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【敵意ある聴衆の法理】

【表現の自由】のうち、集会の自由に関する法理論。敵対的聴衆の法理、悪意ある聴衆の法理、敵意の法理などとも呼ばれる。

 公の施設で、主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは、憲法第21条の趣旨に反するというものである。
 なぜなら、上記のような理由で、公の施設がそれ自体は平穏な集会のための利用を拒むならば、結果的に悪意ある妨害者を利することになり、公権力が集会の自由侵害に加担することになるからである。

 最高裁は、泉佐野市民会館事件ではこの『敵意ある聴衆の法理』を支持した上で、「単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけではなく、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される」場合には、他の基本的人権の侵害を回避・防止するために必要かつ合理的なものとして、表現の自由について定める憲法21条に違反しないとした。
 民間施設についてはプリンスホテル日教組会場使用拒否事件(下級審判決)で裁判例が出ており、やはり敵対ある聴衆の法理を用い、このケースでは危険発生の証拠が十分でないとして、ホテル側の会場使用拒否を債務不履行であると認めた。

 なお2021年、「表現の不自由展 かんさい」が開催予定であった施設エル・おおさかに抗議電話や街宣活動等が寄せられたため、管理者の大阪府が施設利用許可を撤回した件で、裁判所はやはり敵対的聴衆の法理に基づいて府の処分を違法とし、使用許可を認めている。

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