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 1994~1996年に週刊少年チャンピオン(秋田書店)で連載された、山口貴由による漫画作品。
 核戦争で汚染された未来の東京を舞台に「戦術鬼」と呼ばれるモンスターと主人公・葉隠覚悟の戦いを描く。

 本作には差別表現に対する過剰反応としてかなり有名なエピソードがある。

 先述したように本作の敵は「戦術鬼」とよばれる鬼であるが、その敵の残数をかぞえるシーンで登場人物が「4鬼!」と言いながら指でその数を示すシーンがある。

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 西野秀和『差別表現の検証 マスメディアの現場から』等によると、特に漫画分野では「指を4本だけ描く」ことに対する警戒心が強い。
 これは被差別部落民に対する蔑称として「4つ」というのがあり(語源は諸説ある)、そのときにからかいの意味で4本指を示したりすることが差別表現として定着したジェスチャーになっているからである。そのため、単にものを持っている手を片側から描いているために指が4本だけ見えている場合など、まったく差別的意図のないときでも描き直しなどの対応が取られるケースが多いという。

 もちろん本作においても、実際に「4鬼」をかぞえているからそう表示しているに過ぎず、被差別部落に対する侮辱的意図など一切なかったことは明白である。ところが秋田書店の編集担当者は部落を警戒し、部落解放同盟関係者の知人に相談したという。

 関係者の答えは、

「こんなものは差別でもなんでもないんだから、絵柄を描きなおす必要はまったくない。こういうものまで描きなおしをされると、われわれも迷惑なんです。何かにつけて“部落解放同盟はすぐことば狩りをする”などと言われる原因になるから……」

 とアドバイスした……のだが、その後の判断によって絵はやはり書き換えられてしまった。

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(西野秀和『差別表現の検証 マスメディアの現場から』より)

 が、実際には絵柄はやはり描きかえられてしまっており、助言を無視された部落解放同盟の関係者はたいへんに立腹したという。

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