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住宅街のど真ん中。地域に根ざす「まちの花屋」にできること【Interview vol.4】

西東京市、ひばりが丘団地。

マンションや戸建てにぐるりと囲まれた一角に、地域のコミュニティセンター『ひばりテラス118』があります。

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その一室にこぢんまりとお店をかまえるのが、今回お話を伺う『風葉花(ふうようか)』さん。近隣住民に愛される、まちのお花屋さんです。

実はこの『風葉花』さん、当社メンバーが『ひばりテラス118』でガーデン・ウェディングを行った際にも、会場を華やかに彩っていただきました。

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店主の竹下里枝(たけしたさとえ)さんは、「植物を通して、ひとのつながりを育んでゆきたい」という思いをお持ちの方。その思いはこういった場づくりから花束ひとつまで、いたるところにあらわれています。

以前は「駅近」でもお店を営んでおられたという竹下さん。時を経て、いま住宅街で地域密着のお花屋さんを営む、その思いとは——?

自粛休業があけてお店を再開された『風葉花』の竹下さんに、オンラインでお話を聞きました。


やっぱり、植物の力ってすごいんだな

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——この情勢で、4月は自粛休業されていらっしゃいましたね。いまはどんなご状況でしょう?

はい。5月7日からは営業時間などを変更したうえで、お店を再開しています。再開しておどろいたのは、「植物を求めている方が多い」こと。ギフトやご自宅用、お花から鉢物まで、買っていかれる方がとても多くて。「ああ、やっぱり植物の力ってすごいんだな」と感じていたところです。

——なかなか出かけられないからこそ、身近な植物を求めるのもあるかもしれませんね。お客さんの反応で、印象に残っていることはありますか?

そうですね……。「寂しかったです」「やっと開いた!」って再開を喜んでくださる方々がいて。みなさん、必ず笑顔なんですよ。その笑顔を直接見られるのは、やっぱり幸せなことだと思いました。この休業期間、普段考えないようなことを考えていたから、より笑顔がしみましたね。

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——普段考えないようなこと。たとえばどんなことを考えられましたか?

いまの仕事の原点を、改めて考えるような時間でしたね。わたしは小さいころから身の回りに植物があって、植物に助けられてきたんです。行き詰まったときにフッと気持ちを楽にしてもらったり、根を張るたくましさに励まされたり……。

そういえば父親もすごく、盆栽が好きでした。週にたった1度の休日を、盆栽に費やす姿を見て育って。子どものころは不思議でしたが、いまは気持ちがわかります。脳をリセットして、心を穏やかにしていたのかなって。


散歩がてらに通り抜けられる、気楽な花屋を

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——そういった背景が、いまのお仕事につながっているんですね。改めて、風葉花さんのコンセプトや特徴について、お聞かせいただけますか?

はい。一番伝えたいのは、「お花って、気張らないでいいんだよ」ってところかな。子どものころ、花摘みをしたことがあると思うんですが、あれと同じで。お花を摘み、コップやバケツに飾るだけでも心が変わる気がします。もっと身近に、気張らない存在でありたいですね。

だから何も買わなくても、お散歩がてらにふら〜っと通り抜けてもらえるようなお店にしたくて。お花用の冷蔵庫もおいていないんです。お店に入ると「いい香りがする〜」っておっしゃっていただけるし、直接手で触れていただくこともできる。そうやって気軽に親しんでもらえるお店になれば嬉しいです。

——お花の扱いを教える「花レッスン」などもやられていますよね。

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それも、お花をもっと気軽に楽しめるようになればいいなという思いから。たとえば「切り花はこうすれば長持ちする」など、基本となる扱い方を一通り知っておくことで、お花の世界ってぐっと広がるんですよ。

それに植物って、1本1本、全部違う。同じお花を使った作品でも、仕上がりは全員違うんです。その人らしさが必ずどこかに表れていて、それを共有するのが楽しくて。親子レッスンもやっていますが、子どもの発想は本当におもしろいですよ! だからやっぱり背景には、ひとが集って、笑顔になるきっかけになればいいなという思いがありますね。


まちのひとに育てられ、楽しませられて

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——まちに笑顔の輪を広げていく。『ひばりテラス118』の思いとも重なりますね。そもそも、『ひばりテラス118』でお店を始めたきっかけは……?

それが、運命的だったんです。ちょうどいろいろと生活の変化があって「地域密着で自分のできることをしたい」と考えていた時期、散歩中に偶然、『ひばりテラス118』の建物がわーっ、と目に飛び込んできて。

初めて足を踏み入れた瞬間、すごくいい空気が流れている!と感じました。よく聞いたらここは地域のコミュニティを紡ぐ場で、カフェもあって……ここに植物もあったら最高だな、と思いついたんです。そこで事業計画書を作って、『ひばりテラス118』へお話にいきました。

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風葉花のスタッフ八十住さん(にわマルシェでのお写真)

——すごい行動力! そこで、風葉花さんをスタートされて。4月で2周年を迎えられたとのことですが、これまで印象的だったことはありますか?

