【となりのトトロ】
スタジオジブリ制作・宮崎駿監督の長編アニメ映画。1988年公開。
昭和30年代、入院中の母の近隣である田舎に越してきた草壁サツキ・メイの姉妹と、不思議な生き物「トトロ」との交流を描くファンタジー作品。
スタジオジブリの映画の中でもトップクラスに有名で、現在でも繰り返しテレビ放映されており、知らない者は日本にいないと言ってよいほどの著名作である。スタジオジブリのロゴにも起用されている。
押しも押されぬ名作と呼んでよい本作だが、時折は本作にも言い掛かりをつける「ポリコレ」勢が現れる。幾つかをみていこう。
内容はおおむね「パンチラや入浴シーンがあることの糾弾」「サツキの家事負担」に対するバッシングが多い。
たとえばこういったものである。
「トトロ」に出てくる程度(筆者など記憶すらしていなかった)のパンチラのような、軽微な下着の表現を糾弾するヒステリックぶりもさることながら、実は入浴シーンの評価については、欧米人の日本(東アジア)文化に対する無理解と差別に根差していることが指摘されている。
欧米では入浴時を個人のプライバシーの時間と捉えており、一緒に入るようなことは基本的にない。よほど幼い子でも湯船の外から洗ってやるような形になる。特に父親であっても男性が幼い少女と入浴を共にするようなことは性的虐待とさえ捉えられるという。
もちろんこれは欧米の一方的な価値観による異文化の断罪、つまり非常に分かりやすい形での差別である。
しかし性的虐待者と見なされる危険がある以上、現地で「これは我われの文化だ!」とアジア系の人々が声を上げることは困難であるためこの差別は表面化しにくいと考えられる。
実際に欧米でアジア系の若い人がその文化の違いから、自分は幼少期に虐待されていたのではないかと悩む人もおり、それが虐待でもなんでもない、アジアの文化なのだということを「トトロ」を通して知る、ということさえあるという。
もう一つのよくある批判、サツキの家事負担が重いという話についても、作品内容を本当に理解しているのか疑わしいほど低レベルの批判である。
そもそも通常の理解力があれば、決して制作陣も作中人物も、サツキが女性だから家事労働を任せきりにされてよいなどと考えてはいないことが分かるはずだ(級友の男子であるカンタにも家の手伝いをする描写はある)。
サツキが多くの家事をしているのは、母が入院中で、父もまた仕事のために家事を十分にはできない状況をしのいでそうしている結果である。そしてサツキの苦労を、病室の母も理解して気遣う発言をする場面は作中にもある。
そうして気丈に振る舞っていた彼女が、母が死ぬかもしれないという思いに囚われたとき、ついにカンタの祖母の前で泣き出してしまう場面は、コアなファンならずとも心に残っているはずである。
さらにもっとトンチキなのが、映画評論家の町山智浩氏によるこちらのツイートである。
これはどういう意味のツイートかというと、主人公姉妹の父親・草壁タツオ役は糸井重里氏が演じているのだが、それが政治的に正しくないから変更しろ、と言っているのである。
なぜ糸井氏ではいけないのか?2020年4月のこのようなツイートが町山氏の逆鱗に触れたのだ。
普通に読めば「世の中が殺伐としていることを嘆いている」程度のツイートで、特にどうという程の事もない。しかし、どうも町山氏はこのツイートを「政府批判叩き」だと思い込み、それが左派に偏向している町山氏の神経を逆なでしたということらしい。
この2020年4月ごろというのは新型コロナウィルスの流行が始まったばかりで、対応については模索段階。コロナは左派にとって政府を攻撃する最大のネタになるかも!?というタイミングだった。
せっかくコロナ問題で政府批判を爆発させたいところに「(コロナ関連で)人を責めるのをやめよう」的なことを言われてしまって気に入らない、という自己都合100%の八つ当たりがこの「声優交代希望」だったわけである。
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