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佐藤友陽一『動物園を考える』(東京大学出版会)感想メモと、日本平動物園の写真。

“石田戢さんの言葉を借りると「人と動物の関係は、矛盾の上に成立している。すっきり割り切れない状態が正常で、どのように矛盾しているか考えることが大切」となります。
 このような矛盾は、心理学的には私たちの脳内に「認知的不協和」を発生させます。(中略)「傷つきやすさを認めることができるということが私たちを傷つける」というコーラ・ダイアモンド(哲学者)の表現が適切だと私は感じます。私たちの心は動物に不幸があれば傷つき、なんとかしたいと葛藤するのです。”

(佐藤友陽一『動物園を考える 日本と世界の違いを超えて』東京大学出版会 p.111-112より抜粋)

 多摩動物公園に行ったあと図書館で借りてきた本を読み進め中。著者は日本平動物園に勤務していた人。
 動物園は動物が飼い殺しにされてるから可哀想、という気持ちは動物園に行くほど動物が好きな人ならほとんど誰でも抱くはずのもの。
 その「可哀想」を、動物園に行くたびに心の奥の見えないところに押しこめないといけないのは結構な心理的負担だと私は感じる。なのに年間パスを買ってしまった。
「可哀想」だけで終わらせないための考え方を知りたくて借りてきたこの本は、読んでみると抜粋した箇所にも明らかなように、「これこれこうだから動物園は正しいのであり、必要なのです」と主張する本じゃない。
 かと言って、「こんなひどいことが動物園ではまかりとおっている」とねちねち批判だけ書き連ねてあるのでもなく、「動物園死すべし」というような過激な断罪からはほど遠く。
 大きな理想を掲げてそれで気を済ませてしまったり、思考停止のニヒリズム・幻滅に安んじてしまうのではなく、現実の具体的な個別の問題にひとつひとつ、そのつど考えながら向き合う。それを継続する、ということを、現実の動物園で実行してきた人だから、言葉に生身の人間らしいユルさと地に足の着いた熱さがある。
 本全体の雰囲気は不思議に明るい。
 まだ読み進め中だけど、借りてきてよかったと思う。

 写真は10年前に訪れた日本平動物園で撮ったもの(カメラはPENTAX Q10)。
 広くて動物が気持ちよさそうで、すごくいい動物園だった。