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石橋を叩いて渡らず壊して終わりの私が牛持ちになった話

私には自分の牛がいる。

「角突き牛」といって、角突きをする私の牛だ。
「角突き」というのは、新潟県の山古志地域と小千谷地域で行われている「牛の角突き」という習俗で、国の重要無形民俗文化財に指定されている牛と牛との闘牛のことだ。
私は角突き牛のオーナー、「牛持ち」である。

牛持ちになったのは去年の春のこと。
それまで5年ほど観客として角突きを楽しんでいた。
山古志にいた横綱級の黒牛に魅せられて、毎回のように足を運んでいたのだが、しばらくして、その黒牛が絶頂期にもかかわらずやむ無く引退してしまった。

相当落ち込んだ。

落ち込んだが、角突きは続く。
その黒牛がいないからといって、見に行くのをやめるということはないものの、どうしても心の隙間が埋まらない。
ずいぶん惚れ込んでいたものだと自分でも思うが、どうしてもその黒牛の代わりになるほどの角突きを見せてくれる牛は、いなかった。

その頃には、私の角突き好きをおもしろがってくれる闘牛会の方々とのつながりが出来つつあった。
冗談交じりに「牛持ちになってよ!」なんて言われることもあり、もし牛を持つならどの牛がいいか?という視点で角突きを見たりもしていた。
次第に、この心の隙間を埋めるには、自分の牛を持つしかないのかも・・・と思うようにもなった。

そうしているうちに、さまざま状況が整ってきた。
石橋を叩いて渡らず壊して終わり、という性格ではあるが、思い切るにはまあ十分かなと思えるほどに整ったところで決めた。
私は牛持ちとなった。

牛の名前は「飛将」。
めちゃくちゃ賢くてかわいい、私の牛。

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