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いつもとちがう世界線で生きてみる、おとなのひととき滞在記

今回の投稿はひとときで学生向けの「ローカルメディアワークショップ」に参加したなおちゃん(社会人) が取材、執筆した文章です。社会人のなおちゃんがなぜ「ひとときのインターン募集」にひかれて、その後長期滞在をしているのかをエッセイ風にまとめてくれました。この文章は福島県の郡山市と西会津町で二拠点生活を送るライター、ニシミチサエさんのご協力のもと作成しています。


ひとときに初めてきたのは、5月だった。
お客さんとしてカフェを利用しにきた。

その後インターンの募集の知って「27歳でも大丈夫ですか?」と勇気を出して連絡をしてみた。祐子さんは快く受け入れてくれた。

その後、7月末から2週間程度、ボランティアとして受け入れてもらうことが決まった。

しかし滞在を伸ばしに伸ばして9月いっぱいまで滞在する予定でいる。もしかすると10月以降も居続ける可能性も出てきたところだ。

数週間で帰るつもりが、帰れなくなった。

ひとときとの出会い

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そもそも私がひとときを知ったのは、同じく西会津町にある※ダーナビレッジという場所でボランティアをしていたことがきっかけだった。
(※ダーナビレッジでの暮らしのお話はまたの機会、私個人のnoteにて。おたのしみに!) 

農的暮らしや田舎暮らしに憧れがあった私は、ダーナビレッジの農的暮らしを体験してみたくてやってきた。そこで生活する中で、西会津町にはおもしろいものや人が沢山集まっていることを知った。

そのうちのひとつがひとときであり、いとなみであり、オーナーの祐子さんと雄介さんだった。


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祐子さんと雄介さんのゲームのような生き方

祐子さんと雄介さんと生活していて思うのは、二人は日々「次はこれをやろう・あれをやろう・こうしよう」という話が絶えないということだ。「今日の夜は何食べよう」から、「これからの事業をこうしよう」まで話のスケールは様々。いつも何かアイデアがあり、どう実現しようかを動きながら考えている。

何が二人をそんなに突き動かしているのか。

お話を聞いている中で、二人は“ゲームをするように生きている”ということが分かってきた。

それは「どうぶつの森」、や「牧場物語」のように自分たちの生活圏を作り上げていくゲームであり、「ドラクエ」的な、冒険と成長のR P G。
その中では様々なイベントや障壁も発生し、都度選択を迫られる。そして、進路を変えたり、アイテムを揃えたり、仲間を集めたり、試行錯誤しながら1個1個攻略していく(草刈りする→おじいちゃんとお話しできる→空いてる畑を貸してもらえる!etc…)。

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田舎での生活は自分から何かやらないと何も生まれないし、楽しめない。何もない場所だからこそ、何かやったら誰かが喜んでくれるのが分かる。スモールスタートがしやすい環境でもある。そうして1個1個コツコツ小さくやってきたことが自信になり、どんどん新しいことにも挑戦できるようになっていく。正解も終わりもないからこそ面白くて、試行錯誤を繰り返して、やり続けられる。

そうやって二人は動き続けてきたのだと教えてくれた。

R P Gのように、自分が主人公となり、生活を創造してクエストを達成しながら生きていく。二人はそうやって自分の幸福感と楽しみと喜びを自ら生み出し、周りにも派生させていっている。
それは自らの人生をつくっていくことであって、地域をつくっていくこともあって、社会をつくっていくことでもあって、ひいては世界を、未来をつくっていくことにもつながる、おもしろくてかっこいい生き方だと思った。

これは本来どこにいてもできる生き方であると思うし、みんな心がけたらより人生が楽しくなる生き方だと思う。
でも元から何もない(と言われることが多い)西会津町では、よりこの生き方が適していて、尚且つ必要な生き方で、結果としての実感が伴いやすくて、おもしろがれるのかなと思った。

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そもそも西会津に来た経緯とクォーターライフ・クライシス

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私は今年の1月に会社員を辞めている。
新卒で入社して4年目が終わろうとしていた。

東京で生まれ育ち、自分の田舎がなかった私は、農村や田舎や自然が近い暮らしに幼い頃から憧れがあった。

大学は農学部に進学し、各地の農家さんや田舎を訪ね歩いた。そこでの暮らしを知るたびにこんな生き方がしたいと思った。
でも、そんな生き方は憧れであって自分にとっては現実的ではないような気がして、卒業を機に一旦は建築関係の一般企業へ就職。4年半、営業職として、もがきながらもやりがいを見出し、人にも恵まれ、それなりに楽しみを見つけつつ仕事をしてきた。

20代も後半に差し掛かり、仕事にも慣れてきて、ライフステージが大きく変わる人も多い頃。
私の周りの友人も、転職をしたり結婚をしたり子供が生まれたり、人生の過渡期にいる人が多い時期だった。コロナの影響による働き方や生活スタイルの変化も重なり、これからの生き方や働き方を改めて考えることが増えた。「生きたい人生ってなんだっけ?幸せってなんだっけ?大事にしたいことってなんだっけ?」不安や焦りを抱えながらそんなことを真剣に考え、いろいろなタイミングが重なった結果、勇気を出して会社を辞めた。
生き方を見直す時間をゆっくり取ろうと思った。

