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 ラディカル・フェミニズムの教祖アンドレア・ドウォーキンが、著書『ポルノグラフィ 女を所有する男たち』の中で危険視したもの。もちろんポルノ反対の書である。
 そんな本になぜレーザー光線が出て来るのかというと、ポルノ撮影でモデルさんにレーザーを当てるという残虐非道な行為を糾弾するためである。

 問題の写真は『プレイボーイ』誌のドイツ版に掲載されていたらしいが、写真自体の転載は無く、また何年の何号なのかも示されていない。長々とその写真の内容を文章で説明しているのだが、簡単に言えば拘束された女性に光線が当たっている写真である。
 ドウォーキンによれば、2枚の写真中1枚では

彼女の体の前面にも背景にも、青白いレーザー光線があたってジグザグ型をなしている。

 もう1枚では、

何本かのレーザー光線が、後ろから膣を貫いているように見える。レーザー照明の何本かの光線が、女の園入口にすぐ下で一点に集まっている。まるで、女は、膣に入ってきたレーザー光線に持ち上げられてでもいるかのようである。

 とのことである。

 この写真自体の説明のあと、ドウォーキンは下記の様々な本や資料からその危険性を説いた箇所(大多数が高出力のレーザーの威力を表現した箇所か、機器を扱う側の注意事項)を引っ張り出しては、レーザーの危険性を説いている。

・アレックス・マロー、レオン・チャボット『レーザーの安全手引書』
・1980年3月3日『ニューヨークタイムズ』
H・G・ウェルズ『世界大戦争』
・ネーリック、ヴォラン、デッセル『原子力の光:レーザー――それは何か、どのように作用するのか』
・ロナルド・ブラウン『レーザー:現代科学技術の道具』
・O・S・ヘブンズ『レーザー』
・アメリカ合衆国海軍のレーザー担当職員に対する危険報告書
・ジョン・F・レディ『高出力レーザー照射の効果』

 これだけの資料を参照したにもかかわらず、彼女はレーザー光線を理解していない。それが直進するものであることすら。
 もし彼女が、これらの資料の危険について書いている箇所だけをつまみ食いせず、きちんとレーザーを理解していたら、モデルさんがレーザーなど当てられていないことが、というかそもそも写真に出て来る光線はモデルさんに実際に当てられているものではなく、単なる合成であることが理解できただろう。
 なぜなら『ポルノグラフィ』にはこう書かれているからだ。

彼女の体の前面にも背景にも、青白いレーザー光線があたってジグザグ型をなしている。

このような状況の中に、黒いロープで体じゅうを縛られ、両手を鎖で縛り合わされ、手首を頭上の棒に縛りつけられた女、体の全面も背面もジグザグ模様のレーザー光線に拘束された女が存在している。

 つまりドウォーキンの糾弾するレーザーはジグザグに曲がっているのである。レーザーはそんなことはしない。
 もしも写真に出て来る「ジグザグ型の」光線が、本当に撮影現場で撃たれたものだとしたらそれはレーザーではなく空中放電しか考えられない。そして空中放電なら実際にやっているはずがない。空中放電はその距離に応じて大電圧を必要とし、メートル単位の空中放電など食らわせたらモデルさんは即死しているだろう上に、方向のコントロールが極めて困難だからだ。

 つまり『プレイボーイ』で女性が浴びせられた光線とやらはまず間違いなく、このような「電撃風ビームの合成」のたぐいである。

『ウルトラマン』円谷プロ,1967年
『三大怪獣 地球最大の決戦』東宝,1964年

 そしてこの後、レーザーは科学だ!と言ってナチスの科学技術と結び付けたりレーザーは焼くものだ!と言って魔女狩りの火刑と結び付けたりして、レーザーの悪者化に勤しんでいる(それら以外の共通点は特にない)。

 この馬鹿げたレーザー批判は、無名の1泡沫フェミニストがネットでしたツイートではない。
 ラディカル・フェミニズムの国際的に著名な教祖的存在であるアンドレア・ドウォーキンが、フェミニズム界隈では世界的に読まれている著書の中で展開しているものなのである。
 教祖ですらこれ、それがフェミニズムの限界なのである。



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