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『禅 心をかたちに』図録購入。

 七年前に見た展覧会の図録をようやく購入。表紙が折れてるからか安かった。
 あの日はほかにもいくつかハシゴしたあとで、それらの図録でバッグがすでに限界突破してたから(特に『クラーナハ展』の図録が豪華でゴツくて大変だった)泣く泣く購入を見送って、周文の「十牛図」(かわいい)のポストカードだけ買って帰ったんだった。
 でもあの展示ほんと面白かったな...と折に触れ思い出してたので、やっと買えて嬉しい。油滴天目も白隠の断臂図も間近に見られて幸せだった。

 巻末のコラムに長谷川等伯の有名なエピソードが紹介されてた。以下要約。
  時は1589年、大徳寺に建てられた三玄院の方丈(禅宗のお寺の長老とかの居室)の襖になんにも絵が描かれてないのを見て、等伯はその寺の開山である師の春屋宗園に「あの襖に絵を描きたい」と立候補。でも春屋は「あそこはそういう場所じゃないから」と却下。
 それからしばらくして、春屋がたまたま(なのかどうか)出かけてたときに三玄院にふらっと訪ねてきた等伯。春屋が留守だと知ると喜び勇んで方丈に飛び込んで、お寺の人たちが止めるのも振り切って襖に山水画をすごい勢いで描き上げた、という話。
 襖は現存しているから、帰ってきた春屋宗園は怒ったかもしれないけど絵は絵として評価して大切にしてくれたらしい。

“虚飾を嫌う禅の場に画は不要という考え、無から有が生まれる瞬間、画が生み出す場の空気(江山の幽致)、それらに思いをめぐらせてくれる味わい深い話だ。”

(京都国立博物館、東京国立博物館、日本経済新聞社『臨済禅師一一五〇年 白隠禅師二五〇年遠諱記念 禅 心をかたちに』p.337より抜粋)

 私は俗人だから、それ以外の事柄にしか思いがめぐらないのだけども。等伯さん、いくら絵がうまくたってそりゃ無いよ...。

 白隠からの連想で思い出したけど、九年前に静岡県立美術館の『アニマルワールド 美術のなかのどうぶつたち』で見た白隠の「猿猴捉月図」も可愛かったけどそれ以上に、狩野栄信の「百猿図」が最高に可愛かった。昔ツクダオリジナルから出て流行ったおもちゃ「さるも木からおちる」みたいだった。