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書評_目指したのは_脱ホテル___レクサスオーナーに愛されるホテルで学んだ_究極のおもてなし

【書評】目指したのは「脱ホテル」。『レクサスオーナーに愛されるホテルで学んだ 究極のおもてなし』
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正直言って、昔はともかく、現代に於ける国産自動車メーカーのことを私はあまり高評価していない。
日産自動車は、経営が危うくなってヘルプを求めておいて、いざ上手くいきだした途端にルノーを邪魔者扱いしだし、カルロス・ゴーン諸共排除しようとして墓穴を掘るという醜態を見せたし、いつまで経っても何度でも不正検査を繰り返してしまうという、隠蔽体質を治せない三菱自動車なんざも一生乗りたくはない。
では、トヨタ自動車は?

ニホンイチの自動車メーカーという認識はある。確かにある。しかし、なんというか、優等生のイメージがあって、親しみを感じ得なかったのだ。これまでは。
それは多分に、「カンバン方式」、「ジャストインタイム」、「カイゼン」、「ムリ・ムラ・ムダ」といった徹底した工程管理をベースとした、官僚主義的な会社なのであろう、という見方があったからだと思う。
だから、本書を読んで、実はトヨタ自動車では、「顧客ファースト」を第一とし、「相手の視点で物事を考える」ことをモットーとし、その実現の為にこそ、日々の「カイゼン」を止むことなく続けているのだということを知って少なからず驚いた。
さらに、「現場主義」が徹底されており、逆三角形の体質が成され、平社員であっても、顧客の為になることであれば相手が役員だろうがなんだろうが意見を言える文化が造成されているのだと言うのだった。
意外という他にない。

さらに本書では、トヨタが経営するホテルが長野蓼科高原に存在することを初めて知った。
まぁ、企業規模から言ったら、多角経営としてホテルチェーンに取り組んでいても不思議はないのかもしれない。しかし、そういう成り立ちでもないらしい。
その辺りのことは本書を読んでいただければ分かることとして、とにかく、トヨタグループの社員へのおもてなしを目的に作られたホテル「テラス蓼科リゾート&スパ」がどの様に運営されてきたのか。
やがて、蓼科高原近辺の地元の人々や、レクサスを初めとするトヨタ車ユーザーへも門戸を開く様になっていったこのホテルは、顧客に対して何をもたらそうとしたのか。
トヨタイズムとホテル業の融合。そこで目指したのは、「脱ホテル」への道だったのだった。
このホテルのオープニングスタッフの一人として、2005年2月にスーパーバイザーという役職で開業準備室に参加し、以来2021年2月に支配人を辞すまでの16年間に亘りホテルマンとして務めた日々を著者が振り返る。
その内容は、14歳からサービス業に身を投じた著者の経験と、ホテルに入ってから初めて知覚した、「誠実さ、謙虚さ、他者への敬意」を土台とする「トヨタウェイ」との合わせ技と言えた。
その本質とは、「おもてなし」であり、それを語り尽くすのが本書なのだ。

「どんな業種であっても、相手の立場を考え、「おもてなし」の気持ちをもって仕事を進めていく姿勢は非常に大切だ。さらに言えば、仕事だけでなく、日々の生活の中でも「おもてなし」の心はプラスの効果をもたらしてくれるだろう」

「トヨタの考え方はね、一度やってみて、ダメならまたすぐに戻せばいいというものだよ。まずはやってみたらいい」

「1%でもリクエストに応える。テラス蓼科で常に目指していたのは、いつまでもゲストの方々の記憶に残るような心の込もったおもてなしをすることだった」

「クレームが起きる本当の理由とは何か」

「製品なら交換を受け付けられるけど、おもてなしは交換ができない商品だ。もしも誤って失礼なことをしてしまったら、もうそれで終わり。時間は戻らないし、おもてなしの交換もできないという厳しさが接客業にはある」

「お客さんが何もいわなかったからといって、満足してもらえたとまでは言い切れない。本当に満足してもらいたかったら、相手の気持ちを深く読み取って何かをしてあげる必要があるのだ」

「大切なのはお客さんも一緒に悩んで、問題そのものが解決しなくても、顧客と同じ気持ちになることだ」

D2Cという立場の違いこそあれど、常に顧客に接する私にとっても、肝に銘じるべき言葉の数々である。



レクサスオーナーに愛されるホテルで学んだ 究極のおもてなし
作者:馬渕 博臣
発売日:2022年3月10日
メディア:単行本

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