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亀戸という所

朝っぱらコンビニだと言うのに何やらぼやいている人がいる

レジでオヤジがごねているのだ
(めんどくせぇジジイだな朝っぱらから)
おかげで二つあるレジが一つ塞がってしまっている

しかし、どう言うわけかこの街ではさほど不思議な光景に感じない

去り際オヤジは私に向かい
「お、どっかで祭りがあるのか。」
「無いだろ 仕事だっ!」
私は鯉口シャツに腹掛けをしているのでそう言ったのであろう

亀戸
東京都江東区亀戸
文字通り江戸の東
日本橋や神田からすれば、幾分東に離れたところに在する

私の親しい人に生まれも育ちも日本橋浜町の方がいる。
と言う以前に代々、そう江戸が始まる頃より日本橋に居を構えていたらしい
その方がいうに
「江戸前の生き方ってぇのぁねぇ 大川でケツを洗ったように生きるんだ、と親父がよく言ってたよ」
と、昭和9年生まれのばあさんが、今でも会うたびに言っている。
また、こんなことも言っていた
「東京の男は人見知りでね、親父が谷崎潤一郎と会う事があって、その時二人ともほとんど喋らなくって、帰ってきたら親父が『あいつぁやな奴だねえぇ』とこぼしてたよ」

浜町という所は、その昔は芸の街らしく長唄やら三味やら役者、、芸の文化が道筋のそこ此処にあったらしい
まあ、私からしなくても一般的にその様な世界は非日常だろう

しかし、その江戸情緒あふれる東京は微塵も見えなくなってしまった
よってそのばあさんは、今から10数年前に「東京は消えた」と言いすて浜町の自宅をを大川で洗い流してしまったのである。

そんな日本橋からすれば亀戸は、東に外れている
そもそもいわゆる江戸っ子とはどんな様子なのかは私には分からない
とは言えビルに囲まれた都心よりも亀戸の方が東京っぽく感じるのだ


話は戻り、お客さんのところで私は植木のお手入れをしている
敷地際の植木に登ると隣地はギュウギュウ詰めのお家が多くそのままベランダに手が届く距離だ

すると、ガッと戸が開いた。隣の二階の部屋だ
「あれ、切っちゃうの」と隣のおばちゃん
(お〜っと近い!)「え?切るよ、そっちのベランダにかぶさっちゃうよ」
「暑くなるからさ、切ンなくっていいんだけどね」
なるほど、西日が指すか
「あ、じゃあうまいことやりますよ」
「それじゃあ、悪いじゃない」
「いや、こっちにも都合がいいんでね」

それにしても近い、この近距離で普通喋るか!

とにかくこの街の人は気さくだ
そして難しいことに頓着していないようで、実に朗らかで人間味に満ちている

そしてそして、立派な天神さまに見守られていて、とても信心深いのだ


おっ、つるっぱげのオヤジがチャリンコで咥えタバコだ!



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