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心情

 ちょっとここの所重たい案件が続いていて、気持ちがわさわさしている。切り離す事もスキルの一つだが、防ぎようがなく壁の隙間から自分の中に侵入してくる暗いものと向き合わなければいけないようだ。
 出来るかどうか分からないが、書いてみよう。
 
 自分が生まれた家のことを好きになれないのは、罪なのだろうか?私は自分の実家について、長い間複雑な思いを抱いてきた。ある事件をきっかけに、縁を切る決意をし、それからは家から離れることだけを目的に進路を決め、仕事を決め、結婚を決め、遠く離れた場所で自分の家族を作り、今に至る。

 私は小さな頃からよい子の優等生で、優しいフリをするのが得意。だから、心の中で「お前らなんてもう家族とは思わねえ」と、啖呵を切りながら、いい感じの娘を演じ続けてきた。

 結婚すれば別の家の人間になれる。そうすればもう、あの家とは関わらないで済むと思ったのに。育ちがよく、"家族"という物に対して至極まともな感性をもつ伴侶は、そんな私の気持ちは理解できない。私の実家に気を使い、関わりを持とうとしてくれる。私から見れば恐怖でしかない実家に泊まり、ご飯を食べ、母と会話をする。
 私は逃げる。子供の世話を理由に、仕事を言い訳に、旦那の実家を引き合いに出し、なるべく実家との時間を作らず距離を保ち、'遠方に嫁いだ娘’という立ち位置で、本心を見せないようにして。

 そんなふうに生きているうちに、許せる日、受け入れられる日が来ると思っていた。

 子どもが生まれて大きくなるにつれて、少しずつ関係は穏やかに変化してきた。子どもたちは実家を慕っているし、あんな家でも行くことを楽しみにしている。年に二回の帰省旅行では、毎年色んな思い出ができた。
 あんなに嫌だった実家だが、子どもたちを介して'楽しい’と思える時間が持てるようになった事で、あの人達を否定せず、少しずつだが認めて受け入れられるようになっていた。

 このまま、普通の家族になれるかも知れない。私が求め続けた理想とは、全く違うけど、ちゃんと好きになれるのかも..

 甘かったのだ。信じようとした自分が甘かっただけなのだ。

 もう、あの人達とは、二度と関わりたくないと思う。全て終わりにしてしまいたい。
そう思いながらも、もし、父や祖母が劣悪な環境に置かれ、人知れず亡くなるようなことがあったら、私はやっぱりものすごく後悔する、分かっている。

 だからと言って、あの人達を許すわけにはいかない。許したら、受け入れてしまったら、私は立っていられない。ここまで必死にやってきた自分の今を守りたい。ものすごく冷たい考えだけど、家族は他人だと、別々の考えを持つ人間の集まりだと、親は神様でもないし、子どもは誰の所有物でもないと、私は幼い頃に分かってしまった。間違えた考えかも知れないけど、そうやって今まで生きてきたのだ。

 彼女は懸命に生きてきた。彼女が悪いわけではない。でも、どうしていいのか、分からない。

 どうして、私は、こんなに優しくなれないのだろう。

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