[読書メモ]『やってはいけない歯科治療』(岩澤倫彦)

p8
ご自分の歯を守りたいなら、患者自身が賢くなることです。

p9
歯科治療の常識とされてきたことが、現在では間違いだと分かっていることも多いのに、知らない患者は多い。

p25
"手抜き"をした銀歯かどうか、歯医者なら一目見ただけで分かるが、他の人間がやった治療を批判しないという不文律が歯科業界にはある。

p28
「タコ焼き診療」という言葉がある。診察チェアに患者をずらっと並べて、同時進行で治療していくスタイルを指す、歯医者の隠語だ。そこには、手早く大勢の患者を処置していくことを揶揄したニュアンスが込められている。

p39
スウェーデンでは医療職責任倫理局というものがあって、治療のトラブルを審査したり、問題のある歯科医に抜き打ちの立ち入り検査を行い、免許を停止する制度があります。

p56
日本の歯科業界には患者のために行動を起こした人を、潰そうとする風潮がある。患者の健康よりも、自分たちの利益を優先しているからだろう。それでも、こうした圧力に屈せず、信念を貫く人も存在していることに、私は救いを感じた。

p70
二〇〇二年、国際歯科連盟は、ミニマル・インターベンション(通称=MI)という、新たな理念を世界に向けて打ち出した。

p73
患者にとってメリットの多い治療法が、「歯医者にとってはデメリットが多い」という理由で日本では普及が大きく遅れてしまった。

p84
プラークは、鏡を見ながら歯を一本ずつ磨くことを意識すれば、歯ブラシに力を入れなくても、しっかり除去できます。

p88
食品表示基準で一〇〇グラム(飲料は一○○ミリリットル)中、0.5グラムまで糖類が含まれているものも「シュガーレス」「ノンシュガー」の表示が許されている。/「シュガーレス」のキャンディだからと油断して、ずっと舐めていると、再石灰化の時間が確保できず、脱灰を進行させてしまう可能性がある。さらに「ノンシュガー」でも、クエン酸が入っている柑橘系のアメは、酸性度が高いので、長時間口の中に入れておくのは、歯にとってリスクが大きい。

p107
歯周病の進行状態を診断するには、「パノラマ」と呼ばれている口全体のレントゲン画像よりも、微細な組織が見える「デンタル」画像が適している。だが、その「デンタル」がしっかり撮れないようでは、正確な診断も適切な治療もできない。

p117
現代医療は、「EBM(エビデンス・ベースド・メディスン)=科学的根拠に基づい医療」が基本である。エビデンスとは、多くの研究者や患者が参加して行う臨床試験の成績が論文として、第三者の専門家たちに評価されることだ。

p125
日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会の専門医、指導医、認定歯科衛生士を選ぶ

p139
日本では特別な資格審査もなく、歯医者なら誰でもインプラント治療が可能なため、未熟な者も参入する“玉石混交”状態になっている。厄介なことに、ホームページでは誰もが「我こそがインプラントの名医」だと主張しているので、“本物”を見分けるのはとても難しい。

p147
セカンドオピニオンを申し出ることによって、歯医者との関係性が壊れる可能性を恐れて言い出せない人もいるかもしれない。だが、歯医者がへそを曲げて関係性が壊れたなら、患者の意向よりも自分のプライドを優先させる人間だということだ。抜かれた歯は、二度と戻ってこないのだから、遠慮は無用だと考えてほしい。

p161
年間五〇〇件を超えるインプラント手術をこなし、どんなに難しいケースも失敗しない。「専門医」の資格もある。費用はどこよりもお得。なぜか、申し合わせたように腕を組んだポーズに、ニッコリと微笑む――/こんなインプラントをアピールする歯医者のホームページが、インターネットには溢れているが、額面通り信じていいのだろうか。

p166
大手インプラントメーカーの製品には、製造番号が刻印されているので、手術データと紐付けすることで、大規模な追跡調査が可能だ。これによって手術の実績、トラブルの割合など、歯医者の“客観的な技術力”が判明する。これを実施できれば一部の歯医者が、確信犯的にやっている症例実績の水増しなどを防止できる。

pp166-167
アメリカのベストジョブ(人気職業)が、なぜ歯科医師か知っている?ギャラもいいし、ストレス少ないし、社会的地位もいい。/それは歯科医師が、みんな勉強熱心で努力をしているからなんだ。勉強する理由は、"歯科医師免許の更新制"にある。州によって違うけど、勉強しないと免許が更新できないから、学会でも最新情報を必死に学んでいる[。]

p179-180
「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜などは、感染する危険性があるものとして、取り扱わなければならない」/これはスタンダードプリコーションという、世界中に普及している感染予防の基本原則で、一九九六年にアメリカのCDC (疾病管理予防センター)が提唱した。

p184
今の時代に“素手で手術"する口腔外科医がいた大問題になるのは必至だろう。

p192
これまでも取材の時に、歯医者が「何かに怯えている」と感じたことが度々あった。誰もその正体について語ろうとしなかったが、陰湿で強権的な圧力をかけているのは、同業者というべき存在なのだと、ようやく気づいた。

p201
最近では、感染予防を可視化するクリニックも増えている。口腔内に使用する基本セットを、患者の目の前で滅菌パックから取り出す。グローブも患者に見えるように、新しいものをケースから取り出して装着する。

p203
仕切りもなく、診察チェアが並んでいる医院は、安心できない

p215
歯科業界の取材を重ねた私は、ネットの口コミはまず信じない。その理由は、歯医者のところに「予約サイト」の営業がやってきて、「ステマ」の"オプションサービス"を売り込む様子を聞いているからだ。

p235
「好評価だけの口コミ」は信用しない

p238
日本の歯医者は、患者を抱え込む傾向が強い。難しい症例の場合、専門医による高度な治療の選択肢があったとしても、自分が対応できる治療だけを患者に提示するケースが目立つ。本来なら専門医に紹介状を書く等の対応があるべきだ。

p245
「早い」「治療費が安い」「いつも混んでいる」。この三つが、患者の評価基準になっていることが多いが、「治療の質や誠実さ」とは、全く関係していない。

p246
最近目立っているのが、「ガンに効くサプリ」「ガンに効果があるビタミンC点滴」などに手を出す歯医者だ。いずれも科学的根拠は全くないし、詐欺的な行為に等しい。/このような歯医者は、本業の歯科治療も信用できない。

p249
・いつも混んでいる歯医者は、「行列効果」を狙っている場合もある
・治療が「早い」歯医者は、手抜きをしている可能性がある


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?