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わたしが結婚していたのは夫という名の安定企業

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離婚(予定)小説。終わりがどうなるかは知らない
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2020年5月の記事一覧

わたしが結婚していたのは夫という名の安定企業:第一話

わたしが結婚していたのは夫という名の安定企業:第一話

どうして、わたしあんな男と結婚してしまったんだろう。

何度目になるのかわからない、少なくとも50回は越えているであろうその心の声にまたうんざりする。

考えたくもないことだが告白は芽久実のほうからだった。あの頃は若かったからだとか、あの時はお酒をたらふく飲んでいたからだとか、そんなくだらない言い訳ならいくらでも出てくる。しかし、今更いくつ並べたって何の慰めにもならならず、何の糧にもならない。

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わたしが結婚していたのは夫という名の安定企業:第二話

わたしが結婚していたのは夫という名の安定企業:第二話

「芽久実ちゃん? 大丈夫?」

店員に頼んだのであろう氷水の入ったグラスを顔の前にゆっくりと差し出しながら裕美が掛けた声に、芽久実はけだるげに顔を上げた。寝ていたつもりはなかったが、半ば意識を飛ばしてしまっていたようだった。

「うん、飲みすぎちゃったみたい。あんまり強くないけどお酒は好きだからついつい飲んじゃうんだよね。あはははは」
「光士郎も寺島さんも、芽久実ちゃんにばっかり強いお酒飲ませるん

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