースもよく耳にします。もはや内部でいざこざを起こしている場合ではないのに、内向きの議論に終始していて、業績・顧客満足が全く上がらないシーンを見聞きする度に、経営層も含めた上層部からのマネジメント不全を感じざるを得ません。このスキームは、成功確率が高いと感じるので、今後更に規模が拡大していくと予測しています。
コロナ禍以前はかなり少数であった「営業代行」「フリープランナー」での協業についてです。私の主観ですが、完全に他社を頼る前に、まずは自社のOB・OGが活躍できるフィールドや、土日いずれかまたは平日限定など、自社内での多様な働き方を最大化するのが、やはり最も効果的と言えると感じています。その次の施策として、この章で記載する他社との協業が適していると感じます。
私もコロナ期間の2年ほどで、本当に素晴らしいスキルや志をお持ちのフリープランナーの方と、何人もお目にかかる機会がありました。その一方で、残念なケースに直面したこともあります。弊社では、ブライダル業界以外のコンサルティングも数多く行っていますが、数年前から営業代行が当たり前になってきている業界事例に於いて、とても問題になっているコトが「品質管理」です。派遣をする企業の担当者は、常に派遣先企業からのクレームに苛まれ、折角採用・育成したメンバーも長続きしないというケースを多く見てきました。婚礼業界は、まだまだ立ち上がったばかりの状態ですが、よりよい協業体制を目指す新しいマネジメントの在り方も重要になると考えています。

2.採用に於ける協業

「業績の増加に対して、採用が全く追いつかない。人が足りない。その反面、経営・本部から採用はしない、コストは掛けないといった指示がなされている」という悲痛なご相談をよく伺います。その半分くらいのケースが「コストをかけない」のではなく、コストをかけても採用活動にそもそもの課題がある、待遇面などマーケットを見誤っているというケースであるコトが多々あります。この連載は、出来ていないことを糾弾するものではありませんので、実際にうまくいっているケースを紹介しますと、例えば、エリア内の競合施設が、採用だけは連携するというケースも生まれました。地域誌の表周りの広告を数社でジャックして、一気に業界への注目度を高めたり、合同でのイベンド・WEB広告を出したりと、とても合理的だと感じました。
再び本論とは逸れてしまうのですが、あまりに多くのご相談をいただくので記載します。現場の皆さんが、耐えに耐えてきた一線を越えようとしているのが、春の繁忙期であり次のGWです。そうしたことも勘案して、本当に解決に繋がる戦術を示してほしい・気づいて欲しいというコトを切に願っています。

3.集客に於ける協業

これまで集客活動に於いては、媒体社主催のイベントなどでしか協業をしてこなかったブライダル業界ですが、いよいよ集客での協業が珍しくなくなってきました。これは非常に良いコトだと感じていますし、今後はもっと増えていくと考えています。例えば、WEBプロモーションでの協業や、リアルイベントでの協業など、今後益々増加していくと考えています。

4.本格的なDX・BPRの流れ

ブライダル業界では、これまでごく一部の企業でしか行われていなかった、本格的なDX化やBPR(Business Process Re-engineering)ですが、これこそ他社との協業なしには為し得ません。(稀に自社単独でやり遂げてしまう企業がありますが・・・)。
生産性の改革とは、単にシステムの入替という次元では本来の目的を達しません。誤解を恐れず記載するならば「システムを入れただけで、生産性が変わると思い込んでいるのであれば、それは本質的な解決策ではない」というコトです。多くのケースでは、システムだけを変えたところで、業務プロセスが変わっていないので、大した業務削減にならないことが多いのが現実です。業務を俯瞰的に見たうえで設計するには、知見・経験値とともに、これまでの慣習にとらわれないフラットな視点が必要となります。そうした面では、専門の企業との協業は必須です。むしろ失敗して途中で頓挫するリスクを考えれば、他社との協業は合理的だと考えます。

5.研修に於ける協業

所謂マナー研修を始めとしたベーシックスキルはもちろんのコト、他にも研修を合同で行う企業も増えてきました。これまで、異業種企業間で一斉に行う研修は見られましたが、同じ業界となると守秘義務や、カルチャーの違いの観点でなかなか為し得ませんでした。弊社の研修でこのケースが成立しているのは、弊社が業界に精通しており、且つ研修を得意としているからなのかもしれませんが、研修講師の工数は、3社になったところで変わりませんので、負担する費用は軽くなります。加えて、開示してはならないことは開示せずに、むしろ業界の仲間と繋がるコトでの良い刺激をもたらすという意味合いでは、良い相乗効果を生んでいます。

6.購買に於ける協業

購買については、大きな可能性を感じています。単価が上がっていく予測よりも、コストが上がっていく方が急速で影響が大きいことを勘案すると、この購買に於ける協業も、一つの手段になると考えています。実際、地域間の連携でスタートしている事例もありますし、様々な分野で協業が進んでいくと考えています。

7.異業種との協業

ブライダル業界に於ける顧客の横展開という意味で、ジュエリー・エステ・保険(ブライダル保険・生命保険)、引っ越しの紹介やファイナンシャルプランナーの紹介など一般的によく見られます。弊社も参画しているプロジェクトでは、そこから一歩進んだ異業種・異なる商材への展開というアプローチを設計し動き始めました。これまでの枠組みから更に進んだ展開を構築することで、収益貢献のみならず、顧客満足の向上にも大きく寄与することに繋がると感じています。

その他にも、式場運営企業とフォトウェディング企業との協業や、式場運営企業がプロデュース事業に乗り出すなど、次の一手が形になってきていることも昨今の特徴と言えます。

最後に)

この連載の最後にあたり一言。コロナ禍により、本当に大変な思いをしている経営者の皆様。そして、踏ん張り続けている現場の皆様へ。平時に頑張るコトは誰でも出来ますが、こうした苦しい時期にも、真摯に向き合い続けることは並大抵なコトではありません。皆様は、本当に素晴らしく、かけがえのない存在です。私の連載の一貫した想いは、その皆様が明日へのヒント、活力に繋げていただけるような連載を記すコトでした。
これからは、直接でも会いやすい状況になっていくと信じています。この連載の後に、
一人でも多くの業界を支えておられる皆様に直接会えることを願っております。
これまでご覧いただきましてありがとうございました。

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