見出し画像

【サンケイ新聞意見広告事件】

 1973年「サンケイ新聞」(現在の産経新聞)に、自由民主党による日本共産党に対する批判的な意見広告が掲載されたことに端を発する訴訟事件。単に「サンケイ新聞事件」ともいう。いわゆる【アクセス権】に関する代表的事件である。

 日本共産党は当時の参議院議員選挙にむけて「民主連合政府綱領」なる方針を掲げていたが、自由民主党はその内容に「日本共産党綱領」との様々な矛盾があるとして「前略 日本共産党殿 はっきりさせてください。」と詰問する内容の意見広告を掲載した。右側には「未完成の福笑い」風の絵が描かれている。

 日本共産党側はこの広告を新聞広告倫理綱領に違反するものであるとし、「同一スペースの反論文の無料掲載」をサンケイ新聞の発行元・産業経済新聞社に要求した。しかし新聞社側は「意見広告としての広告料を支払えば掲載するが、無料掲載には応じない」と回答していた。
 日本共産党は名誉毀損を主張して東京地裁に仮処分を求めたが申請却下されたため、同地裁に正式に提訴し、憲法21条の【表現の自由】と人格権、および民法723条(名誉毀損における原状回復)による意見広告の無料掲載を求めた。

民法
(名誉毀損における原状回復)第七百二十三条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

 しかし本件最高裁判決は、

(原告の)いう「人格の同一性」も、法の明文の規定をまつまでもなく当然に所論のような反論文掲載請求権が認められるような法的利益であるとは到底解されない。

記事が特定の者の名誉ないしプライバシーに重大な影響を及ぼすことがあるとしても、不法行為が成立する場合にその者の保護を図ることは別論として、反論権の制度について具体的な成文法がないのに、反論権を認めるに等しい上告人主張のような反論文掲載請求権をたやすく認めることはできないものといわなければならない。

 と、反論権を認めるためには憲法上の表現の自由や、人格権、条理だけでは足りず、明文化された法の根拠規定が必要であるとしている。
 また「不法行為が成立する場合にその者の保護を図ることは別論として」とあるが、この不法行為の成立も裁判所は認めなかったため、民法723条による請求も認めず、日本共産党の請求は棄却された。

参考リンク・資料:

 資料収集等、編纂費用捻出のための投げ銭をお願いします!↓

ここから先は

14字
この記事のみ ¥ 100

ライター業、連絡はDMでどうぞ。匿名・別名義での依頼も相談に乗ります。 一般コラム・ブログ・映画等レビュー・特撮好き。