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『「当事者による表象」論の粗雑――ポリコレ役者・松崎悠希@Yuki_Matsの猿芝居』2022-01-11

 最初に流れてきたのは、このツイートだった。

 このツイートを見て煉獄さんの返事を思い出すより早く、ああ、これのことか、というのが筆者の第一の感想だった。

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』より

 というのは、「日本人を偏見で描いた映画に日本人が必ず抗議したくなるって、そんなわけないだろ」とツイートが流れてくるのを幾つか目にしており、その多くが直接リプや引用RTをしていなかったので「一体そんな馬鹿なことを言っているのはどこのどいつだ、またフェミニストか?」と思っていたからだ。
 少なくとも筆者は、一度たりともそんな「抗議したさ」など感じたことがなかったのだから。

 しかし、実はこのツイート、投稿者殿が長文ツリーでぶちあげた「日本映像業界を憂う大演説」の、ほんの極一部にすぎなかった

 ではそれを紹介しよう。



 ずいぶん長々と書いているが、要約すれば「作中のマイノリティは当事者が演じなければならない!それがポリコレだ!そうすれば間違った表現も偏見の助長も防げる!日本は世界に遅れていて全くそれをやってない!」という発言のようである。
 ちなみにこうした「海外では~」と言い立てて日本を貶めようとする日本人のことを俗に《海外出羽守》と呼んでいる。

 さて、この出羽守、《当事者による表象》についてずいぶん楽観的だが、もちろん「当事者に演じさせれば間違いも差別問題も起こさない」ということはもちろんない。
 たとえば彼はこの「ポリコレ」で救われる属性としてゲイを挙げているが「ゲイの当事者はゲイに演じさせなければならない」とは「ゲイであることを公表していないゲイの役者を排除する」ということに他ならないからだ。

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