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虎に翼 涼子さまの帽子

この4月からスタートした朝ドラ「虎に翼」がっつりハマっています。
4週目を終えた時点で私のベスト朝ドラ「カーネーション」を超えそうな名作の予感!

すでにあちこちで良さが語られているので、ワタクシの語りなどは置いといて。どうしても言わずにいられない、ハットメーカー的よきポイントは

涼子お嬢様、ハイキング時のお帽子!

上品なグレーの型入れキャペリン(キャペリーヌ)。
広すぎないブリム(ツバ)、巻き飾りは同生地で華美になりすぎず、あっさりとしていながらエレガント、素敵!(そして悲しいかな、素敵さゆえに……作り手目線『帽子屋センサー』が発動し、あれこれ考えはじめます)

キャペリン またはキャペリーヌ(Capeline)
ブリム幅の広い帽子の総称。日よけになることからガーデンハットとも呼ばれる。華やかな帽子の印象が強い。透ける素材や花、リボンなど、素材や装飾によってドレッシーにもロマンチックにもシャープにも色々なタイプに変化する。総体的にはエレガントであるが、実用面では日よけとして用いられることが多い。

文化ファッション大系 ファッション工芸講座① 帽子 より


華族だもの、素材はバンタル?と思いましたが、シゾールのように見えます。(何度も止めて確認。↓の写真参照です)

考えたら、行き先はハイキング。寅ちゃんや留学生の崔さんは実用的な布の6枚はぎクロッシェ(今の感覚で言うとメトロハット)をかぶっています。寅ちゃんや崔さんも当時十分に恵まれた富裕層です。
ハイキング→カジュアルで行きましょう→布ハット シゾールの型入れキャペリン。というのがそもそも華族さまなのでした。うーん、レベチ。
むしろ、お付きのものは玉ちゃんだけでいいのか?もしかして写ってはいない黒子がいるのか?あのガーデンテーブルはどこから出てきたのか?

お付きのたまちゃんがお持ちします。(この編み幅はあじろ編みのシゾール)

シゾール
サイザル麻帽体(Sisal):シゾール、パラシゾール(石目編、あじろ編 Para Sisol)
アフリカ原産のサイザル麻が原料で、繊維を裂いて編んである。原色は薄ベージュで、そのままでも美しい自然色だが、漂白すると純白になり、染色性がよい。強度、弾力、触感など、天然繊維の良さを備えている。

講座 服飾シリーズ 帽子 より要約

バンタル、ブンタール(Buntal)とは
弾性、強度に優れた夏物ハットの最高級素材。フィリピン産ブンタールファイバー(ココヤシの枝の芯)を編んだもの。
太さ別に手作業で選別後、裂かずにそのまま手編みで帽体に仕上げており、繊維は細く、1つの帽体を編み上げるのにはかなりの時間を要する。染め上がりの発色よく、表面光沢の美しさは格別。あじろ編みのものはパラバンタルと呼ばれる。

素材の話ばかりになってしまいましたが、もちろんデザインも素敵。

かぶり方も完璧です

柔らかな丸角のクラウン。緩やかなオールアップ(全体が上向きに反っているブリムのこと)。もちろん、これは役者の顔がちゃんと見えるようにあえて上向きのブリムにしているのだと思いますが、涼子さまのキリッとした印象も際立たせています。
同生地の巻き飾りは、帽子を成型した後の「残り生地」を使うことが多いのですが、このリボンのボリュームならば「残り」では足らず、帽体をもう一枚使ったんじゃないかな、と見ています。帽子2個分の材料を使った、ということですね。夏物帽体は切った先からほつれていくので、このリボン型のように成形するのも容易ではありません。

このような繊細なキャペリンはもちろん畳むことができず、現在においても「脱いだあとどうする問題」が発生します。お付きのものがいない我々には(笑)なかなか難しい……ある程度の裕福さや社会的な地位が可視化されるアイテムですね。はー素敵だ。


今気になっているのは、よねさんのハンチング。
ハンチングはこの時代よくあるのだけど、よねさんのは絶妙な丸みがある気がする……作りたい。

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