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『大島薫の叫びはなんだったのか』2023-01-14

 Colabo問題が表現の自由界隈でのメインテーマとなっている中、ひっそりと叫び声をあげたツイッターアカウントがある。
 大島薫という元AV女優?だ。
 クエスチョンを付けたのは、この人が実際には男性だからである。トランスジェンダーとも少し違う、性自認が男性の異性装者。いわゆる「男の娘」女優だった人で、2010~2015年頃にAV業界で活動。現在は引退して作家業をしているとのこと。

 その彼女がAV新法改正or廃止運動で言われる「適正AV業界のクリーンさ」に猛反発している。
 このnoteの読者はご理解のことだと思うが、AV新法を巡っては推進側から【高校生AV出演解禁デマ】【AV出演強要問題】などが喧伝されており、それらへの反論として訴えられてきたこの(適正)AV業界の「クリーンさ」が関係者より訴えられてきていた。
 実際どのようにクリーンかというと「出演強要の否定」「成人のみの出演」「配信停止申請制度の存在」の3点に集約される。このクリーンさを担保しているのが第三者たるコンプライアンス機関「AV人権倫理機構」だ。

 もう少し細かくいうとこうだ。

・適正AVでは20歳以上の人のみをAVに出演させるよう強く推奨している。
・この年齢確認は、身分証確認により厳重に行われている。
・高校在学中の者の出演は、適正AVという区分の成立以前からほぼ業界を挙げて堅く禁じられている。
・2016年頃から唱えられた【AV出演強要問題】はほぼ全て事実無根であり、積極的な調査によっても2018年に一度強要と言えるケースが確認されたのみ。
・出演強要は当然厳に禁じられており、統一様式契約書の使用や、契約場面の録画などにより自由意思が担保されている。
・そもそも出演強要などしても、やる気のない女優が売れるほど甘い世界ではない。
・AV人権倫理機構により、結婚などの事情がある女優や、販売後5年を経過したAVについては女優の希望で販売停止申請ができる。

 この最後の部分について昨年末、それが嘘だと言い出した者がいる。
 自分が出演したAVを、撮影後5年以上経過したにもかかわらず削除してくれないというのだ。

 AV人権倫理機構に配信停止申請をしたのに、メーカーが販売停止を断ったらこちらの要求を通してくれることもなく打ち切りやがった!5年で停止してくれるなんてウソだ!と言わんばかりである。
 最初は実際の状況が良く分からず、実際には男性だから「男優」としての対応を取られたのでは?という、ちょっと説得力のある説なども囁かれた(もちろん、これはこれで男女平等の観点から問題であろう。仮に女優に主眼を置いた「ノーマルな」AVで性交する男優の負担が女優より少ないとしても、ゲイ物AVの男優などはどうなるのか)。

 しかし実際にはこういうことである。
 AV人権倫理機構は、統一契約書を使用させることによって事業者と女優との契約に網を掛けている。「5年ルール」も契約書に盛り込まれている条項で、これが事業者に対する5年ルールの法的強制力の源泉である。
 したがってこの制度の発足以前の作品については、5年ルールを事業者に強制することはできないということだ。

 そして適正AVの発足は2017年であり、まさに5年が過ぎたばかりだ。つまり必然的に今ある「5年が経過したのに削除してもらえなかった作品」というのは、多くが適正AV発足以前のものであったことになる。

 むしろ、けんもほろろに門前払いするのではなく、できるだけ大島氏の要望に沿うようAV人権倫理機構は、事業者に働きかけている。大島氏が晒したメールにある通りだ。いつまでに削除するとか、時期未定ながらいずれは削除すると事業者側の回答を伝えているし、削除できないものも検索にヒットしにくいよう出演者欄から大島氏の名前を外したりしている(これは筆者もそのようになっているものを確認した)。

 これをもって「クリーンだなんて嘘だ!」とは、少なくとも筆者には思えない。

君の名は

 さて、ここで多くの人の脳裏に浮かんだ疑問があると思う。
 ふつう元AV女優がする配信停止申請は、多くが引退後の身バレや風評を防ぐためのものである。
 しかし大島氏の場合、今現在でも「大島薫」という当時の芸名と同じ名前を名乗って作家活動などをしているのだ。AV出演の過去を消したいのか、それを使って名前を売り続けたいのか、一体どっちなのだろうか。

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