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【ミロのヴィーナス】

 前2世紀頃のギリシアで製作されたとみられる彫刻。「ミロ」は発見された島の名前で、製作者はアンティオキアのアレクサンドロスと考えられている。
 ヴィーナスは周知のとおり、ローマ神話における愛と美の女神。ギリシャ神話のアフロディーテと習合し同一視される。ヴィーナスを題材にした作品は数限りなくあるが、本作はその最も有名なひとつで、ボッティチェリの絵画『ヴィーナスの誕生』と双璧をなすだろう。

アメリカの事例

  アメリカでは1992年に、この像を描いた「絵」がショッピングモールから撤去される事件が起こっている。以下はナディーン・ストロッセン『ポルノグラフィ防衛論 アメリカのセクハラ攻撃・ポルノ規制の危険性』より。

 1992年、ミズーリ州スプリングフィールドでは、ショッピングモール内の店からミロのヴィーナスの半裸像を描いた絵が取り外された。どんなに傑作であろうと胸を露にした絵は、「人々に与える影響が強すぎる」とモール責任者が判断したのであった。紀元前一五〇年ごろに製作され、パリのルーヴル美術館の栄誉ある位置に展示されている古代ギリシャ彫刻を描いた絵は、フリルのついた長いドレスをまとった女性の絵にかけ替えられた。

ポルノグラフィ防衛論 アメリカのセクハラ攻撃・ポルノ規制の危険性』75頁

日本の事例

 また日本では、2012年に本作のレプリカが島根県奥出雲町の三成遊園地に寄贈された。
 イタリアの有名なエンツォ・パスクイニ氏が製作したもので、地元出身の元建築会社社長・若槻一夫氏が購入して同町に寄贈。同じ経緯で【ダビデ像】も付近の三成運動公園に同時に寄贈されている。

 が、これらの像は「目のやり場に困る」「威圧感がある」などとして苦情の対象となっていた。特に「ダビデ像にパンツを穿かせてほしい」との訴えは海外でも珍奇に映ったようで、米国のMSN、フランスのAFP通信などに取り上げられて笑い話にされている。
 当時の町長は「一流の芸術で感性を養うことができる。周囲の景観にも合っており、移設は考えていない」と反対。像は存置されていた。

 なお2018年に地震によりダビデ像が倒壊、ビーナス像についてもそのおそれがあるため接近禁止となった。以後、危険性と、本体が高価であることなどに鑑みて、寄贈者の若槻氏に返却された。

 現在、ダビデ像とともに保管されており、見学可能である。

参考リンク・資料:

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