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書評_歴史の舞台裏から学ぶ大東亜戦争シリーズ4_世界最強__零戦_その誕生と栄光の記録

【書評】歴史の舞台裏から学ぶ大東亜戦争シリーズ4→世界最強!『零戦 その誕生と栄光の記録』
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アジア解放が目的である大東亜戦争(第二次世界大戦)に向けて、他国と対等以上に競り合える力が必要でした。このため、日本国の実力を向上させる必要がありました。そして、その実力の象徴する「零戦(ゼロせん)」と呼ばれた世界最強の戦闘機が登場しました。この本は、零戦の設計を手掛けた堀越二郎氏がアイデアから完成までの過程を記録しています。当時はCADのコンピューターソフトがなく、設計図や資料などを全て手書きで書いており、その努力や忍耐力がよくわかります。また、設計主任を任命された堀越氏は重圧をどのように乗り越え人間的に成長し、技術者としてどういった心構えがあったのか、紹介したいと思います。仕事で成長したい人、技術者には必見です。

「零戦」の正式名称は「零式艦上戦闘機」と言い、海軍の制式戦闘機が皇紀二六○○年に正式採用となりました。「零」の由来はその末尾のゼロになります。(皇紀二六○○年は昭和十五年です。今は皇紀を使う人が少ないですが、神社で御朱印を頂くときに書かれることがあります。ちなみに今年の令和五年は皇紀二六八三年です)

零戦は国の行く末をかえた国家プロジェクトとも言えたのではないでしょうか。その零戦の設計主任に堀越氏が任命されたとき、どのような思いだったのか。本書を引用すると

【私には、設計主任という責任は、非常に重荷に感じられた。だが、責任の重さに、いつまでも押しつぶされているわけにはいかない。未熟な私を、新艦戦の設計主任に命じた会社の意図はどこにあるのか。
それほど経験はないが、かえってそれゆえに、マンネリズムを打ち破れるのではないかと期待したからではないだろうか。もっと大きく考えれば、日本の航空工業が、いつまでも世界の後塵を拝していてよいものか。私は気をとりなおして、まっこうからこの仕事にぶつかっていった】

零戦の設計者というだけで、凄い人とレッテル貼りをしていましたが、「責任の重さに押しつぶされているわけにはいかない」と書かれており、最初は重圧に負けていたと推測できます。ただ、それを打ち破り、日本の航空工業を考えて気持ちを切り替え、自分自身を奮い立たせ、全力を尽くして零戦に取り組んだことが伺われます。

その後、堀越氏はこのように書いています。
【困難を避けて通らなかったことは、のちのことを考えると正しい決断だった。
それは、会社の上司のおおらかな態度や、おつきあい願った海軍の人びとの支援のたまものだったと思う。七試の設計をやってみて、私は日本でだれよりも早く、これからの単発機のあるべき姿をつかむことができた。
また部下の能力を発揮させるコツを得たというか、人間的成長といえるものがあったような気もする】

困難を受け入れる勇気、そして、堀越氏をサポートしてくれる人がいたからこそ困難を乗り越えられたのでしょう。また、その経験の中で育成能力を身に付けた話が印象的でした。最後に技術者としての心がけを紹介したいと思います。

【われわれ技術に生きる者は、根拠のない憶測や軽い気持ちの批判に一喜一憂すべきではない】
【長期的な進歩の波こそ見誤ってはならぬと、われとわが心をいましめつつ、目のまえの仕事に精魂を打ちこんだ】
【アイデアとタイミングがよくなければ戦果は上がらない。アイデアとタイミングは、その製品の性質をよく理解し、環境や競争相手の状況をおしはかり、よい判断と実行力がともなって生まれるものである。アイデアというものは、その時代の専門知識や傾向を越えた、新しい着想でなくてはならない。そして、その実施は人より早くなければならない】
【戦果をうるには、時代に即応するのでなく、時代より先に知識を磨くことと、知識に裏づけられた勇気が必要である】
【後進国が先進国と肩を並べるには、それだけの覚悟が必要なのだ】

技術を確立するためには根拠を重視し、批判に感情を傾けない姿勢や長期的な視点で目の前の仕事に邁進する姿勢は現代でもいえる事ですね。自分も見習わなければなりません。また、アイデアだけでなくタイミングも重要で、早く良い決断をして実行に移す重要がよくわかりました。特許がまさにそうですね。そして、研鑽、勇気、覚悟という言葉に惹かれました。人間である以上、この3つが人間的成長に不可欠だと感じました。
零戦を通して、人や仕事に対する向き合い方、人間的成長についても学べる一冊です。



零戦 その誕生と栄光の記録 (角川文庫)
作者:堀越 二郎
発売日:2012年12月25日
角川書店(角川グループパブリッシング)

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