見出し画像

日本観光業のこれまで、そして追い風と逆風

観光業の現状、今後の追い風:円安

下のチャートは2011年から2023年までのホテル・旅館宿泊者数推移について、観光庁からの統計を可視化したものです。詳細は割愛しますがザックリ言って、右肩上がりで良い感じです。

「延べ宿泊者数」とは宿泊した人数に宿泊数を掛けたものです。例えば10人が3泊した時、延べ宿泊者数は30(人・泊)です。上のグラフの縦軸の単位は「百万人・泊」としています。

2019年まで右肩上がりを続けてきた宿泊者数ですが、コロナ禍影響で2020~2022、大きく減少しています。しかしながら2023年にはほぼ2019年のレベルまで回復しています。

右肩上がりのトレンドを強く支えているのは、オレンジ色で示した訪日外国人の数です。

最近、「オーバーツーリズム(観光公害)」と呼ばれ、訪日外国人の増加がネガティブに伝えられがちですが、観光産業の成長を後押しするという意味で前向きに捉えることも必要です。物事には必ず光と影(メリットとデメリット)がありますので。

一方、好むと好まざるとにかかわらず、現在進行形である円安トレンドは中期的に継続するものと見られています。これは観光業にとっては、大きな追い風です。

円安の背景ですが、日本の製造業が海外に生産拠点を移したこと、結果、日本からの輸出額が減少したことがその理由のようです。

輸出が減り、輸入額が輸出額を超え続ける限り、どうしても円安になってしまいます。日本に工場があれば「円安で競争力を増したMade In Japan製品が海外市場で販売拡大し、円安に歯止めがかかる」わけですが、そのメカニズムが働きません。

そこで製品輸出に代わる外貨獲得手段として、観光産業に期待が集まっているというわけです。観光産業は製造業と違って、海外移転などしようがありません。また、「観光はサービスの輸出」と呼ばれるそうです。もちろん、為替相場を安定させる役割が期待できます。

ところで、2024年4月29日、ドル円は160円近くまで行ったのち、現在155円代と非常に不安定です。まるで日本国通貨が弄ばれているみたいで不気味です。これを安定させる意味でも、観光産業を肯定的に捉えるとともに、オーバーツーリズムの弊害に早急に対処してゆきたいものです。

観光産業発展への逆風と対応

そうは言っても、オーバーツーリズムは、やはり悩ましい問題です。観光産業の発展は、やはり国民の支持あってこそ!のものであるべきです。

ところで、ヨーロッパなどには、日本よりはるかに観光で稼いでいる国が存在します。一例としてイタリアがあります。

2019年、イタリアへの外国人観光客の数(延べ宿泊者数ではなく、観光客の実数です)は約9.200万人(*1)とのこと。対して日本への外国人観光客の数(同上)は約3,200万人(*2)です。なんと訪日観光客の3倍もの観光客を人口では日本の半分にも満たないイタリアが受け入れているというわけです。

(補足:「延べ宿泊者数」「観光客の実数」の関係は追って別記事でも触れます。)

イタリアでもやはり、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアなど有名観光地を中心にオーバーツーリズムは問題になっているとのことです。

特定の観光地に集中することで生じる問題に対処するため、訪問者数の制限観光税の導入、などの対策をとっているとのことです。観光産業では発展途上にある日本では、これら先進事例に学ぶことができます。

また、未開拓の観光地への誘導、オフシーズンの観光促進、などの対策も。まとめて言えば「観光客の集中」⇒「地理的分散・時期分散」ですね。

観光客にとっても観光客集中による混雑や交通渋滞は決して快適なものではありません。観光客分散というオーバーツーリズム対策は、日本国民にとっても訪日観光客にとってもwin-winなソリューションと言うわけで、是非とも進めてゆきたいものです。

ところで、日本人観光客で溢れがちなゴールデンウイーク中と言うのに、朝のテレビでオーバーツーリズムが話題に上がってたようです。日本の観光地が日本人観光客でにぎわう時期に「オーバーツーリズム」という言葉を聞くのはまずいですね。

日本人にとってもさることながら、訪日外国人にとっても「オーバーツーリズム」はウンザリでしょう。日本を離れる時点で「日本には二度と来たくない」と思わせかねません。

時期変動での観光税の導入や、時期変動での海外からの航空料金値上げ、ホテル料金の値上げなど、訪日観光客からの十分な理解を求めながら、実施していってほしいものです。その結果として訪日観光客の高い満足度も獲得できるはずです。

観光客の地理的分散についても書こうと思ったのですが、少し長くなってしまいましたので、次の記事に譲ります。

[追記]不気味なドル円相場

上の記事では「円安は観光業の追い風」とのんきなことを書きましたが、今日のドル円相場は大きく動いています。不気味です。日本政府による為替介入でしょうか?

先週金曜日に示された日銀の認識は、現在の円安水準(156円程度)の物価影響は無視しうる、と言うものでした。このコメントが引き金になり、さらに160円まで円安が進みました。そこで、為替介入と言う流れでしょうか?

「156円には楽観的だが、160円には危機感を持つ」と言うことでしょうか?どの辺に境界があるのでしょう?それとも日銀は円安を容認するが、政府は容認しない、ということでしょうか?

とても奇妙な感じがします。日銀と政府は連携してはいけない?そんなわけはないでしょう。

自国通貨を売る円売り介入と異なり、(ドル売り)円買い介入は大きなリスクがあり、一歩間違えば通貨危機に発展するとのことです。

かつて民主党が政権を取って間もなく、財務大臣から円高容認ともとれる発言を聞き驚いたことを記憶しています。

先週金曜日から今日の動きが、悲劇の始まりでないことを祈っています。

(*1)

(*2)


補足:
◇ 記事で使用されている図表はexcelまたはpythonコードで作成しています。
◇ 記事で使用されているイラストはDALL-E(chat-GPT)を利用し作成しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?