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なんとなく日記のようなもの

 がんの術後検査報告を受けてから一週間が過ぎた土曜日、入院やら手術やらで先送りにしていた甲状腺浮腫のエコー検査に行った。
 3年くらい前に健康診断でちょっと異常が見つかって、年に一度経過を診てもらっている。
 検査自体は意外と早く済んでしまったので、普段の土曜日よりもポッカリと時間ができてしまった。
 久しぶりに図書館にでも行ってみようか。

 子どもたちが小さい頃は、週末ごとに図書館に出かけていた。絵本などを大量に借りて、子どもたちに読み聞かせるのが好きだった。
 図書館で本を選んだついでに、近くのお店に寄って買い物をしたりして、ちょっとしたお出かけ気分を味わえる土曜日が私は好きだった。

 午前中に図書館、午後は娘のスイミングと息子のサッカーの送迎。
 その合間に家事や仕事をする。
 駐車場に停めた車やスイミングの待合室、サッカーグラウンドの隅っこで、自分用に借りた本をよく読んでいた。
 忙しかったけど充実していたかも知れない日々の記憶が蘇ってきて、その頃の追いつめられ続けていた精神状態も再現してしまい、気持ちのよい休日が曇り始めたのに気がついて、苦笑いをする。

 場所の記憶、曜日の記憶、
 わたしは記憶でできている。

 図書館のついでに本屋さんに寄って、読みたかった漫画を買う。
 ドラッグストアにも寄る。
 推しのパン屋に行くが、混んでいて諦める。
 思いつきで自由に行きたい場所に適当に行って、
 やりたい事を やれたり やれなかったり
 何も予定のない土曜日っていいな・・の後にふと

 今、自分があたりまえに普通に過ごせていることに気がついて、
 それはとても有り難いことで
 もしかしたら、この未来は、
 別の形になっていたかも知れないんだと
 なぜか、今日、このタイミングで理解して

 すごく感謝をしたいと思った。

 言葉をくれたあなたへ
 手紙をくれたあなたへ
 寄り添ってくれたあなたへ
 話を聞いてくれたあなたへ
 そっと見守ってくれたあなたへ
 不自由になった左腕が届かない場所に
 代わりに手を伸ばしてくれたり
 無理をしないよう早く帰るように声をかけてくれたり
 不安になったり悩んだり絶望したりしていた時間に
 心のそばにいてくれたみんなへ
 そして音楽とその他の創作物たちへ

 心の中にお供えをして
 手を合わせるような気持ちで
 小さなお菓子を自分のために買ってきた。
 美味しいお茶も淹れて 
 ゆっくりと時間をかけて
 気持ちに栄養をあげるみたいな気持ちで
 ていねいに美味しくいただいた。
 感謝の儀式みたいだった。

 あたたかい土曜日の午後が
 ゆっくりと過ぎていった。

 嵐のような日々も
 時間とともに穏やかな記憶に変わっていく
 思い出すこともないような 
 あたりまえの日々の尊さに
 気づけてよかった
 何もない土曜日に感謝して過ごした
 今日を忘れないように 
 日記に残そうと思った。


2022年がもうすぐ終わります。
まずはおつかれさまでした。
この‘日記のようなもの’は11月のある土曜日に書いた物です。
その前に書いていた文章の番外編のような位置付けなのですが、本体がいつまでも仕上がらない上に世に出してもいいのか分からなくなってきたので、こちらを先にお出しします。唐突な書き出しにびっくりした方もいるかもしれませんが、気にしないで流してくださいね。
感謝をしたいと言いながら、自分に甘いものを与えるという・・笑。なんて自己中心的な文章を書くんだと振り返って苦笑いです。
2022年は心理的にも身体的にも障害が多くあり、創作活動がほとんどできませんでした。年が改まると共に気持ちも切り替えて生きていけたらいいなと思います。自分なりに頑張ろう。
2022年お世話になった人に感謝を込めて。
読んでいただき、ありがとうございました。

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