そしてまずは憧れていた生活を一回体験してみようと思って、やってきたのが西会津町だった。 

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20代後半。同年代の友人を見渡しても、なんとなくもやもやを抱えている人が多い時期のような気がする。

これはどうやら「クォーターライフ・クライシス」という心理状態であることを、※とあるpodcastを通して知った。
(※「ゆとりっ娘たちのたわごと」というpodcastである。同年代の女の子ふたりによるラジオ。ふたりの考えが素敵で、共感する部分もとっても多くておもしろい。)

クオーターライフ・クライシス  < quarter-life crisis> : 人生(約100年とした時)の約4分の1を生きた25~35才くらいの人が人生について思い悩む時期のこと


20代後半から30代前半、要は人生のおよそ1/4が終わる頃に訪れる、人生に焦りや不安、幸福を感じられない喪失感のある時期のことを指すという。
これは、心の成長のために必要な時期でもあり、乗り越えることで新たな自分に出会えるとも言われているそうだ。

私は今、そんな時期に、たまたま西会津町に来ている。そしてそれを、周りの人や自然の力を借りながら、ここで日々過ごすことで、乗り越えつつあるのかもしれないと思う。

「ひととき」でしていることは、ただ日常の生活だ。西会津町のひとときの中での、祐子さんと雄介さんの生活に参加している。話をして、料理をして、食卓を囲み、畦道を散歩して、山や空を眺めたりする。二人の仕事を手伝ったり、畑仕事をしたり、田んぼの草刈りをしたり、家の掃除をしたり、ひとときカフェの営業をしたり、ゲストさんやインターンの大学生たちと楽しく過ごしたりしている。
そんな日常を過ごす中で、自分の好きなことや得意なことに改めて気づけたり、やってみたいことが湧いていたり、これからしていきたいことが明確になってきたり、アイデアが湧いてきたりしている。これからの人生への不安や悩みより、ワクワクが増えてきている事に気がついた。

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帰るつもりが帰れなくなった理由

本当は色々な地域で暮らしを体験してみるつもりでいたが、しばらくここに滞在することになった。

なぜ西会津町に?と聞かれそうだが、場所はどこでもよかったのかもしれない。居心地は良いし人は優しくて面白いし、自然は豊かで本当に素敵な場所だけど、そんなの日本全国どこへ行ってもありそうだからだ。 
でも、もう少しここで生活してみたいと思っている。それはひとときのお二人との出会いがあったからに他ならない。もっと一緒にワクワクしてみたいなあ、帰るのがもったいないなあ、という気持ちが生まれてしまったのである。

祐子さんと雄介さんは、いつも新しい何かをやろうとしていて、二人の頭の中にはワクワクの種がいっぱい詰まっている。

全部の種を撒いて育てて花が咲いたらどんなにきれいで多様なお花畑になるだろうかと思う。

でも二人はただでさえ忙しいから、全部を二人だけでやり切ることはとてもできない。だから誰かに何かを積極的にお願いしたり、誰かが入って来れる余白を残すようにしていると言っていた。

私もここで少しでもその助けになることができればいいなと思っていて、育てたそのお花畑を一緒に見てみたいなと思っている。
そしていつか自分の種を撒いて花を咲かせてみたいなとも思うようにもなってきた。

これはやっぱり、何もないと言われている西会津町での生活だからこそ、生まれた気持ちなのかもしれない。そして、ひとときの二人が余白を大事にしているからこそ、思わせてもらえたことなのかもしれないとも思う。

だから、私はもうしばらくここにいて、色々な経験と挑戦をしてみるつもりにした。

こうして、ありがたいことに、帰るつもりが帰れなくなったのだった。

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さいごに

クォーターライフ・クライシス(と呼ばれている時期や似たような心情)の乗り越え方は色々だと思うし、意識せずとも易々と乗り越えられてしまう人もいると思うし、そもそもそんなものない人もいるだろうし、タイミングも人によってまちまちだと思う。

でも、人生のそんな時期に、思い切って立ち止まって、今までの自分とはちがう場所で違う人たちと、ただただ日常の「ひととき」を過ごしてみることもありなのではないかと思う。意識的にいままでの自分とはちがう世界線で生きてみると、気がつくことがたくさんあると思った。

少なくとも私はそうしてみてよかったと思っている。

(記:なお)


【なおちゃんへ】

インターンの応募に社会人のなおちゃんからも問い合わせが入った時は正直驚いた。学生のみんなへのメッセージが思わぬところから反応がきたからだろうか。でも、あのとき学生だから、社会人だからと線引きしなくてつくづくよかったと今は感じている。

それぐらい、なおちゃんはひとときにとっても西会津町のみんなにとっても、もうなくてはならない存在になっているから。いつまではいるかはなおちゃんも私たちも分からない。でもこの一緒にいられる時間を大切にしたいと思える存在に出会えたのは久しぶりで、この時間ができれば長く続けばいいなと欲張りそうな自分がいることにも気づいている。

なおちゃんのような存在がきっと日本全国のローカルと呼ばれる地域には必要なんだと思うけど、まだそれをうまく言い表す言葉がみつからない。

だからこそ、なおちゃんが今ひとときにいることを選択してくれているのがある種の奇跡だし、今一緒にいれる「ひととき」を大事にしたいと思うのです。

これからなおちゃんの旅路がどうなっていくのか、わくわくしながらみていこうと思います。わくわく。

(オーナーゆうこより)


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