波多野爽波俳句全集を読む①
暁光堂俳句文庫「波多野爽波俳句全集」を読んでいます。最近気になる俳人さんの師系をたどると、波多野爽波に行き着くことが多く、また多くの方が波多野爽波を引用していることを感じて、一度眼を通しておこうと思いました。
俳句全集は全部を読もうとすると、途中で挫折してしまうのですが、句集ごとによめばよいということに気がつき、それごとに読むことにしました。とても読みやすくなりました。
また、句集を読んでも、自分でアウトプットすることがなかったので、このようなプラットフォームを頂いてることを活かそうかなと。まだまだ、OUTPUTに拙い部分も多いかと思いますが、私の投稿で、作家を知る、作品を知るきっかけとなったら幸いです。
句集「舗道の花」
第一句集「舗道の花」は、1956年発行。昭和15年(1940年・18歳)~28年(1953年・31歳)までの句が収録。序文に高濱虚子、解説に京極杞陽が執筆。編年体で記載されています。
まえがきに
とあり、この言葉を頭に置きながら、感銘をうけた句を発表された年とともに、以下に挙げます。
波多野爽波は、大正12年(1923年)生まれ。昭和15年に、ホトトギス初入選、その後虚子に初めて出会います。学習院高等科の句会に参加。後輩・三島由紀夫、先輩・京極杞陽がいました。
昭和17年に京都大学入学するも、昭和18年に召集。そして、昭和22年に大学を卒業。同年結婚、左京区田中春菜町に移住。昭和24年(1949年)には、「ホトトギス」同人に最年少で推挙(爽波26歳)。そして昭和28年に、俳誌「青」を創刊、主宰を努めます。
第一句集、冒頭に書いた作者の言葉通り、見たままを感じたまま読むということを厭わない、ということをすごく感じた。「白靴の」「瀧見えて」は、「見る」という言葉でてくるのですが、それを効果的につかっているなあと。
そして、見たままを感じたまま厭わずに詠む句並ぶ中に、突然大胆な取り合わせの句がでてきて、ハッとさせられる。「道をしへ」「天と地の」「雲の影」「春月に」あたりの句。特に「春暁の」は、句集の中では明らかに浮き上がっていて、作家の内面を知れる感じがあるというか。同じく「爽かに」あたりも。日常の生活の中で、たまに別なものを食べたくなる感じがあるというか。
写生という言葉は、客観的なものではなくて、内面的な部分も写生されているということも、この句群を通してわかったような気がしました。
追記
以下、気になったところ。
地に円を描きある中に蜂とまる
こちらの句、
虚子のこの句を思い出しました。ホトトギスの同人だった爽波なので、そういうことはありえるのかなとか。
秋の夜の時計に時計合せ寝る
の句は、
の句がベースになっているのではないかとか、
また、
冬空や猫塀づたひどこへもゆける
こちらの句は、生駒大祐さんの
なんとなく思い出します。
こういうひょっとしたらな関連性をみつけるのも、句集を読む楽しさだなあと改めて感じました。また、発表年も、この作品における時代背景も知ることができて、当時の空気感も改めて感じられるなと思いました。
また第一句集は、本人曰く、「ホトトギス」に掲載されたものより選んでまとめたということで、高濱虚子によるところが大きい句集となっており、今後の句集において、このあたりの傾向がどのくらい変わるのか、そのあたりも注目したいと思いました。(つづく)
参照
「波多野爽波俳句全集」、暁光堂俳句文庫 2022
波多野爽波、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A2%E5%A4%9A%E9%87%8E%E7%88%BD%E6%B3%A2 2024.07.17 時点
追記
このブログにたどり着いた方は、すでにご存知の方もいらっしゃいますが、フォロワーさんであるちーかま(千野千佳)さんも同じく波多野爽波俳句全集を読んでらっしゃいます。ちーかまさんのブログもあわせて、ご覧いただくと、より多角的な視点で波多野爽波俳句全集をお楽しみいただけるかなと思います。
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