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高橋和夫先生の本とAharon Appelfeld のエッセイ読み返し。

当時のイスラエルのシャミール政権は、こうした考えとは全く違う認識を持っていた。ガザ地区とヨルダン川西岸は神がユダヤ人に約束した契約の地「エレツ・イスラエル」の一部であり、占領地ですらない。それは神が契約の履行としてユダヤ人に与えた土地であり、「解放地」である。神の意思として与えられた土地を手放す権限は人間には与えられていない。したがって、占領地からの撤退はできない。こうした認識を抱いていたのであるから、交渉に熱意があるはずもなかった。

高橋和夫『パレスチナ問題の展開』左右社 p.199-200より抜粋

 放送大学に入学して、いろいろ講義をお試し視聴しているなかで高橋和夫先生の講義を観て、いっぺんにファンになってしまって買った本。読書ノートを見ると買ったのは今年の3月。
 まさかこんなに急に事態が悪化するなんて、この本を読んでるときには思いもしなかった。
 悲惨な映像ばかり観ていても心が麻痺するだけだから、ニュースの動画はあまり見ないようにして、BBCの記事を読むだけにして、それと並行してこの本を読み返して復習している。

 イスラエルは私が大好きな作家のひとり、アハロン・アッペルフェルドが暮らしていた場所だから、いつか行けたらと思っている。彼がいつも原稿を書いてたカフェとか、教鞭を執っていた大学とか巡ってみたいというミーハーな動機。
 穏やかな気持ちで平和に観光に行けるときが来るんだろうか。
 彼のエッセイA Table For One(洋書のタイトルだからイタリック体にしたいのだけど、noteはイタリック体が使えないらしい。不便!)に載っていたインタビューを読み返した。

       “Do you view the Jew's return to their homeland as the fulfillment of God's promise?”
       “I can't claim to have thoughts of this height ── I can't pretend to understand God's thoughts. I can imagine that a religious man might have such a thought. In this day, Theodor Herzl said that the return of the Jews to their land would be their return to Judaism. This approach is more understandable to me, and I feel that beyond this wishful thinking there is a certain truth in Herzl's statement.”

Appelfeld, Aharon.  A Table for One. Toby Press LLC,2007.  p.126 より抜粋

 アッペルフェルドはこのインタビューの中で、homelandという言葉を使うことに対しても慎重な態度を示していた。

       “I prefer to use a simpler word ── 'home'.” 

Appelfeld, Aharon.  A Table for One. Toby Press LLC,2007.  p.124 より抜粋

 放送大学の高橋先生は定年退職されたということだけど、もう新しい講義は作られないんだろうか。『中東の政治('24)』という講義がもし来年新設されたら取りたい。

第一次中東戦争の結果、西エルサレムはイスラエルの、そして東エルサレムはヨルダンの支配下に入った。つまり、エルサレムは分断された。それまで一つの有機体として機能していた都市が二つに分断され、様々な悲喜劇を生んだ。境界線に面した建物の窓から老人が入れ歯を落とし、それが境界線の反対側に落ちたために、線をまたいで活動できる国連軍が出動してその入れ歯を回収した。

高橋和夫『パレスチナ問題の展開』左右社 p.323より抜粋

 放送大学の高橋先生の講義で知った横浜のアラビア料理レストラン『アル・アイン』にもいつか行きたい。のだけど、こっちは純粋にただお金が無くて行けない…。