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 2022年6月、アンチポルノ活動に勤しみ「AV出演対策委員会」なるものの代表を称する郡司真子が、下記のようなツイートをした。
 内容は一読して分かるように、自身の主張する「AV出演被害」なるものからの女優の「救済」が、当事者たるAV女優に総スカンを喰らっていることを正当化するものだ。
 問題は、それに添付された画像である。

https://twitter.com/Koiramako/status/1536209266628915200

 何やら稚拙な手書きのグラフのようなものを添付しているが、実はこの図、AVとも性搾取とも何の関係もない分野からの盗用である。

 この図の正体は、Drotarらの研究グループが1975年に発表した「段階説」に基づく「先天奇形を持つ子どもの誕生に対する正常な親の反応の継起を示す仮説的な図」なのである。

https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/ld/z12020/z1202001.html

 ちなみに当該の分野においてさえあくまで「仮説的な」図であり、Drotar以外の研究者からも幾つもの段階説が提唱されている。十分な実証を経たと言いうるものでもなければ、ましてや性搾取やAV女優の話に適用できるなどという研究は影も形も存在しない。

 「AV出演対策委員会」の声明を一読すると分かるが、郡司らのアダルトビデオ女優観は次のようなものである。

アダルトビデオ(AV)を含む性的画像記録出演に関する被害者の多くは、強要されていない、自らすすんで従事していると思い込まされているからです。支援につながることができない認知の問題も大きく、「トラウマの再演」や「性的自傷」「関係性の依存」を搾取されている
(略)
逆境サバイバー、性暴力被害者、DV被害者、家出人などは、容易に関係性の依存を発症します。発達障害、ASD、ADHD、LD、境界知能、知的障害のある人なども、悪意を察知することが苦手です。契約を適切に理解できない人と契約してはならないという規制が必要です。
自ら志願した人に関しても、上記の特性及び、複雑性PTSD、性化行動、性的自傷、トラウマの再演により、自ら進んで傷つく体験を求めて行動することが、精神科医療の研究では、明らかにされています。契約時に、逆境サバイバー、性暴力被害者、DV被害者、家出人などは、容易に関係性の依存を発症します。
(略)
複雑性PTSDの症状でAVを志願する人は、AV出演ではなく、医療へ繋ぐ必要があります。自身のトラウマの再演に気づかず、撮影を行った場合に、さらなるトラウマを負い、複雑性PTSDの症状が悪化し、自死に至る危険性があります。

撮影被害当事者声明

 このように郡司氏はAV女優を「知的障害者」「精神疾患者」として差別的に扱うことでその自由意思を否定し、自身のアンチポルノ活動を正当化している。そのためにこのような詐術や【AVやめさせ達人M氏】のような作り話を頻繁に用いている。

 なお郡司氏は、ツイッター上で他の人がこの図を「キューブラー・ロスの喪失の受容」ではないかと(誤って)指摘した際に飛びついている。

https://twitter.com/Koiramako/status/1536209266628915200

 キューブラー・ロスの喪失の受容はDrotarらの段階説とはまた別物であり、これは指摘した人が勘違いしていたようである。
 が、それに飛びついたところを見ると、彼女は元の研究についてもろくに知らず、おそらくは適当に読みかじった知識を盗用したに過ぎなかったことが分かる。

 そもそもDrotarらの研究は、障害児を持った親の心理過程という非常に深刻でまじめな問題を扱ったものである。郡司氏のように、職業差別の自己正当化のために盗用することなど言語道断であることは言うまでもない。

参考リンク・資料:

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