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 静岡県熱海市の熱海海岸に建立されている銅像で、同市の観光名所のひとつ。館野弘青作。1986年1月に熱海ロータリークラブが創立30周年記念で市に寄贈した。
 文豪・尾崎紅葉の未完の代表作『金色夜叉』の一場面を再現したもので、主人公の間寛一が、富豪に言い寄られて心変わりした婚約者・お宮に対し、この場所で蹴りを入れて別れる破局のシーンをあらわしている。

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(貫一お宮の像 『あたみニュース』より)

 実は1986年の制作当時から「女性蔑視」という批判の声があり、熱海市によるとこれを配慮して「原作を曲げるわけにもいかず、お宮の乱れた裾は止め、人物の表情も和らげた」という。なお、貫一の履いているものは原作挿絵は靴(文章では不明)、舞台版では下駄と異なっているが、この像では舞台版を参考に下駄をはかせている。

 2016年、ふたたびこの貫一お宮の像にクレームがつき、市は日本語と英語で「物語を忠実に再現したもので、決して暴力を肯定したり助長するものではありません」と注釈のプレートを設置した。
 熱海市によると「数年前からメールや手紙で「女性への暴力を容認していると誤解を招くのでは」といった意見が複数寄せられ、市議会議員からも外国人観光客への対応について指摘されていたという。ただし実際にこれらの意見は全て日本人からのもので、外国人からの抗議は一件もなかった。

 直接のきっかけは「ある女性の大学教授」から市長あてに抗議メールがあったことだという。内容は「こんな像があったら、恥ずかしくて熱海には外国からのお客様を連れて行けない」という、またも外国人を盾に取ったもの。

 そもそもこのような発想自体が、「外国人はこういうものに理解がないはずだ」という外国人への差別的偏見にほかならない。

 それでは現実の外国人の反応はどうかというと、NEWSポストセブン記事が紹介する観光ボランティアの田中明博氏によると「台湾・中国からのお客がほとんどで、像の説明をすると皆さん納得し、問題視する者はいない」とのこと。

 なお、カップルで像を真似た記念撮影をする際、およそ8割が「女性が男性を蹴る」という男女逆転の形でポーズを取る人が多いという。

参考リンク・資料:

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