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イギリスの牧場で壮大な英語ミス、100倍重いfeeding bottle

大学2年の夏休みにモンゴルに行った。そこで今までの自分の常識を超えた世界を知り、他の国のまだ見ぬ知らない暮らしが気になって堪らなくなった。

9月末に帰国して、12月に世界旅行をすることに決めた。どの国に行くか決められなかったので、一年かけて行きたいところ全部に行くことにした。出発日も3月中旬に決めた。明らかに計画と準備のない決定だった。

大学の授業中を睡眠時間と考え、三つのアルバイトをかけもちして、50万貯めた。1年で5ヶ国以上まわる計画だった。飛行機代だけは払えそうだったので出発した。今思うと明らかに不安な金額だが、生きて帰れたので運が良かった。

イギリスに到着してすぐ、羊と馬を飼う農家に二週間滞在した。おっさんと2人で、三時間のドライブから旅は始まった。途中営業時間外のストーンヘンジに侵入して、警備員が近づいてきたので、2人仲良く走って逃げた。

英語に自信はなかったが、3時間車中で話していて、なんとなく英語での暮らしがやっていける気がした。

それは気のせいだった。

次の日羊の世話の仕方を説明された。小屋掃除や、洗い物、羊の保定など、順調に仕事をこなして行った。そこで頼まれたのがパシリだった。

ふぃーどぼとる?だかなんだかを、納屋から持ってきてくれと言われた。少ない頭の中の辞書を参照して、ふぃーど=エサではないかと検討をつけた。ボトルとはきっと細長い容器かなにかだろう。きっとそうだ。

そこで見つけたのは、青いプラスチック製の150Lくらいの、ドラム缶に似たもの。黒いフタを開けると、中には半分くらいコーンや大豆ペレットなどが詰まっている。ビンゴ!容器も細長いし、中身がエサのようだしこれに違いない!

半分くらいエサが入っていて重かったが、ドラム缶型なので、片側を浮かせて転がすことでなんとか移動することができた。頑張って運ぶこと50m、腕は大変疲れたが、心地よい達成感を感じた。意気揚々とおっさんに報告しに行った。

そこでおっさんは爆笑した。オーマイゴットを繰り返したり、手を大きく広げたり、全身を使って楽しそうにしていた。ふぃーどぼとる?とは、私の身体と同じくらいの重さとデカさを誇るエサタンクのことではなかった。子羊にミルクを与える哺乳瓶のことだった。用途も容量も全然違う。真実を知った私も笑うしかなかった。

出会って2日のおっさんに爆笑をもたらすことができるので、勢いだけで英語圏に飛び込むのも面白いかもしれない。この事件の後も、日本語と英語の構造的特徴に意見を求めるお兄さんなど、曲者に度々遭遇し困ったが、特に致命的な困難には遭遇しなかった。

言葉の壁が原因で、海外に行くか迷ったら、面白いので行ってみたらいい。上達のために大事なことは、もっと話したくなる面白い人と出会うこと。



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