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林真理子著「成熟スイッチ」書籍レビュー

 人は年を取ると外見だけではなく内面も変化していく。よい方向に変わっていくと、精神や人間性が成熟へ向かう。作家の林真理子氏は、現在60歳後半を迎えている。本書は、彼女が、人生の成熟へ向かうための、「成熟スイッチ」(きっかけ、行動、考え方)について、記した書籍である。それは、熟年世代だけではなく、全ての世代が、より良く、そしてポジティブに生きるヒントがちりばめられている。それでは、本書の概要を紹介する。

 まず。初めに、著者の「成熟した人」に対する考え方。

成熟というと、若い時にはデコボコとあちこちが尖っていたものがだんだん滑らかになっていくイメージがあります。最終的には達観して、もはやちょっとしたことには動じなくなっていく。しかし同時に、非常にアグレッシブな面を持っているのが私が理想とする成熟の姿です。

林真理子著「成熟スイッチ」から


 そして、著者の成熟に向かうために、心がければすぐにスイッチを探せそうで、大事だと思う四つのテーマについて述べている。

①人間関係の心得
 人間力のある人には、人望がセットでついていきます。いざという時に自分のために喜んで力を貸してくれる人がいるか。人間関係は成熟にとって最大の財産です。(中略)
 人生が場面転換していくたびに、人間関係はどんどん移ろっていきます。(中略)
 人は年をとり、人づき合いの新陳代謝を繰り返していくうちに、人間関係に悩まないようになっていきます。自我も強くなっていくから、他人との関係に過度に依存することもなくなり、相性の悪い人の存在だってどうでもよくなってくる。
 人のイヤな面を見ても「こういういいところもあるし」と別の長所で補って考えてあげるようになります。(中略)
 大人の世界にはいろいろな状況やつき合い方があるということをまずは学ぶ。そして自分が置かれた状況にあわせられる柔軟性を身に着けたら、しめたものです。 

林真理子著「成熟スイッチ」から

②世間を渡る方法
 世の中のマナーに従ったり世間と折り合っていくことは成熟の条件であるとともに、自分にとっても結局は特になることがほどんどです。(中略)
 とりわけ大切な作法といえば、感謝の気持ちを忘れないこと。そして常に相手の気持ちに立って考えること。マナー本には載っていないマナーでこそ、人と差がつくのです。(中略)
 やってあげたことはいつまでも覚えているけれど、やってもらったことはすぐ忘れてしまう。これも、母から叩き込まれた教えです。つまりは意識的に感謝の気持ちを心に留めておかないと、自動的に「恩知らず」「礼儀知らず」になってしまう。

林真理子著「成熟スイッチ」から

③面白がって生きる
 いろいろなことを面白がって生きている人の姿というのは、後塵を拝する者を何よりも勇気づけてくれるものです。年を取っても好奇心を漲らせていられる人生とは、その人自身の生き方が素晴らしいことのあれわれだと思います。(中略)
 そして私は、好奇心とは、別の人間の人生を味わってみたいということでもあると思っています。そんな人間にとって「本を読む」ということは、自分とは違う人生を見るための格好の材料なのです。読書は必ず人生を面白く豊かにしてくれます。(中略)
 私の人生訓の一つが、「生き残るのは大きいものでも強いものでもない。変化していくものだ。」自分がやりたいと思うことが見つかったのなら、あまりめんどうなことを考えず、まずはいろいろな経験を積んでいくことをおすすめします。そのうち丈夫な枝が何本か生えてきて、幹もいっそう太く立派になっていくことでしょう。

林真理子著「成熟スイッチ」から

④人生を俯瞰する
 人生という長い時間軸の中で現在を俯瞰して考えると、見えてくるものがあります。(中略)
 客観的に自分を見極めることも、俯瞰する力、すなわち「俯瞰力」です。(中略)
 俯瞰力とは、つらい時や悲しい時に自分を慰めてくれたり、笑いに変えてくれたりもしますから、人生の味方につけておくと心強いですよ。
 定年後にどのような生き方をするかは人それぞれですが、「いつも楽しそう」というのは自分自身はもちろん、家族や周囲の人も幸せにしてくれる、大切な姿勢ではないでしょうか。

林真理子著「成熟スイッチ」から

 この四つのテーマは、彼女の、幼少期の両親との生活、無名のコピーライターから、売れっ子作家、そして現在の日本大学の理事長に至るまでの、波乱万丈の人生経験から、導き出された”人生をよりよく生きるための生きた人生訓”である。本書には、その人生訓に至る、彼女らしい、素直さ、生真面目さ、そしてユーモアにあふれた、抱腹絶倒のエピソードが満載に描かれている。そして、彼女が、実践している対処法や、こころ持ちが、極めて具体的に描かれている。ぜひ、本書を一読し、彼女のユーモアに触れ、自分も実践してみたい!と感じて頂きたい。
 最後に、彼女からの、「成熟スイッチ」実践の勧めを記す。

ちょっとしたことでもいいから何か新しいことをして、昨日とは少し違った自分になってみる。成熟にはキリがありません。毎日新しいスイッチを入れながら、自分の変化を楽しむことが出来たら、なんと素敵な人生でしょう。

林真理子著「成熟スイッチ」から

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