ひとりの力は本当に小さいな、と感じました。ひとりで考えていると行き詰まることも、周りと関わるとどんどん開けていくんです。「もうちょっと看板わかるように出したら?」ってご意見いただいたり、みなさんに育ててもらって。

それから年に数回、『ひばりテラス118』のお庭でマルシェがあって。お祭りみたいに、すごく楽しい空気感があるんですね。そのときは風葉花もお庭に出て、青空の下で営業させていただく。普通に花屋やっていたらそんなことないので。だからすごく楽しいです。そうやって、いつも周りで動きがあることに助けられているし、楽しませてもらっていますね


「ご近所のお花屋さん」だからできること

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風葉花のスタッフ桑名さん(にわマルシェでのお写真)

——風葉花さんが「地域やひととのつながり」を大事にされているのには、どんな背景があるんでしょう?

自分の幼いころって、ご近所づきあいがもっと身近で、おおらかな空気があったんですよね。わたしの父親も子どもが好きで、自分の子が巣立った後も、近所の子を集めてカブトムシをとりにいったりとか(笑)。そうやって年代の違うご近所さんとつながるって、とても大事だと思っていて。

わたしも育児や介護をした経験がありますが、悩みを抱えているとき、ご近所さんと「おはようございます」って声を交わすだけで救われたりする。時には体験談をきかせてもらったり、そういうかかわりの中でひとは育つような気がして。だから地域の方と、顔をあわせたお付き合いをしていくのは、すごく大事だなと思っていますね。

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——地域密着のお花屋さんを営まれるなかで、これからひばりが丘をどんな街にしていきたい、という思いはありますか?

そうですね……。よく、登山中ってすれ違う方と挨拶するじゃないですか。そういうの、すごくいいなって。ここを歩いていると、知り合いじゃなくても自然と挨拶できちゃう。そんな街になったらいいなと思います。

「こんにちは!」って挨拶をかわしたり、「あー、ひさしぶりだね」って会話がはじまったり。一瞬でもちょっと表情がやわらぐ。そんな瞬間があふれていくような街になったら嬉しいですね。

——そのために、今やっていることはありますか?

植物を買ってくださった方が次に来店されたら、「あのお花は今どうなっていますか?」と聞くようにしています。すると「あの花はこんなに開いたよ」とか「あの苗はもう1メートルくらいに育ったよ」と教えてくださって、会話が始まるんです。

——笑顔が目に浮かびます。今後、新たにやってみたいこともありますか?

たとえばマルシェのとき、庭で「みんなで寄せ植えをしよう!」なんてやってみたいですね。通りすがりの子どもも大人も、集まって好きなお花を選んで自由に植える。そうやって、構えずに参加してもらえる企画がいいなって。

また、この6月から『花贈り定期便』を始めました。これはお店から1.5km圏内限定で、月に1、2度、植物をご自宅へお届けするものです(※詳細はホームページのTopicsへ)。いろいろな事情で「店に行きたくても行けない」方がいらっしゃるので、ご近所限定で、自転車でお届けできたらと思って。

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——自転車で配達されるんですね。「まちのお花屋さん」のイメージにぴったり! 最後に、何かメッセージはありますか?

そうですね……。この情勢下、みなさんも「考える」ことが増えたと思うんです。ただ、考えても答えが出ないときもある。だから最近は「思ったことを、まずやってみたら?」と思っていて。『花贈り定期便』もそのひとつ。

地域の方とのいろんなとりくみも、「まず、やってみよう」という気軽さで、いろいろとチャレンジしていきたいです。働くお母さんにご高齢の方、いろいろな方がいらっしゃると思いますが、みんなで声をかけあって、元気なまちにしていければいいな!と思います。

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生け花やフラワーアレンジなどのご経験も豊富な竹下さん。そのうえで「バケツでもなんでもいいんですよ。お花を摘んで、無造作にバサって入れるだけで十分」とおっしゃる、そのおおらかさに心がするっとゆるみました。住宅街の店頭で、そして時に自転車をこぎながら。これからも「ご近所のお花屋さん」として、ますます愛されてゆくことでしょう。


ホームページやSNSにも植物の写真がたくさんあり、見ているだけでも癒やされます。よかったらリンク先にも遊びにいってみてくださいね。


Writer&interviewer:小中ぽこ

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