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【バークレー市ジェンダーニュートラル条例】

 2019年7月19日、アメリカ合衆国カリフォルニア州アラメダ郡のバークレー市議会で、全会一致のもと可決した条令。
「性差別の無い社会をつくる」ことを目的としているとするが、有体にいえば言葉狩りの条例で、公的に使われている40近くの英語表現を「ジェンダーニュートラル」な新語に変更するというもの。
 報道によると、変更された単語は以下のもの。

・Bondsman(保証人)→Bonds-person
・Brother(兄弟),Sister(姉妹)→Sibling(きょうだい)
・Chairman(議長)→Chair、Chairperson(チェアパースン)
・Craftsmen(職人)→Craftspeople、Artisan(職人)
・Fireman、Firewoman,Firemen,Firewomen(消防士)→Firefighter、Firefighters(ファイヤーファイター)
・Fraternal(友愛の)→Social(社会の)
・Fraternity(男子学生の社交クラブ)、Sorority(女子学生の社交クラブ)→Collegiate Greek system residence(ギリシア式学生会館)
・He(彼)、She(彼女)→単数でもThey
・Him(彼に)、Her(彼女に)→単数でもThem
・Heirs(相続人(複数))→Beneficiaries(受益者)
・Journeyman(職人)→Journey
・Maiden(処女、乙女)→Family(家族)
・Male and Female(男女)→People of different genders(色々な性別の人)
・Man or Woman(男性もしくは女性)→A single gender(単一の性)
・Men and Women(男女)→Poeple(人々)
・Manhole(マンホール)→Maintenance hole(メンテナンスホール)
・Manmade(人工の)→Human-made(人工の)、Artificial(人工的な)、Manufactured(大量生産の)、Machine made(機械生産の)、Synthetic(合成の)
・Manpower(マンパワー、人力)→Human effort(人的努力)、Workforce(労働力)
・Master(マスター)→Caprain(船長、主将、班長、警部など)、Skipper(船長、機長など)、Pilot(操縦士、水先案内人など)、Safety officer(安全管理者)、Central(中核の)
・Ombudsman(オンブズマン)→Ombuds、Investigating Official
・Patrolmen(パトロールの人)→Patrol(パトロール)、Guards(守衛)
・Policeman(警察官)、Policewoman(女性警察官)→Police Officer(警察職員)
・Pregnant woman(妊婦)→Pregnant employees(妊娠した従業員)
・Repairman(修理工)→Repairs、Repairer
・Salesman(セールスマン)→Salesperson(セールスパースン)
・Sportsman(スポーツマン)→Hunters(ハンターズ、追求する人)
・The masculine pronoun includes the feminine(女性も含んでいる男性代名詞)→Words reffering to a specific gender may be extended to any other gender(特定のジェンダーに言及しているが他のジェンダーにも拡張されているかもしれない単語)
・Watchmen(見張り番)→Guards(守衛)

 女性もいるのだから「~マン」はおかしい、というのでマンを取ったりパースンにするのはまあ分からないでもない。しかしそれなら言い換え語のなかにHumanが散見されるのはそれこそおかしいはずである。humanには偶然manが入っているわけではなく「地上の人間」という意味で、まさに「man=人間」という、他で狩られているのと同種の成り立ちの言葉なのだから。
 ましてPregnant woman→Pregnant employeeは、男性の妊娠者などそもそもいない。woman以外の誰がpregnantになるというのか。

 Fraternal(友愛の)が変更させられるのは、「兄弟の」という意味もあるからだと思われる。が、Fraternity(男子学生の社交クラブ)とその女性版であるSororityの言い換え語に「ギリシア式」が入るのは、ギリシア人は男女に排他的だという別の差別的用語になっていないか?

 またMasterが禁句なのは「主人」「家長」「主君」といった男性色の強い意味があるためだという(では女王陛下がおられるイギリスではmasterは良いのだろうか?)。
 そもそもMasterやheirは、言葉のなりたちとして男性を表しているものではない。単にかつての英語圏ではそれらを男性がやることが多かったというだけのことである。日本のゲームなどでは逆に、プレイヤーの男女いずれにも対応できるようにと「マスター」が主人公の二人称とされがちであり、日米で「平等化」が逆の方向に作用しているのは興味深い。

参考リンク・資料:

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